「伝説のすた丼屋」新業態はスピンオフの新ブランド「伝説の肉そば屋」/ 肉そばなのにすた丼とまったく同じ味でビックリした
少し前から「伝説のすた丼屋」の前を通る度に気になることがあった。“丼”のお店のはずなのに、表のメニュー看板に“麺”料理が載っているのである。調べたところ昨年11月からごく限られた店舗で、すたみな肉そばの提供を開始していたようだ。
これが想定を上回る好評ぶりで、今年3月に販売店舗を拡大し、ついに専門店を出すに至ったのである。その名も「伝説の肉そば屋」だ。
まるでドラマの脇役が人気者になって、主人公を務めるシリーズが始まったみたい。いわば、「スピンオフ」の新業態誕生である。折しも米価高騰で丼屋は厳しい状況にある。ひょっとするとこのスピンオフ肉そばが、すた丼の救世主になり得るかも!?
・一気に専門店出店
もともと肉そばは、すた丼屋の新宿西口総本店・高円寺店・イオンタウン稲城長沼店の3店舗で試験的に販売していたものだ。これが好評を得て、来店客の5人に1人がオーダーする人気となった。時にはスープが品切れになることさえあるという。
そこでこの3月に15店舗に、4月には67店舗、5月に5店舗と順次販売店舗を拡大しつつ、5月8日に東京・御茶ノ水に専門店「伝説の肉そば屋」を出店するに至っている。
このご時世、どの業種も決して景気が良いとは言えない。とくに飲食業はコロナ禍で大打撃を受け、ようやく持ち直してきたと思ったら、国際情勢が不安定になりあらゆるものの原材料費が高騰。さらに米価が上がり続けて、逆風が吹き続けている。
そんななか、肉そばのスマッシュヒットに活路を見出した運営元の「アントワークス」は、一気に勝負に出たのだろう。専門店を出すまでのスピード感に、並々ならぬ意気込みを感じられる。
11時半頃にお店に着くと、それほど混んでなくスムーズに入店できたが、私が店を後にして、12時半頃に再び店前に行ってみると、行列ができていた。
同社が試験導入で感じた手ごたえは間違いなかったようである。これはすでに多店舗展開の予感がするぞ。
・豊富なカスタム要素
メニューに丼はなく、肉そば一択だ。すた丼屋の味を象徴するニンニク醤油ダレを基本に、生姜醤油・ニンニク味噌・汁なしなどが用意されている。
ここの特徴は無料カスタマイズにある。トッピングの生たまごをメンマや海苔などの6種に変更でき、なおかつ赤ダレの有無・ニンニク増し・背脂増しなどの変更も可能となっている。
ニンニク・背脂の増量は初回非推奨なので、私は「肉盛りそば」(税込1408円)をニンニク・背脂普通でオーダーした。
カスタム要素はまだあるぞ。卓上には10種の調味料が並んでいるので、これを使って食べながら味変することもできる。すた丼屋で培ったでノウハウのすべてが、ここに注がれているのではないだろうか。
ちなみに店内サービスも充実している。取り皿やフォーク、ヘアゴムの提供と並んで、思わぬ気遣いを発見した。
うちわ! これからの季節、肉そばを食べてアツくなったら、うちわで涼むのも良かろう。ただし、無償提供ではなく貸出なので、持ち帰らないように気をつけよう。
・すた丼の味がする!
これが看板メニューの肉そばである。丼ぶりの際までたっぷりとスープが入っている。
トッピングの生たまごは卵黄のみ。「生」ってことだったけど、潰れないように軽く湯通ししているのかな? 半熟に近い状態だ。まあ、見た目が良いのでとくに問題はないけど、生のトロッとした感じも楽しみたかったな。
スープをひと口すすると……、うん? これは! すた丼!? すた丼だ! すた丼を液化したら、きっとこの味になる! 丼ぶりのテイストを見事にスープで再現している。あのガツンと来るニンニク醤油ダレの味を、スープでも同じように出しているので、正直いうという少しニンニク辛い。
だが、だからこそ肉との相性は良い。すた丼はモリモリ飯を食える味だ。肉そばはズルズル麺をすすれる味に仕上がっている。
米を麺にそのまま置き換えたわけではなく、すた丼本来の考えを肉そばで忠実に組み上げている。だから試験販売でも好評を得ているし、提供店舗を拡大しているし、こうして専門店を出すに至っているわけだ。
入店時に、看板に「伝説系すたみならーめん」と書いてあったのを見て「伝説系? そんなのないでしょ。まさか自前で伝説系を言い出してるのかな?」と、ちょっと軽く見ていたけど、ラーメンの新ジャンルとしての「伝説系」はあり得るかも。
最初に述べたように、これなら多店舗は行けそうだ。米価高騰の逆風のなかで既存店を少しずつ肉そば屋にしていけば、アントワークスはこの難局を乗り越えられるのでは。すた丼好きならきっと口に合うので、1度お試しを。
・今回訪問した店舗の情報
店名 伝説の肉そば屋 御茶ノ水店
住所 東京都千代田区神田駿河台2-4-4 お茶の水西脇ビル1F
時間 11:00~23:00(L.O.22:30)
参考リンク:伝説の肉そば屋、株式会社アントワークス
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24