ヴェルスパ大分 開幕戦検証 J3昇格へ好発進! 【大分県】
J3昇格に向けて、新たなシーズンの幕が上がった。ヴェルスパ大分は、開幕戦でミネベアミツミFCを2-1で下し、最高のスタートを切った。今季から指揮を執る中村元監督にとっても、初陣を白星で飾る形となった。新生ヴェルスパの船出は、どのような戦いだったのか。
試合は開幕戦特有の硬さが見られた。両チームともリスクを冒さず、前線へロングボールを蹴り込む展開が続いた。ゲームメーカーの瓜生昂勢が「今日は泥くさい展開だったが、こういう試合もある」と語るように、球際の攻防がカギとなった。
均衡を破ったのは前半12分。ポストプレーでボールを落とした今村優介の動きに反応した金崎夢生が迷わず右足を振り抜く。狙い澄ましたシュートがネットを揺らし、チームに待望の先制点をもたらした。金崎は「練習でやってきた形だった。コンビネーションの練習をしっかりやってきた成果が出た」と振り返る。中村監督が徹底してきた攻撃の形が、試合で見事に実を結んだ瞬間だった。
後半16分には鈴木啓太郎が追加点を奪い、リードを2点に広げた。しかし、ここから試合の流れは変わる。相手が2点ビハインドとなったことで、前線からのプレッシャーが強まり、押し込まれる時間が増えていった。「セカンドボールや背後のスペースを狙われ、ショートパスをつなぐ余裕がなかった」と中村監督は振り返る。それでも、交代策を駆使しながら試合をコントロールした。1点差に詰め寄られてからは、浜崎拓磨や石上輝を投入。交代には、守備の安定だけでなく、彼らの声でチームを鼓舞し、試合を落ち着かせる狙いがあった。
ロングボールの競り合いで優位に出た
昨季の大分は、リードを守り切れずに勝ち点を失う試合が少なくなかった。中村監督は、その課題を克服すべく「局面の5分」を意識するよう選手に徹底させた。「試合開始の5分、得点後の5分、失点後の5分、終了間際の5分。この時間帯の戦い方がゲームの流れを左右する」と語るように、チーム全体が試合の流れを読む力を養ってきた。
実際、開幕戦ではその意識が形となった。選手たちは失点後も冷静さを保ち、互いに声をかけながら守備のバランスを修正した。「失点しても、どう戦うべきかを自然と話し合えるようになった」。この変化こそ、チームの成長を示す重要な要素である。
開幕戦はシーズン全体の30分の1に過ぎない。しかし、勝ち点3という結果以上に、チームの進化を感じさせる内容だった。中村監督は「厳しい試合だったが、勝利をつかめたことは非常に大きい」と語り、金崎も「とにかく勝つことが最優先だった」と振り返る。
もちろん、改善点は多い。だが、結果を出しながら成長するしかないという金崎の言葉が示すように、この勝利は単なる一戦ではなく、チームの未来を切り開く一歩となったはずだ。
開幕白星スタートとなった
(柚野真也)