世界一のコーヒーは1杯1800円。高いと思うか、安いと思うか。「manucoffee」が問いかけるコーヒーの真価
お店で1杯1800円のコーヒーをあなたは飲みますか?おそらくほとんどの人が高すぎる、と思うはずです。ただ、コーヒーライターの私としてはぜひ一度体験してほしい!そう思うコーヒーが、「manucoffee」にてまもなくリリースされます。
人気メニューのマヌラテ(750円)。現在、1か月に平均1〜2トンのコーヒーを焙煎
「manucoffee」と聞くと、ほとんどの人がカジュアルなカフェというイメージを持つのではないでしょうか。深夜まで営業をしている大名店や春吉店では焙煎風景を目にすることがないため、かくいう私も少し前までそうでした。ただ白金に焙煎所を併設したクジラ店がオープンしてからイメージは変わり、ここ1年ほどで個人的に“推し”のロースタリーになりました。
豆はデカフェを含むシングルオリジン5種、ブレンド3種、計8種程度を常時ラインナップ
「manucoffee」が今使っている焙煎機はアメリカの「スマートロースター」。世界的に評価が高い完全熱風式の焙煎機で、一般的にフレーバーや明るい酸を表現することが多いスペシャルティコーヒーの浅煎り〜中煎りレンジの焙煎に適しているといわれています。比較的新しいマシンだけに、ある程度機械頼りで焙煎を行うこともできますが、「manucoffee」ではここ数年、かなりアナログな焙煎に挑戦しています。それが徹底的に嗅覚から得た情報をもとに焙煎を進めていくこと。焙煎中、テストスプーンで豆の香りを確認しながら焙煎するのはセオリーですが、同店はその回数、情報の取り方が圧倒的に違うと私は感じています。
香りから得られる情報を頼りに焙煎をコントロールしていく
とにかく嗅ぐ、ひたすら嗅ぐ、最後の最後まで嗅ぎ続ける。
時に業界ではテストスプーンを抜き差しする分、ドラム内の温度が微量ですが下がる傾向にあるため、頻回に香りを嗅ぐのは良くないといわれることもありますが、そんな意見はどこ吹く風。香りから焙煎の進行具合、水分の抜け具合といったリアルタイムな細かな情報を得ていくスタイルです。
焙煎をして、カッピングによって味を確認。それを繰り返しながら次回の焙煎にフィードバックしていく
「manucoffee」では現在、オーナー・西岡さんほか女性2名の計3名体制で焙煎を行っています。そのため私もそのやり方を目にした時、「香りを指標の柱にするとその日の体調に左右されるし、一人ひとり香りの感じ方も違うだろうから誤差が生じるのでは?」と懐疑的でした。ただ、そうやって焙煎されたコーヒーを飲んでみると、焙煎士が狙って出したいと考えているフレーバーをピンポイントに感じるし、なにより香りもバランスもいい。カッピングによって的確にコーヒーの点数付けができるスキルの高さを表しているといえます。特においしいと感じさせる要因が、雑味のない透き通った味わい=クリーンカップをしっかり表現できていること。特にこのクリーンカップがここ1年、「manucoffee」において格段に上がっていると個人的には感じています。
「Weber Workshops」による斬新な抽出器具、The Bird。今後店舗でも導入していく予定
西岡さんは「AIの進化が著しい今、過去のデータだけを頼りに焙煎をしているようではすぐに我々の仕事は機械に取って代わられる。機械ではできない味づくりをしていこうと考えると、現段階では嗅覚に頼るのが最適解」と話し、このスタイルを突き詰めています。
コーヒーの味わいは生豆自体のクオリティに左右されることが大きい
さらに全幅の信頼を置ける生産者と親密な関係を築けているのも同店の強み。そんな生産者の一人がニカラグアのブエノス・アイレス・グループのオルマン氏です。西岡さんは同氏が手掛けるコーヒーについて「生豆の状態で絶妙な水分含有量にコントロールしているため、焙煎によって生まれるフレーバー、甘さ、クリーンカップ、マウスフィールが素晴らしい。こんないい原料を最終的に焙煎する我々が台無しにはできない」と話します。つまりそれだけの覚悟を持って焙煎と向き合っているということ。この“熱意”はぜひコーヒーを飲んで体感してもらえたらと思います。
そんな「manucoffee」のロースタリーとしての真骨頂を体感するなら、冒頭で述べた世界トップのコーヒーを飲むことをおすすめします。とにかく一度、カップ・オブ・エクセレンス1位のコーヒーを味わってみてほしいのです。リリースされるのは2024年12月14日。
クジラ店は2階がカフェスペースになっている。小上がり席もあり
私自身、今までCOE入賞豆を味わう機会はちょこちょこありましたが、2023年に「manucoffee」で体験したニカラグアの1位は段違いでした。特別味わいが個性的というわけではないのですが、飲み物としてバランスが素晴らしく、クリーンカップ、そして一口目から華やぐフレーバーが本当に美しい。飲んでいただかないとわからない味わい体験ですが、豆売りはおよそ10杯弱分の100グラム8800円、店で飲もうとすると1杯1800円のコーヒー豆。コーヒー1杯でこの値段は高いと感じるでしょうがワインやウイスキーと比較すると、めちゃくちゃリーズナブルじゃないですか?世界一の味わいを1杯1000円ぐらいで楽しめるのはコーヒーだけですし、地球規模で環境が変わっている昨今、環境的な観点からも今だけでしょう。
カップ・オブ・エクセレンスを店でドリンク注文できるのは2024年12月19日から
世界一のコーヒーを取り扱うことができる店は世界的に見てもごくわずかで、当然日本国内だと超レアです。それができる「manucoffee」。そこからロースタリーとしての「manucoffee」の真価に触れてみてほしいと思います。
manucoffee roasters クジラ店(マヌコーヒー ロースターズ クジラ店)
福岡市中央区白金1-18-28
092-707-0306