【袋井・法多山】凶が多い? 辛口で有名な「おみくじ」吉凶より重要な“100通りの運勢”
遠州三山の一つで、静岡・袋井市にある「法多山尊永寺」には凶が多くて辛口と言われるおみくじがあります。でも大事なのは吉凶ではないのです。正しい法多山のおみくじの読み方を解説します!
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ寺だけど“山”の名で呼ばれる「法多山」
「法多山」の名で親しまれる尊永寺は、息を切らせる本堂までの長いルートや、名物のお団子、四季折々のイベントなどが有名なお寺です。
通常どのお寺も○山○寺と、山号寺号が付いています。寺号の方で呼ばれることが多いのですが、法多山尊永寺は、山号の「法多山」で親しまれています。
開山されて1300年を迎える法多山と、明治に建立された尊永寺。合わせて法多山尊永寺となりました。
約1300年前に行基が開山
1300年ほど前、行基が開山したと言われる法多山は、真言宗の寺院が60ほど集まっています。高野山のように、法多山周辺地域には多くのお寺が点在していました。
戦国時代には、今川、豊臣、徳川からの信仰も集めます。しかし武田軍の戦火もあり、明治以前の建物は少ししか残っていません、築400年を迎える国指定重要文化財の仁王門は兵庫県の播磨地方から移築されたものです。
尊永寺は明治に建立
明治に入って時の政府から、当時あった12のお寺を一つにすることが命じられ、「尊永寺」と名付けられました。
そのため歴史が浅い新しい寺の名前ではなく、1300年続く法多山の名で呼ばれています。
浅草寺と同じ観音様
尊永寺のご本尊は「正観世音菩薩」で「厄除観音」とも呼ばれています。
厄除のご利益があると言われ、名物の団子も「厄除団子」と呼ばれます。
凶が多い?!おみくじ
尊永寺のおみくじは、本堂参拝ルートの先にある、お札・お守り授与所にあります。
係の人に100円を渡し、黒い筒を振りましょう。出てきた木の棒の先に書かれた番号を係の人に伝え、結果の書かれた紙をもらいます。
法多山のおみくじは、凶が出やすいので、ドキドキするおみくじとして有名です。
結果は大吉、小吉、吉、半吉、末吉、末小吉、凶の7種類。その中で凶の割合は3割と高く、書かれていることも辛口です。
でも心配はいりません。法多山尊永寺の職員・内山田真さんに読み方を教えてもらいました。
法多山尊永寺・内山田真さん:
おみくじは、いい、普通、悪いが均等に大体3割づつ入っているので、決して凶が多いわけではありません。大吉だから1番いい、凶だから1番悪いと当たり外れのように決めつけず、おみくじを読んで「今の自分」を知ることが大事です。大吉なら今はとても良い状態、凶なら今が悪くとも明日から良くなるように書かれた運勢を読んででいただけたらと思います
知っておくべき「おみくじの読み方」
では、どうやっておみくじを読めばいいのでしょうか。
法多山のおみくじは、江戸時代から続くおみくじで、内容を変えていません。
言葉も現代版にアレンジされていないので、どういう意味かわかりづらく感じます。
法多山・内山田さん:
例えば項目の一つ「道具」は今で言うラッキーアイテムです。そこに馬具と書かれていたら、昔は馬でしたが今は車を意味します。このように現代の現状に合わせて読む必要があります
まずは漢字五文字で書かれた4つの漢文を読みましょう。
右から順に、1~15歳、16~30歳、31~45歳、46~60歳と、15年ごとの運勢が書かれています。61歳以上は元に戻って一番右の欄です。
ただ、必ず年齢に当てはめて読む必要はなく、4つの項目を四季に当てはめて読むこともできるので、自分の状況に合わせて読んでみてください。
左の欄は、より具体的な解説です。
おみくじを結ぶ場所もありますが、持ち帰りたい人は持ち帰ることができます。おみくじは仏様の言葉であり、番号の左側にはご本尊を表す文字も書かれています。持ち帰る場合も大切にしてくださいね。
見るべきは100通りの運勢
実は、吉や凶よりも大事なポイントがあるそうです!
それは番号ごとに割り振られた、具体的な運勢です。
例えば「第一大吉」のように吉凶の前に「1」という番号が書かれています。
この番号は一番から百番まであります。
書かれている内容は番号ごとに違うので、吉凶でみると7種類しかありませんが、本当は100通りの結果があります。
番号は順位ではなく、大小も関係ありません。
第八十一小吉
内山田さんのお気に入りは第八十一小吉。
小吉ですが「大吉の運というべきに」と書かれていて、これから大吉の運勢となることを教えてくれています。
たとえ小吉であっても今後に期待大なのです。
第三十四吉
おみくじを担当している職員のお気に入りは第三十四吉だそうです。
この中の「鯤鯨興巨浪(こんげいぎょろうをおこす)」という言葉は、鯨が巨大な波を起こすような、大きな変化を意味します。
吉であっても大きく運が開ける兆しがある言葉として、気に入っているそうです。
筆者のお気に入り第九十九大吉
そして筆者のお気に入りが実際に引いたことのある第九十九大吉。
これを引いた時に、係の人が「九十九(つくも)だ!」と興奮気味に渡してくれたので気になっていました。
その意味を聞くと、百(完全)になる一歩前という番号、かつ大吉で縁起がいいとわかりました。
ちなみに百番は大吉ではないそうです。人生そう単純ではないことを、示しているかのようです。
第七十七凶
凶の中でも期待が持てる、悪くない運勢のものあると教えてもらったのが第七十七凶です。
ラッキー7ならぬ凶の77ですが、「順々にものことをなしてよし」と書かれていて、凶ではアリながら少しずつことを成していくことで希望が持てる運勢です。
法多山・内山田さん:
内容は100通りあり、今よりも厳しい世を生きた江戸時代の人達にとって、自分の状況を分析し、今後を考えていくきっかけにもなりました。よく読んで自分の状況にあてはめ、厄を避けて開運のきっかけにしてください
参拝の後は「厄除団子」で一服
参拝やおみくじの後は、名物「厄除団子」で一服を。1皿250円でお茶が付いてきます。
十三代将軍・徳川家定に献上し、「くし団子」と名付けられるほど、串がたくさん刺してあるのが特徴です。お土産としても人気。凶が出ても、このお団子でおいしく開運を願いましょう!
法多山のおみくじは、漢字や表現になじみがない物も多く、少し難解なおみくじですが、引いた際にはお導きと思って、厄除け団子を食べながら、ゆっくり解読してみてはいかがでしょうか。
■施設名 法多山尊永寺
■住所 静岡県袋井市豊沢2777
■時間 8:30~16:30(お守り・おみくじ授与所)
■問合せ 0538-43-3601
取材/麻衣子