過去最大級!知られざる明治浮世絵の巨匠の回顧展「生誕190年記念 豊原国周」が3月26日まで渋谷区『太田記念美術館』で開催中
幕末から明治にかけての浮世絵師・豊原国周(とよはらくにちか)(1835-1900)の生誕190年の記念となる2025年。国周の画業を初期から晩年まで俯瞰し、約210点の作品で紹介する「生誕190年記念 豊原国周」が、2025年3月26日(水)まで東京都渋谷区の『太田記念美術館』で開催されている。
美人画や肉筆画を通して国周作品の魅力に迫る
幕末から明治にかけて、月岡芳年(つきおかよしとし)や小林清親(こばやしきよちか)らと並ぶ人気絵師として活躍した豊原国周。本展は、従来の展覧会等では芳年や清親などと比べて紹介される機会の少なかった知られざる巨匠・国周の画業を初期から晩年まで俯瞰して紹介する、過去最大級の回顧展となる。
『太田記念美術館』上席学芸員の渡邉晃さんは「従来、豊原国周は歌舞伎役者を描いた、いわゆる役者絵の第一人者として語られてきました。本展では、当時の花形役者たちを描いた役者絵の名品を紹介することはもちろん、繊細な雰囲気で、色彩感豊かに描かれた美人画や肉筆画など、200点を超える作品で国周の画業の全容を紹介。明治の浮世絵の精緻な彫り摺りや鮮やかな色彩もお楽しみください」と、その見どころを語ってくれた。
最新研究結果による浮かび上がる新たな国周像に注目
国周は明治浮世絵師の中でも随一の作品数を手掛けた。本展では最新の研究成果を踏まえて肉筆画の名品や初期に手掛けた武者絵や風景画から最晩年の子供絵まで、ジャンルと時代に偏りなく選定された作品を通して、新たな国周像を浮かび上がらせる。
国周の代表作である「具足屋版役者大首絵(ぐそくやばんやくしゃおおくびえ)」シリーズが、一挙12点公開されるのも見どころのひとつ。「初摺」と呼ばれる摺りの早い時期の作品を多く含む、保存状態のよい名品が揃い、見ごたえがある。
肉筆画では、明治26年(1893)に催されたシカゴ・コロンブス万国大博覧会へ帝国博物館からの出品依頼を受けて制作された晩年の逸品「墨堤観花図」(前期展示)が展示されるほか、国周が岩槻に逗留した際に描いたと考えられる肉筆美人画「遊女とほととぎす」(前期展示)が初公開となる。
ユニークなのが、大酒飲み、破産宣告、引っ越し魔など、国周をめぐるエピソードの数々だ。大酒飲みで知られ、九代目市川団十郎と喧嘩(けんか)をしてわざと出目に描いた話や、「国周が入牢した」とデマを流されるという詐欺に引っかかるなど、借金がかさんで東京で2番目に破産宣告を受けた話、一説に117回も引っ越しを行い「絵では北斎にかなわないが、引っ越しでは負けない」と豪語した話など、にわかには信じがたいようなエピソードが並ぶ。
展示では作品とあわせて、パネルなどで国周の人物像を紹介しているのも興味深い。
開催概要
「生誕190年記念 豊原国周」
開催期間:2025年2月1日(土)~3月26日(水)※前後期で全点展示替え
前期 2月1日(土)~24日(月・祝)
後期 3月1日(土)~26日(水)
開催時間:10:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:月(ただし2月24日は開館)・2月25~28日(展示替えのため)
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)
アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分、地下鉄千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入場料:一般1200円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名100円引き。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=太田記念美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。