【福山市】にしき堂 福山南蔵王店 ~ バラとお菓子をみごとに組み合わせた福山限定商品の開発秘話を聞く
にしき堂といえば「もみじ饅頭」が有名な和菓子屋です。宮島など広島県西部のイメージが強いかもしれませんが、福山限定の商品を発表するなど福山でも力を入れています。
「薔薇(バラ)とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」は福山限定の商品です。これらの商品は、2025年5月に福山市で開催される「第20回世界バラ会議福山大会」に向けて開発されました。
この記事では、「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」の魅力と開発秘話に迫ります。
にしき堂 福山南蔵王店について
にしき堂 福山南蔵王店は福山東インターチェンジのすぐ近くにあります。店内はL字型になっており、もみじ饅頭をはじめとするにしき堂のさまざまな商品が並べられています。
筆者が訪問したのは平日の午後でしたが、地元の家族連れと思われる人から、これから高速道路で自宅へ帰るといった感じの人まで、多くの人がひっきりなしに出入りしてにぎわっていました。
出入口付近にはもみじ饅頭の製造実演機が設置されています。タイミングが合えば「薔薇とピーチもみじ」を実演機で焼くところも見学できるそうです。取材時、実演機はお休みでした。残念!
バラと桃の調和がすばらしい「薔薇とピーチもみじ」
「薔薇とピーチもみじ」は福山市内限定で販売されている商品です。第10回福山ブランドに準認定されました。バラがデザインされたピンク色のかわいらしい小箱に5個収められています。
二つに割ると感じられるバラの香りと彩り
「薔薇とピーチもみじ」の見た目は普通のもみじ饅頭と変わりません。しかし、両手で二つに割ってみると、バラの良い香りがふわりと立ち上がってきます。
そして、バラペーストが練り込まれた鮮やかなピンク色の生地に目を奪われるでしょう。同じくバラペースト入りの落ち着いたピンク色の餡の中には桃の果肉も入っています。
バラと桃の調和が絶妙な味わいと香り
口に含んでみると「バラ」です。筆者はバラを食べたことはありません。しかし、薔薇とピーチもみじを食べた瞬間「これはバラだ!」と感じました。やわらかな香りと味。口の中で静かにバラが咲いたような感覚です。
二口目になると今度は桃の甘さが広がってきます。一口目とはまったく異なるみずみずしい感じが広がる味わいです。桃の甘さとバラの香りが一緒にやってきます。
桃の甘さも決してしつこい感じではなく、口の中に豊かに広がっていく感じです。桃とバラの調和の絶妙さが大変すばらしいと感じさせられる、これまでにない華やかさのある和菓子です。
上と下でまったく異なる味わいがある「白あんソフト薔薇スペシャル」
「白あんソフト薔薇スペシャル」は、にしき堂 福山南蔵王店のみで販売しているソフトクリームです。2024年第10回福山ブランドに認定されています。
パフェのような見た目
「白あんソフト薔薇スペシャル」の見た目は、ソフトクリームというよりもパフェのようです。白あんが練り込まれたソフトクリームにはピンク色のバラのソースがかけられており、そのうえにはラズベリーやピスタチオのチップが振りかけられています。
バラのソースには福山市芦田町にある「マチモト株式会社」の食用バラが使われています。マチモト株式会社の食用バラは第2回福山ブランドに認定されている逸品です。
甘さや酸味、さまざまな味を楽しめる
ソフトクリーム、あんこ、バラ、いったいどのような味がするのだろうと思いながら口に含みました。ソフトクリームとあんこが合体した上品な甘さを感じます。
その甘さをバラソースの酸味がほどよく整っていて、甘さと酸味の深い味わいが広がっていきます。さらに、振りかけられたラズベリーやピスタチオの歯ごたえが良いアクセントです。
下へ食べ進めると、上の部分とはまったく違う味わいに驚かされます。カップの下にはバラやライチのジュースが入っており、わずかな塩味も感じられる非常に爽やかで軽快な甘みです。上部分の甘みとは正反対の味わいの意外性を楽しめます。アロエや寒天の歯ごたえも爽やかさを引き立てています。
これらの新しい商品は、どのように開発されたのでしょうか。株式会社にしき堂福山 福山販売営業部 販売営業課 課長の葛籠一哉(つづら かずや)さんと、同課 販売係 係長の高橋久美(たかはし くみ)さんに開発秘話を聞きました。
にしき堂福山 販売営業課の二人にインタビュー
株式会社にしき堂福山の葛籠さんと高橋さんに「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」の開発秘話を聞きました。
福山らしいお菓子を作りたくて
──「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」を開発したきっかけを教えてください
葛籠(敬称略)──
2025年5月に福山市で開催される世界バラ会議に合わせて、福山を盛り上げたい。それじゃあ何をしようかというところから始まりました。
これまでにしき堂のなかでも、福山オリジナルのお菓子を作ったことはありませんでした。「バラでなんか作れんかな」みたいなアイデアが上がっては消えてという感じで。バラをお菓子に使うのはなかなかうまくいかないんです。
──今回はなぜうまくいったのでしょうか?
葛籠──
コロナ禍でなくなりそうになったお菓子文化をなんとかして残したい、という思いがあったからです。
コロナ禍では「お土産屋さんもつぶれるんじゃないか」と思うぐらい売れませんでした。
私たちも休業せざるを得ず、食文化そのものが危うくなっていたんです。そこからの反動で「なんか盛り上げていかにゃあ」という強い思いがこの商品に込められています。
「薔薇とピーチもみじ」の開発で苦労したこと
──「薔薇とピーチもみじ」で苦労したのはどのようなところですか?
葛籠──
バラの香りをほど良い加減に調整するところですね。
最初の試作品を食べたときは。芳香剤を丸ごとかじっている感じで、「あぁ…」って(苦笑)。
当時は「もうバラは色だけにして香りつけるのやめようや」と本気で言いました。
──そこからどうやって課題を解決したのですか?
高橋(敬称略)──
バラの香りをどうやって立たせるかを試行錯誤していたときに、同じバラ科で相性のいいものを合わせてみたらどうだろうと考えたんです。
葛籠──
さまざまなものを試してみた結果、最適だったのが桃でした。
実際に食べていただくと、一口目はバラの香りがふわっときて「バラだ」と感じます。
二口目は、今度はバラよりも桃の甘みや香りがして「桃が際立ってきたな」と感じるように仕上げています。
このバランスを見つけるまでが大変でしたね。
「薔薇とピーチもみじ」の今後について
──現在も改良を続けているのでしょうか?
葛籠──
表示が変わらないレベルで、桃の果肉をさらに増やすなどしています。桃の分量を増やしたことで、かなり桃感がアップしました。ただ、入れすぎると桃の角切りがペースト化してしまい、角切りのゴロゴロした感じがあまりなくなるのが悩みです。
──「薔薇とピーチもみじ」が福山ブランドに準認定されてから変わったことはありますか?
葛籠──
福山市長さんは「薔薇とピーチもみじ」をお使い物(他人への贈り物や進物)によく使ってくださるんです。他県に行くときは薔薇とピーチもみじを使うと買いにこられます。ですから今後、ネームバリューが出てくるんじゃないのかと期待しています。
弊社の社長と市長が対談をおこなうなど、福山ブランドに準認定されてから福山市とのかかわりが強くなっていることを感じますね。
「白あんソフト薔薇スペシャル」の工夫や課題
──「白あんソフト薔薇スペシャル」で苦労したことは何ですか?
葛籠──
個体差をなくすことです。
当初はひとつずつの出来がかなり違っていて、ソフトクリームの上にかけたソースの中にバラの花びらが入っていたりいなかったりしていたんです。ソースを入れているボトルの中にバラの花びらがあるのは見えるんですが、点在しているだけなので、ソースをかけても花びらが出ないときもありました。
そこで、花びらを刻むようにしたんです。そうすると、ボトル全体に散らばるようになるので、ソースの中に確実にバラの花びらが入ります。
花びらを刻んだことでソースの色も安定して、すごくきれいに出るようになりました。
──「白あんソフト薔薇スペシャル」の課題はありますか?
葛籠──
お客様になかなか選んでもらえないことが課題です。
ソフトクリームは中筋店、宮島店、南蔵王店の3店舗でしか取り扱っていません。それぞれでスペシャルなソフトクリームを作っているのですが、3店舗のなかでは私たちの「白あんソフト薔薇スペシャル」が一番選ばれにくいんです。
「バラ」を食べることにあまり馴染みがないからでしょうか、「バラは結構です」みたいな感じになってしまう。1回食べてもらったら「おいしい」と言っていただける自信はあるのですが、食べてもらうまでに苦労しています。
「薔薇とピーチもみじ」「白あんソフト薔薇スペシャル」に込める思いと今後の展望
──「薔薇とピーチもみじ」「白あんソフト薔薇スペシャル」に対する今の気持ちを聞かせてください。
葛籠──
福山限定というのが、私たちからしたら本当に悲願といったら言いすぎですけど、うれしい言葉ですね。
「なんでにしき堂のお菓子なのに広島じゃ買えんのんや」と、広島のお客様からお叱りを受けることもあります。でも福山限定なので「あれは福山のお菓子です。福山で買ってください」と言うしかありません。
隣の尾道市の販売店にも、にしき堂の通販サイトにも、薔薇とピーチもみじは置いていないんです。
高橋──
2025年は「にしき堂福山」ができて50年の節目です。福山限定商品は初登場なのでかわいがっていきたいですね。
福山ブランドをいただいて、今後はふるさと納税など、いろいろな新しいことに取り組んでいきたいところです。
葛籠──
私たちのお菓子が出せたことに感無量です。
にしき堂に勤めてきたなかでも、福山の私たちの部署から初めてのお菓子が誕生するとはなかなか思ったことがなかったですから。世界バラ会議福山大会がにしき堂福山にとって一つの大きな節目になりました。
──「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」に次ぐ新商品はあるのでしょうか?
葛籠──
検討中です。にしき堂には広島大学と共同開発して作った「せとこまち」という商品があります。今度は連携協定を結んだ福山市立大学と協力して、新しく何かを作りたいですね。
おわりに
「悲願だった」「かわいがっていきたい」と我が子のように「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」について語る葛籠さん、高橋さん。福山とお菓子に対する深い愛を感じました。
福山を訪れる人も、地元の人も、ぜひ「薔薇とピーチもみじ」と「白あんソフト薔薇スペシャル」を味わってみてください。福山らしいバラの香りのお菓子は、お土産にもぴったりです。
次はどのような魅力的なお菓子が誕生するのでしょうか。新商品の発表が楽しみです。