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ひと目でわかる?昔の「えらい人」ポーズ図鑑 ― 「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」(レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

古の絵画に描かれた神さまや仏さま、そして不思議な仕草の人物たち。どこかユーモラスで、けれど畏れを感じさせるその姿に、思わず見入ってしまいます。

静嘉堂文庫美術館で開催中の展覧会は、神仏や人物の“かたち”に込められた意味や背景のストーリーを紐解きながら、東洋絵画の世界をやさしく案内する企画。絵の中の人物が何をしているのか、どんな意味があるのか、そんな素朴な疑問から、絵画を読み解く視点が自然と広がっていきます。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場入口


やまと絵では、天皇や貴族といった身分の高い人物は、決まったスタイルで描かれることが多く、その表現には一定のルールがありました。第1章では、こうした高貴な人々が、どのように描かれてきたのかに注目します。

「歌合」は、左右二組に分かれて和歌の優劣を競うイベント。「時代不同歌合」は、承久の乱で隠岐に配流された後鳥羽院が、異なる時代の歌人たちを競わせるという趣向で編んだ架空の歌合です。

《時代不同歌合画帖》は、その参加者100名の姿を描き、彼らの和歌300首を記した豪華な画帖(アルバム)で、江戸時代の美意識を伝える貴重な作品です。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 住吉具慶、狩野寿石秀信《時代不同歌合画帖》江戸時代 17世紀[写真の上冊の展示は7/5~8/11。後期は下冊を展示]


第2章「神さまと仏さまの姿」では、信仰の対象となるイメージがどのように形づくられてきたのかを紹介します。

《聖徳太子絵伝》は、太子の誕生から晩年までを年齢ごとに描いた四幅構成の作品で、1枚の画面に成長した太子が何人も登場します。

オレンジ色の服を手がかりに人物を探す仕掛けは、まるで絵巻の中で“太子さがし”をしているような楽しさです。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 重要文化財《聖徳太子絵伝》鎌倉時代 14世紀[写真の一・二幅の展示は7/5~8/11。後期は三・四幅を展示]


第3章は「道釈画と故事人物画」。かつての人々が大切にしてきた“教え”や“知恵”が、個性豊かな表現で描かれています。

国宝の《禅機図断簡 智常禅師図》は、唐の高僧・智常と彼に教えを請う張水部を描いた作品。墨の濃淡で表情の機微まで巧みに表現されており、見る人によってさまざまな解釈が生まれる一枚です。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 国宝 因陀羅筆、楚石梵琦題詩《禅機図断簡 智常禅師図》元時代 14世紀[展示期間:7/5~8/11]


《羅漢図》には、修行を積み悟りを開いた羅漢のまわりに、供物を手にした人や、霊芝をくわえた鹿までが登場。鹿も供養に参加しているというユーモラスな構図で、羅漢がいかに敬われた存在であるかが伝わります。

羅漢は釈迦の弟子であり、仏教の教えを人々に伝える大切な役目を担っていた人たち。難しそうな言葉も、絵の中で親しみやすく出会うことができます。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 《羅漢図》南宋~元時代 13~14世紀


《二十八祖像》では、禅宗を開いた達磨からはじまり、教えを受け継いだ祖師たちの姿が並んだ作品。バトンリレーのように、師から弟子へと受け継がれる“法”のつながりが視覚化されています。

達磨に弟子入りを願う慧可が、決意の強さを示すために自らの腕を切って差し出すという有名な逸話についての解説は、「真似しちゃダメ!」というツッコミも添えられています。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 狩野探幽《二十八祖像》江戸時代 17世紀[展示期間:7/5~8/11]


《琴棋書画図屏風》は、中国の教養人が重んじた「琴(楽器)・棋(囲碁)・書(書道)・画(絵画)」の4つを描いたもの。日本では室町時代以降、狩野派の絵師たちによって繰り返し描かれてきました。

絵を通して「こんな風に暮らしたい」「こんな人になりたい」と理想を思い描いていた人々の心が息づいています。


静嘉堂文庫美術館「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」会場より 狩野常信《琴棋書画図屏風》江戸時代 17~18世紀[展示期間:7/5~8/11]


神さまや仏さま、歴史上の人物たちが、どのように描かれてきたのか。そこには、私たちが気づかないうちに受け継いできた信仰や知恵、ものの見方が込められています。

夏休みらしく、子ども向けの解説もあって親しみやすい展覧会です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年7月4日 ]

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