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TVアニメ『戦隊大失格』2ndシーズン最終話直前! さとうけいいち監督ロングインタビュー|アニメならではの答え合わせと2クールの軌跡

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年4月より放送中のTVアニメ『戦隊大失格』2ndシーズンもいよいよクライマックス! 突如現れた大怪人デスメシアを、ドラゴンキーパーや戦闘員Dたちは、どのように倒していくのか。デスメシアの暴走により、犠牲になる市民たちを、どのように救っていくのか。最終話を前に、さとうけいいち監督に、これまでのアニメーション制作について振り返ってもらった。

 

 

【写真】TVアニメ『戦隊大失格』2ndシーズン最終話直前!さとうけいいち監督が語る“風刺としての戦隊”/インタビュー

1stシーズンの頃は出ていなかった怪人保護協会、原作と同時進行で進んでいった2ndシーズン

──2ndシーズンを観ていて、戦闘員Dという存在の特異さをより感じたのですが、このキャラクター性について、どのように考えていましたか?

さとうけいいち監督(以下、さとう):戦闘員Dのキャラクター性に関しては春場ねぎ先生に聞くのが一番いいと思うんだけど、この作品自体が、社会風刺になってるような気がしたんです。

 

 

──私も、社会風刺の要素も入っているなと思っていました。

さとう:原作が始まったのが2021年でしょう。コロナ禍でもあったし、ジェンダー問題とか、いろいろな問題が出てきている時期だったんですよね。自分の立ち位置がどっちなのか、みたいなところで、今まで通りでいいじゃないという世論の保守的な考えに対して、リベラル的な考えがオールドメディアを通じて、良さそうな感じで出てきたりしていたんです。そういうものに対して思うところもあったんじゃないのかなぁ。

私は、あと20年くらいで死ぬからなぁと思いながら生きているし、そういう立場からの視点で世の中のことを見ているんだけど、若い世代からすると、最近だと独身税みたいな話も出てきて、結婚しない!と思っていた人も、考えるようになったりする……。そういう「今ってそんな世の中でしょ」というのを、バトルものでやるんだ!とは感じました。

──いろいろ問題が内包されている気はしました。

さとう:40年くらいかけて、良くない思考の富裕層が社会を作りましょうとやってきたものが、見えるようになってしまった。そりゃ見えるよね、SNSがあるんだから。それを規制しようという動きが日本でも出てこようとしているけど、先生もそんな世の中に対して、モヤモヤしているものがあったのではないかなぁと読んでいて感じました。でも、実際の誌面の読者層は中高生でしょうから、そこはまだわからない世界だったりするのかもしれないけど……。

 

 

──アニメが始まった当初は、少し違った視点で新鮮な面白さがあると感じていましたが、2ndシーズンではより深みが出て広がりが出た印象でした。

さとう:一見、戦隊モノとして思われがちだけど、風刺的な面白さが本作の魅力のひとつなんですよね。でもその部分は、意外と伝わっていないかもしれませんが。

キッズ向けの戦隊モノは、悪い奴を倒すための世界だけど、『戦隊大失格』は、「大きな体制」というのを戦隊組織にしていて、組織もそんなに良いものではないよねっていうところを見せていく。その中で、戦闘員Dを主人公にして、巻き込まれていきながら、「俺は真実を見届けてやるぜ!」という感じなのかなと思っていたら、そっちを追及していくのは、桜間日々輝くんの役目になっていったんですけど(笑)。

ただ、Dに関しては、生まれたのが13年前だから、中学生くらいの年齢なんですよ。まだ子供なんだというのは、プロデューサーとも話していたんです。小さいコミュニティから出てきたばかりの子が、「新しい中学校で天下を取ってやるわ!」くらいの感じなんだというのを、ブレずにやっていけばいいというのが、1stシーズンでした。Dくんを通して、ヤンキー漫画の法則で仕上げていく。Dくんからカメラが逃げなければいいと考えていたんです。そして、1stシーズンを制作している時は、怪人保護協会は原作では全く登場していなかったんです。

──そうなんですか!

さとう:アニメに関しては、その頃はまだ[夢の学園編]に入る前くらいだったんですね。この先、先生はどんな方向に行くのかなぁと思っていたら、怪人保護協会が出てきて、怪人差別の話になった。ここで差別問題をやるのか!となったんです。結構先生も踏み込んでいくなぁとは思いましたけど、大筋としてはDがグリーン部隊に配属されたので、グリーンキーパーを討伐しに行くのかなと思っていたんですよ。

 

 

──狙いには行きましたけど、最終的にグリーン部隊で仲間っぽくなっていきましたね。

さとう:そうそう。それはミイラ取りがミイラになるようなものだから、そういうこともあるなぁと思ったんですけど、難しかったのが、[戦保怪戦編]がなかなか終わらないことで(笑)。原作サイドから、「[戦保怪戦編]の終わりまで描いてもらいたい」というお話をいただいて制作を進めていたけど、2ndシーズンのシナリオを書き始めたときは、まだ頭のほうだったんです。

構成、シナリオ開発に時間が追い付いてきたんですが、なかなか終わらないぞ……となっていました(汗)。漫画を追いかけている方は、色んなキャラクターの深掘りが楽しめたと思うんですけど、アニメは1クールで描ける内容が限られてしまうから、1クール12話で話をまとめなければいけない。苦渋の決断をする日々でした。

──全部は拾いきれないところはありましたね。

さとう:そもそも1stシーズンでは、大戦隊の候補生たちの試験があり、独立愚連隊みたいなものがチームアップしていく。で、見えないところで戦闘員Dがブルーキーパーと戦い、決着を付ける。そこで終わることははっきりしていたんだけど、そこから2ndシーズンになって[夢の学園編]が始まると、「おやおやおや、これはサスペンスものだぞ」と。

そしてビジュアル系みたいな千歳が出てきて、それがグリーンキーパーであることが明らかになる。さらに、翡翠かのんというヤンキー風の女の子が出てきて頭張っていくわけですけど、誰よりも漢らしいんですよね(笑)。これは男女共に人気になるよねと思いました。

──翡翠は、主人公みたいなキャラクターでしたからね(笑)。

さとう:薄久保天使ちゃんもいたけど、明らかに翡翠でしたよね。それは[戦保怪戦編]になってからも、そうでした。

 

 

2クール、アニメ『戦隊大失格』を観てくださった皆さんに、お返しをする最終話にしたかった

──原作と同時進行で進んでいた、というのは驚きでした。

さとう:そうでしょう(笑)。制作チームも、この物語は、レッドキーパーvs.戦闘員Dだと考えていたんです。TVアニメでも、1stシーズン第2話で赤刎創星とすれ違って、第3話で神具を奪い取っているので、ロックオンはされていたと思うんです。だから、2ndシーズンの制作が始まり、プロデューサーやシリーズ構成の大知慶一郎くんとの打ち合わせの中でやろうとしていたのが、レッドとの対決で、そのためにレッドの影は薄くしたくなかったんです。だからレッドが欠けないように、Dの裏でレッドが暗躍しながら何をしているのかというのを見せていったんですね。

なので、物語が現在進行形で進んでいる中、先生にレッドに対しての答えを聞いてみたんですよ。そしたら、ここではまだレッドキーパーvs.戦闘員Dはないらしいということで、頭を切り替えて、アニメとして[戦保怪戦編]をしっかり終わらせることを考えました。原作では続きがあるということもわかっていたんだけど、ここまで2クール、アニメ『戦隊大失格』を観てくださった皆さんに、お返しをするという意味で、大団円にしよう!と思ったんです。

 

 

──続きを匂わすと言うよりは、ここで一旦終わらせるということですね。

さとう:そうです。ここで一度ケリは付けましょう!という話になりまして、それに対して先生も「そうですね」と言ってくださり、こういうのを見せたいというのも伝えてくださったので、それを聞いた上で、進めていきました。

そういう意味では、オリジナル作品を作ったことがないスタッフさんたちだったら、やれなかったかもしれないですね。私もオリジナル作品をやってきたという実績はあるので、こうしたほうが、未来は救われるというのがわかっていたんです。つまり、アニメでこういうキャラクターだと描いてきたものを、強引に漫画原作の世界に落とし込んでいこうとすると、逆に齟齬が出てきてしまう。アニメのストロークで、ぐいぐい描いていったキャラクターは、アニメの世界のまま押し切ったほうがいいと思っているので、そう判断して進めていきました。最後、第23〜24話がセットになっているんですけど、そのことは先生にもお伝えしています。

──原作とは違う展開もありましたね。あと第23話では、候補生たちも出てきました。

さとう:打ち合わせをしていたときは、まだ[戦保怪戦編]がどう終わるのかまでは行っていなくて、小熊蘭丸も生きているかどうかわからないという話だったので、私は「生きているなら出したほうがいいですよ」とお話させていただきました。だって、藍染小町をあそこまで身を挺して庇ったわけですから。そしたら原作のほうでも、候補生や小熊くんが出てきてくれたのは嬉しかったですね。

──アニメと原作で補完しながら作っていったのですね。

さとう:私が特に意識をしたのは浮遊城で、原作では登場シーンは限られているんですけど、アニメでは遠景が入ると、スモーキーな空にシルエットが薄っすら見えるようにしていたんです。なので1stシーズンから観てくださっていた方にお返しをするという意味でも、戦闘員たちはちゃんと出したかった。なので、最終話では登場します!

 

 

──EDテーマでダンスしているだけではなかったわけですね(笑)。

さとう:戦闘員やレッドキーパーのアイデンティティという部分も含めて、アニメはアニメでちゃんと取り戻せるようにしたかったので、最終話は、「おかえり戦闘員たち」「おかえり候補生たち」になっていると思います。あと、第24話は音楽面で私からのサプライズも詰め込んでいますので、それはそれで楽しんでいただければと思います。

──それは楽しみです。

さとう:やっぱり、観終わった感は大事にしたかったんですよ。あれだけレッドと向き合って、2ndシーズンでもレッドの描写をオリジナルで積んできたわけだから、レッドの立ち位置は見せたかったですし、戦闘員は戦闘員たちで、わけのわからないオタク怪人(=大怪人デスメシア)が現れたけど、そんなの知らねー!と。それより「日曜決戦」の視聴者がいなくなったら困るんだと、自分たちのアイデンティティを見せる。それぞれが自分の正義のためだったら、アイデンティティを使っていいだろうと考えて、オタク怪人を止めるためには、全員野球しかないと思いました。

──ありがとうございます。少しだけ音響の話もお願いします。大怪人デスメシア=薄久保薬師役を神谷浩史さんが担当されていて、ぴったりだなと思いました。

さとう:原作モノを久方ぶりにやったんです。『いぬやしき』以来だったんですけど、シチュエーションとキャラクターの多さはものすごかったです。役者さんも30人くらいはいたと思いますけど、とても良かったですよね。

キャスティングですごくこだわっていたのは、「いつもこんな役を演じているよね」って思った人に、全然違う感じのことをやってもらうということでした。それで、1stシーズンの前に、レギュラーを決めるオーディションをしたんですけど、2ndシーズンからは、時間的な理由もあって、ほぼ監督采配で決めていきました。でも、結構ハマっていたでしょう?

 

 

──ハマっていましたね。

さとう:これは予算も関係してくるところなんですけど、私がこの役にはこの人がいいよねってプロデューサーに伝えるんです。そのときプロデューサーは、「やめましょう」とは言わないんですよ(笑)。その演者さんを使うんですか!と驚きつつも、動いてはくれるんです。

なので、石田彰さん(西木有/マガティア役)、梶裕貴君(若葉京助役)や神谷君へは、そういう流れでお願いしました。ただ、リュージン君役の野沢雅子さんだけは本当に申し訳ないなと思いました(笑)。私は昔からのお付き合いがあるから、竜(ドラゴン)だし出演してもらおうと軽く言ってしまったけど、これも調整は大変だったと思います。

──神谷さんでいうと、あの鼻歌は強烈でした(笑)。

さとう:あれね! あれは無理をさせたなぁ。でもそれが薬師なんだよね(笑)。オタクだから。そして鼻歌を歌いながら、怪人化剤を刺す。あれは覚悟なんですよね。収録をしているときも、面白いものが録れているなと感じました。本来なら、覚悟を決めるシーンだから、シリアスな劇伴を流してもいいんだけど、それはやめようと思ったんです。原作でも歌ったりしているし、その感じを鼻歌で演じてもらおうと思って……。

さすがに神谷さんに「自由に歌ってください」とは言えないので、池頼広さんに劇伴を作曲をしてもらって、それをアフレコ現場で歌ってもらったんですけど、全然(尺が)入らなくて(笑)。結局「ここまででいいんじゃないか」というところまでにしました。ただ、アフレコ現場で録ったから、サウンドトラックには収録されないんですよ。

 

 

──アフレコでは、自由度が高かったという話もキャストからは出ていました。

さとう:どんな作品でもそうだけど、役者さんとのキャッチボールは楽しいんです。結局は演者さんが何をやりたいかなんですけど、毎回、方向性をこちらが伝えて、こういうキャラクターになりますけど、あなたならどうしますか?というディスカッションを収録前にやるんです。だいたい、この方がこういう役をやれば、ニュアンスとかはこうなるだろうというシミュレーションは頭の中でできているから、皆さん、そこには必ず来るんですよね。でも、実際やってみたら、もっと違う方向でも行けるかもと思ったりするので、そのときは相談したりします。そのやり取りも面白かったです。

──残すところ最終話のみとなりましたが、最後にひと言、お願いします。

さとう:いろいろ話しましたが、作り手としては、ちゃんと未来がある感じには落とし込めたのではないかなと思っていますので、最後まで楽しんでください。
 

[文・塚越淳一]

 

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