Yahoo! JAPAN

千葉市美術館「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセ キ」が開催。蔦屋の業績とコレクションを紹介!

イロハニアート

「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」

今年の大河ドラマの主人公として話題を集める蔦屋重三郎(1750〜1797)。 その蔦屋の仕事に焦点を当てながら、初期から黄金期、また蔦屋亡き後までの浮世絵の展開を紹介する「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」が、千葉市美術館にて2025年5月30日から開催されます。

「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」

浮世絵の黄金期を盛り立てる。蔦屋の類まれなプロデュース力!


東洲斎写楽《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》寛政6年(1794)千葉市美術館蔵

江戸の吉原で生まれ、貸本と小売を主とした小さな本屋を営んでいた蔦屋重三郎。初めて出版を手がけた安永3年(1774)から10年も経たないうちに、老舗の版元が軒を連ねる日本橋へと進出し、斬新な作品を次々と世に送り出しました。

蔦屋が版元として活動したのは、安永(1772〜81)から寛政(1789〜1801)期にあたり、複数の色を重ねて摺る多色摺の錦絵が発展を遂げた時期とほぼ重なります。

特に安永の後の天明(1781〜1789)から寛政にかけては、「浮世絵の黄金期」と呼ばれ、より奥深く、また色彩の細やかな浮世絵が生み出された時代でした。

喜多川歌麿《当時三美人富本豊ひな難波屋きた高しまひさ》寛政5年(1793)千葉市美術館蔵

大河ドラマでも描かれる西村屋与八や鶴屋喜右衛門などといった老舗の版元がひしめくなか、蔦屋は新興の版元として出版界に彗星のように現れます。
美人画で人気を博した喜多川歌麿(〜1806)を当代一の絵師として育て上げ、東洲斎写楽(生没年不詳)を発掘したことは、極めて大きな業績といえるでしょう。
まさに蔦屋は黄金期を盛り立てた人物のひとりなのです。

「蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」の2つの見どころ


「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」の大きな見どころを2点ご紹介します。

①コレクションを中心とした名品で浮世絵史を総覧


喜多川歌麿『画本虫撰』天明8年(1788)千葉市美術館蔵

浮世絵の祖で房州(現、千葉県安房郡鋸南町保田)出身の菱川師宣(〜1694)にはじまり、鈴木春信(〜1770)、喜多川歌麿(〜1806)、東洲斎写楽(生没年不詳)、歌川広重(1797〜1858)など、誰もが見たことのある有名作品を含む、160点もの浮世絵の優品が一堂に展示されます。

また千葉市美術館では蔦屋が手がけた版本、錦絵を所蔵していますが、そのうち20点を公開。同館の質の高い浮世絵コレクションだからこそ実現し得た「浮世絵の教科書」ともいえる内容で、浮世絵の通史を楽しむことができます。

②喜多川歌麿による初期肉筆画も初公開!


千葉市美術館のコレクションを中心に構成される中、特別出品として注目したいのが、喜多川歌麿の初期肉筆画です。近年発見された歌麿による肉筆画《祭りのあと》(天明期、個人蔵、アンリ・ヴェヴェール旧蔵)が、本展にて初めて公開されます。

肉筆画が少ない歌麿のなかでも、天明期のものはさらに珍しく、貴重な作品であること間違いありません。

浮世絵コレクションで定評のある千葉市美術館


喜多川歌麿『潮干のつと』寛政元年(1789)頃千葉市美術館蔵

ところで千葉市美術館の浮世絵コレクションはなぜ充実しているのでしょうか。その最大の理由として同館のコレクションの形成プロセスがあげられます。

今年で開館30周年を迎えた千葉市美術館は、これまで「近世から近代の日本絵画と版画」、「1945年以降の現代美術」、また「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」の3つを大きな柱としてコレクションを収集してきました。

そして美術館設立のきっかけとして、幕末の浮世絵師の渓斎英泉(1791〜1848)の錦絵を集めた今中コレクションを、1985年に千葉市が入手したことがあります。このコレクションを契機に、同館の収集における浮世絵は重要な位置を占め、国内でも有数の浮世絵コレクションを築き上げてきたのです。

鈴木春信《(三十六歌仙)藤原仲文》明和4-5年(1767-68)頃(6/22まで展示)千葉市美術館蔵

また展覧会としても過去、大英博物館と共同で企画した開館記念展の「喜多川歌麿展」以来、「菱川師宣展」(2000年)、「鈴木春信展」(2002年)、「鳥居清長展」(2007年)、「渓斎英泉展」(2012年)、「初期浮世絵展」(2016年)、「鳥文斎栄之展」(2024年)など数多くの浮世絵展を開催してきました。

葛飾北斎《冨嶽三十六景神奈川沖浪裏》天保2-4年(1831-33)頃千葉市美術館蔵

どれも数多くの作品や資料を網羅し、それぞれの浮世絵師の業績などを検証した、極めて充実した展覧会であったのはいうまでもありません。
今回もまた江戸絵画ファン、浮世絵ファンにとって必見の内容になることでしょう。

同時開催の「日本美術とあゆむー若冲、蕭白から新版画まで」もおすすめ!


伊藤若冲《鸚鵡図》宝暦(1751-64)後期頃千葉市美術館蔵

最後に同時開催の展覧会の情報です。「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」にあわせ、7階の企画展示室にて「日本美術とあゆむー若冲、蕭白から新版画まで」が行われます。

ここでは開館30周年という節目の年を祝い、これまで開催してきた各展覧会、作品収集の軌跡なども紹介しながら、同館ハイライトともいうべきコレクションを展示します。

曾我蕭白《獅子虎図屏風》宝暦(1751-64)頃千葉市美術館蔵

伊藤若冲の《鸚鵡図》や《乗興舟》、また曾我蕭白の《獅子虎図屏風》などの江戸絵画をはじめ、2016年に同館で回顧展が開かれた明治から昭和期の画家、吉田博の《光る海瀬戸内海集》などの作品に期待が高まるのではないでしょうか。

なお同展は「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」のチケットでも入場できるというから、見逃さない手はありません。

吉田博《光る海瀬戸内海集》大正15年(1926)千葉市美術館蔵

また初めて行くと驚かれる方も少なくありませんが、同館の江戸絵画や浮世絵の展示はいつも大変なボリューム。
8階と7階の2つの展示室をあわせると、かなりの見ごたえになることは容易に想像がつきます。
時間に余裕をもって出かけるのがおすすめです。

歌川広重《名所江戸百景亀戸天神境内》安政3年(1856)千葉市美術館蔵

版元にして、いわば革命児、また名プロデューサーでもあった蔦屋の仕事ともに、彼の生まれた時代から黄金期への展開、そして“世界のUkiyo-e”と浮世絵が進化していく様子を、千葉市美術館の珠玉の浮世絵コレクションにて味わってみてください。

展覧会情報


『開館30周年記念江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ』千葉市美術館

開催期間:2025年5月30日(金)~7月21日(月・祝)

所在地:千葉県千葉市中央区中央3-10-8

アクセス:JR線千葉駅東口から徒歩約15分。京成バス(バスのりば7)から大学病院行または南矢作行にて中央3丁目または大和橋下車徒歩約3分。千葉都市モノレール葭川(よしかわ)公園駅より徒歩5分

開館時間:10:00~18:00
※金・土曜日は20:00まで
※入場受付は閉館の30分前まで

休室日:月曜日(7月21日は開室)

観覧料:一般1500円、大学生1000円、小・中学生・高校生無料
※本展チケットで7階「日本美術とあゆむ―若冲、蕭白から新版画まで」、5階常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可
※ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18:00以降は観覧料半額

美術館HP:『開館30周年記念江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ』千葉市美術館

【関連記事】

おすすめの記事