東京、9月に上映される注目の日本映画5選
暑い日が続くが、そろそろ秋がやってくる。「芸術の秋」ということで、最新の邦画を映画館で楽しもう。
ここでは2024年9月に公開予定の注目すべき邦画作品を紹介。今最も注目されている女優の一人である河合優実主演の『ナミビアの砂漠』や、新鋭監督・奥山大史による初の商業デビュー作『ぼくのおひさま』など、ワクワクするようなラインアップだ。
アニメーション作品を含む最新の邦画の流行を、ぜひ映画館でチェックしてほしい。
きみの色
公開日:8月30日(金)
配給:東宝
監督:山田尚子
『映画けいおん!』や『聲の形』などの人気アニメーション映画を手がけた山田尚子による最新作。彼女の得意な「青春×音楽」がテーマで、3人の高校生が音楽を通して惹かれ合い、その揺れ動く感情を鮮やかな色で細やかに描いている。
1600人の中から選ばれた実力のある新人声優らや、戸田恵梨香、新垣結衣といった豪華キャスティングに期待が高まる。さらに音楽はMr.Childrenが担当。作品の鮮やかさを音楽でも表現している。アニメーション界を牽引(けんいん)する山田の描く繊細できらめく世界観は、映画館で体験するのが一番だろう。
ナミビアの砂漠
公開日:9月6日(金)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:山中瑶子
19歳に初めて監督した作品『あみこ』が「ぴあフィルムフェスティバルアワード2017」に入選。翌年、「第68回ベルリン国際映画祭」のフォーラム部門に最年少で招待された山田瑶子による最新作だ。
本作は、King Gnuや山下達郎のミュージックビデオから、大ヒットアニメ映画『ルックバック』の出演まで、今大注目の女優である河合優実の魅力が詰まった作品だ。退屈で満たされない日々を送る21歳のカナ(河合優実)が、やり場のない感情を抱え、恋人との関係性の中で自分自身を模索し葛藤する様子をリアルに表現している。
自分のやりたいことや、自分自身のことが理解できないまま日々を過ごす現代の若者の感情を、巧みな映像表現で画面に映し出す。感情に左右され、もがき苦しむ主人公の姿は、現代を生きる私たちの胸を締め付けるだろう。
セリフだけで全てを語ることはなく、独特な演出で、見ている側に考えさせるような内容になっている。ちりばめられた細やかな演出を、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
ぼくのお日さま
公開日:9月13日(金)
配給:東京テアトル
監督:奥山大史
大学在学中に作った長編作品『僕はイエス様が嫌い』が史上最年少で「第66回サンセバスチャン国際映画祭」の最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史の商業デビュー作だ。
雪が印象的な田舎町を舞台に、吃音(きつおん)の症状があるホッケー少年、フィギュアスケートの少女、夢を諦めた青年のコーチの3人による温かな関係性が描かれている。奥山が映し出す柔らかい光は、見ている人の心まで照らすように優しい。セリフは多くはないが、その余白がもたらす意味が彼の映画の魅力だろう。
本作のタイトルでもある『ぼくのお日さま』は、フォークバンドであるハンバート ハンバートの代表曲でもあり、この曲から影響を受けた奥山が手紙を出して主題歌のオファーをしたという。メインキャストはドラマ『海のはじまり』の好演が記憶に新しい池松壮亮。今回は、どんな芝居をするのか、期待が募る。
「第77回カンヌ国際映画祭」では日本作品で唯一オフィシャルセレクションに選出されている。今最も注目されている邦画の一つだろう。
ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ
公開日:9月27日(金)
配給:渋谷プロダクション
監督:阪元裕吾
2021年に公開された『ベイビーわるきゅーれ』の3作目となる本作。殺し屋としての腕はピカイチの2人の少女・杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が主人公で、社会になじもうと悪戦苦闘する何気ない日常と、激しい殺し合いのシーンがシームレスに描かれている。本作は、九州の宮崎を舞台に、史上最強の敵との戦いが繰り広げられる。
クスッと笑える2人の掛け合いはそのままだが、さらに過激になったバトルシーンは観る側にも覚悟が必要かもしれない。2人の主演女優以外に、前田敦子などの豪華な顔ぶれにも注目したい。
当時25歳であった阪元裕吾による1作目は、低予算ながらも「池袋シネマ・ロサ」で上映後、口コミで話題を集め、9カ月以上に及ぶロングラン上映を記録した。そんな異例の青春バイオレンスアクション映画の待望の続編。いち早くチェックしよう。
不都合な記憶
公開日:9月27日(金)
配給:Amazon Prime Video
監督:石川慶
最後は映画館での上映ではないが、『ある男』や『愚行録』を手がけ、今最も注目すべき監督の一人である石川慶による Amazonオリジナル作品を紹介しよう。9月27日に、プライム会員向けに世界独占配信される。
主演は、『海猿』や『悪の教典』など多彩な演技を魅せる伊藤英明と、『キングダム 大将軍の帰還』など今話題の映画に出演する新木優子だ。
舞台は、人類の宇宙移住が進んだ西暦2200年。宇宙で暮らす、一見誰もが憧れるような夫婦の間に隠された秘密と、その中で生まれる復讐(ふくしゅう)や支配を描く。宇宙の中という独立した空間の中で繰り広げられるゆがんだ人間関係はもちろん、カナダのVFX(視覚効果) チームの最新のCG技術による近未来の風景の美しさにも注目してほしい。
SF脚本家のブラッド・ライト(Brad Wright) 共同脚本家に迎え、ポーランド出身のピオトル・ニエミイスキ(Piotr Niemyjski)を撮影監督に起用。世界的な技術を身近に楽しめる機会となるだろう。
「サイコパスサスペンス・ロマンス」というキャッチフレーズも、石川の持ち味である端正な不気味さを感じさせる。2024年のベストを更新する一本になるかもしれない。