歌にピアノ生演奏、園児ノリノリ! 釜石の3保育施設つなぐ「すてきなおんがくかい」
釜石市上中島町の市立上中島こども園(楢山知美園長、園児29人)で9日、公益財団法人「音楽の力による復興センター・東北」(仙台市)による幼児向けの企画「すてきなおんがくかい」が開かれた。「生の演奏にふれる機会を一緒に」と近くにある保育施設にも声をかけ、3施設の子どもら約90人が歌とピアノ演奏を楽しんだ。
同園の全園児や、上中島町の神愛こども園(高橋仁美園長、園児32人)と中妻町の中妻子供の家保育園(佐々木啓子園長、園児55人)の4、5歳児が集合。メゾソプラノ歌手の谷地畝晶子さん(滝沢市)、ピアノ奏者の阿部夕季恵さん(盛岡市)が来園した。
谷地畝さんは阿部さんの伴奏に合わせ、伸びやかな歌声を披露。季節感を込めた「こいのぼり」「ぶんぶんぶん」などの童謡では、子どもたちが一緒に口ずさみながら楽しんだ。「犬のおまわりさん」など動物が登場する歌や「ふしぎなポケット」といった甘いおやつにちなんだ曲ではイラストや手袋などの小道具を用意し、視覚からも歌の世界へ誘い込んだ。
連弾で聴かせたディズニー音楽メドレーでは、息の合ったきれいな音色に子どもたちは感心した。運動会の定番ソングとして耳なじみのある「クシコス・ポスト」が聞こえてくると、体を上下に揺らしたり手をたたいたりしてノリノリに。「エリーゼのために」では一転して、じっと音に耳を傾けた。
最後は、「となりのトトロ」「さんぽ」の2曲で園児らも元気な歌声を響かせ、会場が一体となった。来演のお礼に、谷地畝さんと阿部さんに手作りのメダルや花束をプレゼント。ハイタッチしながら、「歌、じょうずだったよ」「またね」などと気持ちを伝える子もいた。
上中島こども園の佐々木絢斗ちゃん(5)は歌が好きで、音楽会が開かれて「うれしかった」とうなずく。他園から友達が参加したことは「いっしょで楽しかった」と歓迎。印象に残った曲を聞くと、「チューリップの歌」と、はにかみながら答えた。
少子化により、釜石では幼児教育と小学校教育を円滑につなげるための取り組みを進める。「園は違っても同じ地域で生活し、どこかで顔を合わせることもある。小学校への入学がその一つで、滑らかな接続の機会に」と、楢山園長が他園に声がけ。「音楽は五感で楽しめ、子どもたちの成長過程に大切。生の演奏を聴いて感性を育んでもらえたら。『あの時、一緒に楽しんだよね』と交流のきっかけにもしてほしい」と、ノリノリな子どもたちにあたたかい視線を注いだ。
同センターは仙台フィルハーモニー管弦楽団と市民有志が設立したもので、コンサートは東日本大震災の約2週間後から宮城県各地や福島、岩手両県の避難所や仮設住宅などで開催してきた。費用は寄付で賄い、同楽団を中心に国内外の演奏家が参加。法人化後も各種助成金などを活用して「音楽の力を東北の復興に役立ててゆく活動」を継続している。
釜石では2014年から寺院や商業施設などで演奏会を開催。近年は岩手県の「被災者の参画による心の復興事業費補助金」を活用し、災害公営住宅や8地区の生活応援センターなどで一般向けの音楽会を続けていて、谷地畝さん、阿部さんが協力する。今回は、「東日本大震災こども未来基金」の助成を受けて実施。同園での演奏のほか、釜石高音楽部へのボイストレーニングなども行った。