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【北海道の渓流釣り】“渓の宝石”オショロコマを求めて 夏の石狩川水系を行く

つり人オンライン

渓流を遡行するのが好きなアングラーなら、夏は上流域のオショロコマをねらってみるとよい。独特の斑紋が美しいイワナの仲間は、北海道でしか見ることができない。「渓の宝石」と呼ぶにふさわしい魚と、夏の逢瀬を楽しみたい。

Photo & Text by Hiroki Hirasawa(North Angler’s)

North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。

夏の渓流ターゲット「オショロコマ」の魅力

雪代が落ち着き、道央と道南でヤマメの解禁を迎える6月から道内の渓流釣りは本格化する。漁業権のある一部河川を除き、初雪が降る頃まで渓流釣りは可能とはいえ、それはニジマスがメインターゲットになる場合。秋、産卵行動に入るヤマメやイワナ属(エゾイワナ、オショロコマ)が多く生息する渓流では、良識あるアングラーは9月以降ねらって釣ることを控えている。そのため、夏がヤマメやエゾイワナ、オショロコマ釣りのシーズンになる。

渓流でもエゾイワナ(アメマス)は50cm以上に育つ一方、ヤマメやオショロコマは30cmを超えたら見事な大もの。大もの志向が強い道内アングラーの注目度は低そうに感じるが、ベテランになるほどヤマメとオショロコマのファンは多い。フィールドは小~中規模の渓流。そんな流れで繊細なタックルを使い、小技を駆使して釣るのが楽しいようだ。

全国的にポピュラーな渓魚であるヤマメに対し、オショロコマの分布は道内のみ。イトウと並んで北海道が誇るサケ科魚類である。オショロコマの魅力は、何といってもきれいな魚体。“渓映え"する魚だと思うのは、道民アングラーの色眼鏡だろうか。宝石のような朱点が散りばめられた魚体を見ると、渓の妖精に会った気分になる。

朱点が散りばめられた魚体は、宝石にたとえられる。ずっと大切にしたい、素晴らしい魚だ

オショロコマの釣り場

オショロコマの主なフィールドとして、知床半島の河川が知られる。上流部はもちろん、河口からすぐの流れで釣れることも珍しくない。もうひとつオショロコマの楽園を挙げるなら、標高2291mで道内最高峰の旭岳を擁する大雪山系を源とする渓流群。流域面積14330.3平方kmで道内最大(全国2位)の石狩川と、同じく道内2位の十勝川が代表的だが、今回はルアーとフライで前者を釣った。

石狩川水系の山岳渓流を釣り上がる

石狩川上流部には1975年にできた大雪湖がある。ダム完成以前からイワナ属の魚が生息し、メインターゲットはアメマス。オショロコマも釣れるとはいえ、専門にねらうなら大雪湖の上流、もしくは同湖に流れ込む川が有望だ。一般的に湖の好シーズンは5~6月だが、標高807.5mの大雪湖は春の訪れが遅く、本格的なシーズンを迎えるのは6月以降。7~8月でも元気なイワナ属に出会える。大雪湖の状況を見た後、手始めに西側の沢を遡行する。

落差のある流れはいかにも山岳渓流といった雰囲気。涼を感じる夏にピッタリの釣り場だ。流速が速い場所をあまり好まないとされるオショロコマは、白泡の脇の緩流部に付いている。しかし、緩流部は狭く、正確なキャストが求められる。少しでもルアー&フライの投入位置がズレると白泡の餌食になり、瞬く間に下流に流されてしまう。

赤点で示した流心の脇の緩流帯がねらいめ

湖からすぐの大場所で、いきなり反応があった。緩流部にシンキングミノーをフォール中、ひったくられるようなバイト。ズンと感じた重さから、「いきなり尺クラスか!?」と驚いたが、現われたのは35cmのアメマス。湖から遡上した魚なのか見事なコンディションが目をひいた。

44mmのシンキングミノーでアメマスが釣れた

その後はオショロコマのラッシュ。ここぞというポイントからは15cm前後のかわいいサイズが顔を見せる。ここはルアーよりドライフライが有利で、面白いようにフライが吸い込まれた。

沢を遡行すると小型のオショロコマがよく釣れた

オショロコマ釣りのタックル

ニジマスも視野に入れるとルアーはライトクラス以上、フライは4番以上のロッドを手にしたくなるが、ヤマメやオショロコマを専門にねらうなら、小気味よい引きを堪能できるウルトラライトと3番以下を片腕にしたい。ルアーのラインはナイロン4~5ポンドで充分。またルアーもフライもバーブレスフックを使用したい。

大雪湖は夏でも釣果が期待できる。湖でロッドを振るのもいい。湖の西側は川沿いに国道が走り、アクセスしやすい。アメマスがメインターゲット

ルアーはキラキラ光るスピナーで

次に向かったのは大雪湖の南側、石狩川バックウオーター付近。高原大橋から上流を見ると、玉石の河原を滑るように流れる本流域が続いている。オショロコマの魚影が多くなるのは、魚道のない砂防堰堤から上流のようだ。

上流部とはいえ石狩川本流、その流れはダイナミックで少し長めのロッドが欲しくなる。流速は速く、水は冷たい。水温を計ると11℃。水中撮影をすると冷たさが身に染みるものの、オショロコマにとっては適水温に違いない。

適度に蛇行を繰り返し、オショロコマが付きそうな緩流帯がある。そこにねらいを定める。先ほどの沢よりもポイントの規模が大きいので、ルアーは5g前後のスピナーを選ぶ。そして倒木の際を沿うようにリトリーブすると、いきなりロッドが絞り込まれた。掛かったのは24cmのオショロコマ。沢で釣った魚は濃い体色が印象的だったが、こちらは淡い色合い。然別湖のミヤベイワナを彷彿とさせる。

リリースして同じポイントをトレースすると、またもやバイト。やはり24cmの良型だ。川の規模が大きいとエサが豊富だからサイズがよくなるのか。その後も20cm以上のサイズが数尾ヒットした。絶好調のルアーをよそに、沢で圧倒したドライフライにはまったく反応がない。水中のエサが多く、危険を冒してまで水面に出てくる必要がないのだろうか。魚に聞いてみないと分からないが、スピナーに対する反応は素晴らしかった。特に金や銀などキラキラ輝くブレードカラーが効果的だった。

最大魚は25cm。沢で釣った魚は無邪気な表情に癒されたが、25cmを超えてくると顔付きが鋭くなりたくましさを感じる。まだ日は高かったものの、充分満たされた。道内では尺上のオショロコマを釣った話も聞くが、大型ニジマスやアメマス、ブラウントラウトを何尾も手にしているベテランでも心臓がバクバクしたという。スケールでは測れない魅力がオショロコマにはあるのだ。7~8月のほぼ2ヵ月限定の釣りになるが、夏の強い日差しを浴びた宝石は一段と美しく輝く。北の宝石探しの旅に出かけよう。

25cmのオショロコマ。やはり規模の大きな流れには大ものが潜むのか

なお、今回の釣行では、『層雲峡オートキャンプ場』を拠点にした。このキャンプ場は、清潔で快適な施設、目と鼻の先に石狩川のポイント、そして車ですぐの距離に温泉と、三拍子揃った好条件の場所。夏のキャンプシーズンはオショロコマ釣りの盛期とも重なるため、キャンプと組み合わせて楽しむのもおすすめだ。

層雲峡オートキャンプ場

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