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中学でスマホデビューの自閉症娘、テストの点がガタ落ち!?注意しなかった父親の真意は…

LITALICO発達ナビ

中学でスマホデビューの自閉症娘、テストの点がガタ落ち!?注意しなかった父親の真意は…

監修:井上雅彦

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー

自閉症娘、中学でスマートフォン(スマホ)デビュー!どう使うか、親はしばらく様子見で…

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘は、中学2年生。中学に入ってから、スマートフォン(スマホ)デビューしました。

スマートフォンを購入した時、使用ルールを決めたほうがいいか悩みましたが、娘がスマートフォンを、どう使うか分からなかったため、様子を見ることにしました。

だんだんとスマートフォン(スマホ)を使う時間が増えていき、トラブルも

スマートフォンを持ってすぐの頃の娘は、スマートフォンを持ち歩くことも、部屋に置くこともしないぐらい依存していませんでした。その様子を見て、私たちはとりあえずルールはつくらないことにしました。

しかし、だんだんスマートフォンを使いこなせるようになると、スマートフォンで動画を見たり、ゲームで遊んだり、使う時間が増えていきました。それでも私たちは、宿題やお手伝いなどのやるべきことさえやれば、スマートフォンを使う時間を制限させたくないと思っていました。

最初は、やるべきことをしっかりやっていたため、問題なかったのですが、そのうちに、宿題中にスマートフォンを見て、宿題がなかなか終わらず、泣き出したり……

私たちが呼んでいるのに気がつかなかったり……

お手伝いを頼むと、スマートフォンを見たいがため、嫌がるようになりました。

私たちは娘と話をすることにしました。

この時、設けたルールは、
①宿題が終わるまでスマートフォンは触らない。見ない。
②スマートフォンは夜9時まで。
②お手伝いを頼まれたら、すぐやる。
でした。

このルール決定後すぐ、中学校の試験期間に入りました。娘は中学校に入っても、勉強を頑張っていて、成績は悪くなかったので、私は娘の試験勉強のやり方に、うるさく言ったことはありませんでした。

この時も、「頑張ってねー」と声をかける程度でした。

試験終了後、返ってきたテストの点数を見て驚き!理由は…

夜遅くまで机に向かう日もあったので、今回も頑張っているなーと思っていたのですが、試験終了後、返ってきたテストは、どの教科も今までで一番悪い点数でした。

びっくりした気持ちもありましたが、「今回のテストは難しかったのかな?」と思い、夫に見せると……

なんと娘はルールをやぶり、夜の9時以降も、スマートフォンを触っていました。
そして、それを見ていた夫。

なぜ注意をしなかったか聞いてみると……

確かに今まで、私たちがいろんなことを注意しても、娘はすぐ言う通りにはしませんでした。

いつも、実際に痛い目をみたり、自分でなぜそうしなければならないか、分かっていないとこちら側の助言を受け入れませんでした。私たちは娘を呼んで話をすることにしました。

最初は、スマートフォンを見ていたことを言わなかった娘でしたが、最終的には、ルールを破っていたことを認めました。

夫は、今回の成績を責めず、次につなげるように話しました。

それから時間が経ち、やってきた次の試験。試験期間に入った時、私は娘に声をかけました。

娘はそれから、夜9時になったらリビングにスマートフォンを持ってきて、自分で箱に入れるようになりました。

スマートフォンが目に入らなくなってから、勉強がはかどるようになり、返ってきたテストの点数は前回より、上がっていました。

試験が終わってからも、娘は9時になったらリビングの箱にスマートフォンを入れに来ています。私たちは強制していませんが、自分で判断しています。

スマートフォンを持ったことで、いろんなトラブルや心配も増えます。安全に使えるよう、ルールも必要ですが、そのルールを破ってしまうこともある。私が中学生の頃、スマートフォンはありませんでしたが、ルールをつい破ってしまうという経験はあるので、気持ちは分かります。

あまりルールで縛りすぎると、自分で考えなくなってしまい、それも考えもの……。ある程度自由を与えつつ、失敗もさせ学んでもらい、本当に危ない時や困った時にその都度、様子を見て話し合いながら、見守りたいと思います。

執筆/SAKURA

(監修:井上先生より)
スマートフォンを持たせたあとの使い方についての悩み相談は非常に多く、思春期の関わりにくさと合わさって時として深刻な問題になってしまうこともあります。

あーさんのように自分の失敗体験から親の意見を受け入れ、どうしたらよいか自身で考えてうまくいくこともあれば、最初に与えたことが子どもにとっては既得権になりルールを作ることに対して大きな感情的な反発を招いてしまうこともあります。ルールの作り方は、体験させてから作るか最初から作るかが話題になりますが、正解がある訳ではありません。ただ、最も大切なことはルールを決める場合に子どもと親とがなぜルールが必要なのかその目的を共有し、話し合ってルールを作るということです。

ここが最も難しいところです。親の立場からはついつい感情的になってしまいがちなことですが子どもの立場や視点も考えて話し合いができると良いと思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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