【単独インタビュー】韓ドラ「ウンスのいい日」俳優パク・ヨンウが語る「悪人を表現する極意」
デビュー30年、今なお初作品のように熱く演技に取り組む俳優がいる。
ジャンルを問わず、ドラマと映画、演劇を行き来しながら自分だけの色を築いてきたパク・ヨンウ。
「善良な顔をした悪役」の元祖と呼ばれ、善と悪の境界を行き来する演技で視聴者に強烈な印象を残してきた。
1995年のデビュー以降、彼は数多くの作品の中で常に新しい顔を見せてきた。ジャンル作品の枠を破った独特なキャラクター解釈、そして歳月が流れても変わらない演技への真心。その一貫性こそが、彼を30年間愛される俳優にしてきた理由だろう。
今回のインタビューでは、パク・ヨンウが歩んできたこれまでの時間、そしてこれからの道について率直な話を交わした。俳優として、一人の人間としてのパク・ヨンウ——彼の長年の情熱と変わらぬ哲学を直接聞いてみよう。
Q. パク・ヨンウさんをご存知の日本のファンの方も多いですが、ご存じない方のために簡単に自己紹介をお願いします。
韓国で俳優として生きているパク・ヨンウと申します。
Q. 1995年にデビューされて、すでに30年以上の歳月を第一線で活躍されています。その秘訣は何でしょうか?
さあ、どうでしょう。まず運が良かったと思います。そしてその運が続くことを願っています。
付け加えて申し上げるなら、その運が何とかして仕事を続けるための努力というよりも、何とかして良い感情とそれに伴う良い表現とは何かを悩む努力から生まれた運であることを願い、そのように努力しています。
Q. 日本では2010年放送の時代劇ドラマ『済衆院<チェジュンウォン>』で顔を知られました。この作品がご自身のキャリアにどのような影響を与えましたか?
現実的な結果について、俳優は完全には知ることができないと思います。
ただ良い作品が生まれるよう、俳優として良い演技を表現するための努力をするだけでしょう。
願いがあるとすれば、参加する作品すべてが多くの方々に愛されることを願っています。
『済衆院<チェジュンウォン>』も同じ心情で、同作を通じてたくさん愛していただけたのであれば、本当に感謝するばかりです。
Q. ドラマだけでなく、多数の映画にも出演されています。最も記憶に残っている作品、または日本のファンの方々におすすめしたい作品はございますか?
すべての作品を愛しています。すべて愛していただきたいと願っています。
映画『甘く、殺伐とした恋人(2006)』という映画は、現場でコメディの呼吸(ジャンルが持つ、セリフを伝えるコツや感情表現)を多く学んだ映画として記憶に残っており、その呼吸を『カーセンター(2019)』という映画で活用した記憶があります。
『血の涙(2005)』という映画で抑制された感情表現を悟りましたが、今回公開される『ナンセンス(2025)』という映画とパク・チャヌク監督の『別れる決心(2022)』で非常に役立てた記憶があります。
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Q. 11月に公開される新作映画『ナンセンス』で主演を務められました。どのような映画ですか?
映画『ナンセンス』は、損害査定士のユナ(オ・アヨン扮)が事故保険の給付を受ける被保険者スンギュ(パク・ヨンウ扮)に出会うことから始まる物語です。
「人間」は何らかの恐怖を経験するとき、何にでもすがることのできる存在を探すようになり、その存在への絶対的な信頼を持つようになりますが、その信頼が真実なのか、そしてどのような「信頼」が「人間」という私たちにとって本質的なものなのかについて語る映画です。
Q. 今年だけで主演ドラマが2作品公開されました。その中で『ウンスのいい日』が現在U-NEXTでストリーミング配信中ですが、どのようなドラマですか?
ドラマ『ウンスのいい日』は、平凡な大韓民国の主婦ウンス(イ・ヨンエ扮)が突然訪れた家庭の不幸とともに、偶然麻薬が入ったバッグを発見するのですが、このような状況でウンスという個人がどのような選択をするのかという問いから始まるドラマだと思います。
ウンスにとって麻薬が入ったバッグは幸運な日になるきっかけなのかどうか、そして不都合な真実を隠して生き残ろうとする欲望が果たして私たち全員にどのような結果をもたらすのか、ウンスという一個人を通じてドラマを見るすべての方々に問いかけるドラマだと思います。
私たちの「ウンス(運)のいい日」はいつなのでしょうか?
※作品名「ウンスのいい日」は、運、運勢を意味する「ウンス(운수)」に因み、主人公「ウンス(은수)」が置かれた境遇を描いている。
Q. もう一つの作品『メスを持つハンター』は、まだ日本では未公開(2025年11月6日現在)の作品です。スリラージャンルを好む日本のファンの方々に本作品のポイントを挙げていただけますか?
ドラマ『メスを持つハンター』で初めて血も涙もない連続殺人犯役であるジョギュンを演じることになりました。
常識に非常に反する人物であるため撮影前に心配でしたが、このような嫌悪すべき行為をする人物も現実に存在するというメッセージを伝えようと、殺人をただ「常識」に合わせて犯し、常識に合わせて隠ぺいする人物として表現した記憶があります。
個人的に世の中で最も恐ろしい人間は、自分が何を間違っているか分からず、さらには過ちを犯していることを知りながらも現実を盾にして「自己合理化」で生きていく、非常識的な常識人だと思います。
日本でストリーミング配信されるなら非常に光栄で、許されることのない怪物ジョギュンを通じて「良心」という感情が「常識」を重視する現代社会において重要な「根」になるきっかけになることを願っています。
Q. 韓国では俳優として本当に様々な評価を受けていらっしゃいます。個人的には「善良な顔の悪役元祖俳優」という評価が非常に興味深いです。かつて清涼感のあるイメージの美男俳優として大きな期待を受けられましたが、当時悪役演技に対する抵抗はありませんでしたか?
ある瞬間から…善と悪には明確な境界があるのかを考える時期が始まりました。
そのきっかけは特別なものではなく、私自身と他人を観察し続けながら始まった疑問です。
私を含めてすべての人間は何らかの形で「恐怖」という感情を持っており、その恐怖という感情が一個人を成長させもし、破滅させもするという興味深い事実に捕らわれたようです。
最近、私は自分を含めたすべての人が「悪」な意図や行為を犯すとき、現実の「常識」から外れた人だと思います。
同時に「心の病」を持った人と感じます。そして、誰でもそうなり得ると考える方です。
私もまた、私に現実的な被害を与えたり、気に入らない言動をする人が好きではありません。時々その人を他人に悪く言うこともあります。
しかしその「人」自体を憎んではいません。その人の今の「行為」を嫌うだけです。そして私もまた誰かに同じような「行為」で悪く言われることがあると思います。
現在、私にとって「悪」という概念は本質的な感情ではなく、「心の病」が生じた一時的な過程だと思います。
そして私は愛こそが「善」だと思います。だからこそ演技者として、本質の感情である「愛」というメッセージを伝えられる作品であれば、これからも様々な「悪役」をやりたいです。
Q. 日本のドラマや映画の中で記憶に残っている作品または俳優いらっしゃいますか?
個人的には役所広司さんが好きです。彼の眼差しが本当に良いです。
Q. 最後に、俳優パク・ヨンウ、ひいては韓国ドラマと映画を愛する日本のファンの方々にメッセージをお願いします。
韓国のドラマと映画を心から愛してくださる日本のファンの皆様、心から感謝いたします。いつも健康で、愛をする事を願います。
(インタビュー=Danmee)