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猫の『エンジェルタイム』を知っていますか?愛猫が最期にくれる“贈り物”の時間

ねこちゃんホンポ

エンジェルタイムとは何か?

「エンジェルタイム」とは、ペットが亡くなる直前に一時的に元気を取り戻したように見える現象のことを呼びます。

それまではぐったりと寝たきりだった猫が突然立ち上がったり、ごはんを食べたりして、健康だった頃のようにふるまうことがあり、飼い主には「元気になってきたのでは?」と感じられることもあります。

しかし、実際にはこれは回復ではなく、体内の変化によって一時的に見られる状態とされています。

なぜこの現象が起こるのか?

エンジェルタイムがなぜ起こるのかについては、正確なメカニズムはまだ解明されていません。しかし、いくつかの仮説があります。

エネルギーの最後の放出

死を迎える直前、体が生命維持のために残された全てのエネルギーを一気に使用することがあるといいます。

ストレスホルモンと呼ばれるアドレナリンやコルチゾールなどは、健康時には短期間の非常事態に対応するために分泌されることもあります。

病気や老いによって長期間強いストレスを受け続けた末に迎える死の直前は、究極の非常事態となるため、体は生きるために使えるすべての力を総動員するという説です。

その結果、活発に動いたり食事をしたりもでき、元気になったように見えますが、通常のストレス反応と異なる点は、残されたエネルギーをすべて使い果たしてしまうこと。そして、その後に体を回復させる余力がもう残っていないのではと考えられています。

痛みや苦しみの感覚の一時的な緩和

体内のシステムが崩れ始める過程では、痛みや苦しみの感覚が鈍くなることがあります。

死に直面した体が極限状態になると、脳内で「天然の鎮痛システム」ともいえるエンドルフィンやエンケファリンという物質が、通常の何倍もの量で分泌されます。

これらの物質が分泌されると、次のような効果があらわれます。

✔全身の痛みの感覚が鈍くなる
✔気分が穏やかになる
✔ストレス反応が抑制される

そのため、続いていた痛みが急激に和らぐことで、動きやすくなるといわれています。

臨終間際に身体的苦痛が軽くなった猫が、思いもよらず活発になるのは、身体が戦うことの限界を感じているからかもしれません。

自然な生命サイクルの一部

科学的な解明とは別に、命が終わる直前に見られる、自然な現象のひとつとして理解されることもあります。

ペットは、「動物としての本能的な部分」と、「人と暮らすことで獲得した習慣(安心できる環境や信頼できる相手との関係)」を持っています。

たとえば野生の猫の場合、捕食者から身を守るために、人目につかない安全な場所に身をひそめます。しかし、人との間で社会性を築いた猫は、安全な場所を飼い主のそばに求めて甘えてくることがあります。

看取りのなかで経験されるエンジェルタイムは、そうした関係性のあらわれなのかもしれません。

そのとき、飼い主ができること

エンジェルタイムに起きる猫の行動は、長く介護を続けて疲れ果てた飼い主にとっては、突然の回復を期待してしまうことがあります。かつてのような様子が突然見られるようになるのです。しかし、これは回復の予兆ではないため、特に冷静な判断力が必要になります。

寝たきりの猫に食欲が出たからと多くを食べさせたり、元気なときのように関わりすぎたりすると、猫の体には負担になることがあります。できるだけ猫の様子を確認しながら、猫のやりたいことをサポートする係に努めましょう。

また、元気なうちに写真や動画を残したいという気持ちは自然なものですが、そればかりに夢中になってしまうと、愛猫と向き合える貴重な時間を失ってしまうかもしれません。愛猫と過ごせる「いま、この時間」に消えない思い出を作ってください。

そして、もしお別れのときが来ても、「もっと何かできたはずだ」と自分を責めすぎないでください。できる限りのことをして、そばにいてあげたという事実は、きっと猫にとって一番の安心だったはずですから。

まとめ

エンジェルタイムという言葉は、主に動物・ペットに関して使われている言葉ですが、実はこの現象は人間でも観察されることがあり、「中治り現象」「ラスト・ラリー」などと呼ばれています。臨終が近くなると、わずかな間だけ元気だったころのように過ごせることがあるのです。

ただし、これはすべての猫に起きるわけではなく、あらわれ方にも個体差があります。全く見られないケースも珍しくありません。

もし、愛猫にこのような変化が見られたら、状態や性格などに配慮して、無理のない過ごし方をさせてあげてください。同時に、期待や希望に流されず、心の準備をしながら静かに見送りのときを迎えましょう。

エンジェルタイムの有無に関係なく、飼い主として後悔のないよう最期まで一緒に過ごす時間を大切に過ごせたら良いですね。


(獣医師監修:葛野莉奈)

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