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「KOBE BEAT」を形に—。TOTTEI作り手インタビュー アリーナの空間づくりの裏側 神戸市

Kiss

神戸の新たなランドマーク『GLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)』の空間設計・施工を手がけた、株式会社スペースにインタビュー!

神戸らしさとワクワクが共存する空間=「KOBE BEAT」をどのようにして創り上げたのか。アリーナを運営する株式会社One Bright KOBE(OBK)との「協創」の物語とともに、その舞台裏を紐解きます。

INDEX神戸アリーナプロジェクト参画の経緯アリーナの空間づくりの事例紹介プロジェクト進行中のエピソード開業を迎えた今の想いとこれからの展望

神戸アリーナプロジェクト参画の経緯

まずはスペースの皆さんにお伺いします。今回「神戸アリーナプロジェクト」に参画した経緯を教えてください。

スペース大田さん(以下 ス.大田):大きなきっかけは二つあります。ひとつは、私たちはこれまで主に商業施設の空間づくりを手掛けてきましたが、近年はエンタメ空間やスポーツ分野にも注力し、ボールパークなどの施設も手掛けるようになった“会社としての背景”。その流れで、B.LEAGUEが掲げる「夢のアリーナ構想」にも関心を持っていました。

もうひとつは、“神戸とのご縁”です。震災以来、神戸の元気が少し失われていることに問題意識を持っていた神戸在住の社員が「神戸にアリーナができる」という話を聞きつけ、OBKにアプローチを行いました。

スペース髙さん(以下 ス.髙):その社員が私です(笑)。私は元々大阪に住んでいましたが、神戸の大学に進学し、この街で青春時代を過ごしました。社会人になってからは実際に移り住んで、今も神戸で暮らしています。

そんな愛着のある神戸で大規模なプロジェクトが動くと知って、「何か力になりたい」とアクションを起こしました。その後、アプローチを重ねていく中でお互いの思いを共有し、少しずつお任せいただける領域が増えていった次第です。

(左)スペース髙さん、(右)スペース大田さん

出会った当初、OBKとしてはスペースにどんな印象をお持ちでしたか?

OBK日下部(以下 日下部):もともとスペースさんの存在は知っていましたが、実際にお会いして、「空間づくりにおいて地域とのつながりを大切にしている」姿勢がとても印象的でした。その後のコンペで、内装設計や施工など、さまざまな領域でご提案をいただき、現在の関係を構築していきました。

ス.髙:私は「やれることはやりたい」典型的な大阪人気質で、神戸にアリーナを作る大きなプロジェクトの中で、自分たちが貢献できる部分を、いろいろなアイデアとともに提案させてもらいました。

日下部:(スペースさんは)すごく積極的で、その熱意が逆にありがたかったです(笑)。「何でも相談していいんだ」と思える雰囲気のおかげで、私たちも安心して話ができました。

ス.大田:そうしたやりとりを経て、2024年12月に「オフィシャルパートナー」の契約を締結しました。私たちの会社も「地域創生」をテーマのひとつに掲げており、神戸アリーナプロジェクトの「アリーナを起点としたまちづくり」というコンセプトに強く共感できたことが、参画を後押しする大きな要因になりました。

(左)OBK日下部さん、(右)OBK佐倉さん

今回の空間づくりのコンセプトは、神戸らしさとワクワクを備えた空間「KOBE BEAT」と伺いましたが、初期段階から完成イメージは共有できていたのでしょうか?

日下部:当時、全国で次々と新しいアリーナが誕生していたこともあり、私たちも内装についてある程度のイメージは持っていました。だからこそ、「他とは違う空間にしたい」という思いが生まれて、バスケットボールだけでなく音楽など多様なエンタメに対応できる場を目指しました。

建物自体は大林組さんが設計を担っていたので、それを踏まえながら、「いかに世界観に没入できる空間にするか」をテーマに、コンペ形式でご提案をいただきながら完成イメージを具体化していきました。

プロジェクトを進めていく中で、互いを「チーム」だと実感するようになったのはいつ頃からでしたか?

日下部:気がつけば自然と、という感じでしたね。こちらの要望に対して、できること・できないことを理由も含めて丁寧に説明してくれて、「こうすれば可能かもしれない」という前向きな提案も含め、誠実かつ柔軟に対応していただきました。その時間の積み重ねから、信頼関係が生まれていったのだと思います。

設計・施工を担当した2階スタンドエリア「KOBE CROSSOVER LOUNGE」

アリーナの空間づくりの事例紹介

スペースが空間づくりを担当した領域で、どんな工夫を凝らし、「KOBE BEAT」を表現されたのか教えてください。

スペース一色さん(以下 ス.一色):メインフロアである2階の『スタンドエリア』は、多くのお客様が行き交う場所ということで、神戸の街を象徴する「山側」と「海側」の文化をデザインに取り入れました。山側のフードショップには木材を使って温もりのある雰囲気に、海側には海を連想させるカラーや素材を用いて、神戸らしさを演出しています。

施工を担当した4階のVIPルーム

スペース和田さん(以下 ス.和田):4階の『VIPルーム』も、エントランスから上がったときに「何かが違う」と感じてもらえる特別感を意識しています。

神戸ストークスの選手たちが使うバックヤードにも工夫が凝らされているとか。

ス.一色:はい。選手たちの『ロッカールーム』では「ストークスらしさ」を大切にして、チーム名の由来でもある「コウノトリ」にちなんで、天井照明に巣をイメージしたデザインを取り入れました。また、試合前は選手のモチベーションを高め、試合後はリラックスできるように、照明の色温度を自由に変えられる仕様にもしています。

神戸ストークス選手用ロッカールーム 撮影/一般社団法人DPCA 代表理事 上田雄太

OBK渋谷(以下 渋谷):ロッカールームやサブアリーナの環境は本当に素晴らしくて、選手たちも気持ちが引き締まった様子でしたし、新戦力の獲得にも一役買ってくれました。

すでに発表していますが、ストークスは来シーズンに向けて、B1リーグの他チームからトップレベルの選手を数名、獲得しています。リクルート活動の一環で彼らを施設見学に招いた際も非常に好評で、この空間があったからこそ、「ストークスでプレーしたい」と言ってもらえたのだと思います。

個性的なテナントの数々も「神戸らしさ」のひとつ♪

テナントエリアでは、どのような工夫をされたのでしょうか?スペースが担当された店舗について教えてください。

ス.髙:1階は『ユーハイム』と『淡路屋』、2階はTOTTEIのオフィシャルショップ、『No.13』、『サクレフルール』、『TOTTEI STAND BUOY』を担当しました。

ス.大田:アリーナは興行のある日とない日で来場者数が大きく変わるため、テイクアウト対応など、興行がない日も集客できる仕組みが求められます。また、外に向けても営業できる“二面性”を持たせる必要もありました。そのため、各テナントと相談を重ね、デザインだけでなく機能性や柔軟性も重視して設計しました。

(左)スペース一色さん、(右)スペース和田さん

プロジェクト進行中のエピソード

設計から竣工までの過程で、印象に残っている出来事はありますか?

ス.大田:ジーライオンアリーナ神戸は「震災30年」の節目に開業することが重要だった分、スケジュールが非常にタイトで、この規模のプロジェクトを短期間で進めることの難しさは当初から感じていました。

今までにない立地・デザインなので建築設計上の制約も多く、テナントの誘致においても、神戸ゆかりの企業を中心に選定するという条件がありました。大林組さんをはじめ、建築サイドや行政機関との調整も多岐にわたり、通常の商業施設よりも格段に複雑だったと思います。テナント関係では、OBKの佐倉さんもかなりご苦労されたのではないでしょうか。

OBK佐倉(以下 佐倉):私は2024年5月にOBKに入社し、途中からこのプロジェクトに参加しました。時間的な制約が厳しい中でも、スペースの皆さんは熱意と責任感を持って最後まで向き合ってくれました。「神戸らしさ」を大切にしながら設計に寄り添ってくださったことに、心から感謝しています。

チームとしての“深い信頼”を感じていたんですね。

佐倉:信頼という土台があったからこそ、「無茶かもしれないけれどお願いしたい」と言える関係が築けたのだと思います。

そうしたリクエストを受けたとき、スペースとしてはどんなお気持ちでしたか?

ス.髙:これだけ大きな案件に関わるのだから「どんと来い」という気持ちで臨んでいました。社内でも「困っていることがあればやろう」という空気があり、その姿勢が良い結果につながったと思います。

佐倉:スペースさんが最後まで妥協せず向き合ってくれたことで、私たちも「絶対にやり切ろう」と思えました!

両社の想いや熱量が、プロジェクトを進める原動力になったのでしょうか?

ス.和田:本当にギリギリまで全力で取り組みました。常に密にコミュニケーションを取りながら、同じ目線で進められたことが成功の大きな要因になったと思います。

ス.髙:和田は現場でリーダーシップを取ってくれて、状況を把握しながら、関係各社の協力を取りまとめてくれました。本当に大変な役割だったと思いますが、それが“スペースの品質”を支えていました。

「神戸らしさ」というコンセプトを空間に落とし込む(アウトプットする)のは難しい作業だったと思います…!

ス.大田:港町である神戸は、さまざまな文化が混ざり合い・洗練された、独特な風土を持っており、海と山に囲まれた豊かな自然も、神戸らしさの一部だと感じています。文化的にもおしゃれでユニークな人が多いイメージで、それらの要素を空間としてどう表現するかは大きな挑戦でした。

ス.一色:僕も同感です。そこで、内装に複数の要素がクロスしたデザインや、歴史の積み重ねを意識した積層的なデザインを取り入れることで、神戸らしさを演出しました。

ス.大田:ロッカールームやVIPエリアも、“上質さ”という神戸ブランドを象徴していて、建物全体を見ても、他のアリーナと比べて非常に高いレベルにあると自負しています。

開業を迎えた今の想いとこれからの展望

開業から2カ月が経過し、多くの来場者がアリーナで“ワクワクした時間”を過ごしています。いまの率直な想いを聞かせください。

ス.大田:無事に開業し、問題なく運営できていることに作り手の一人としてホッとしています。私自身もライブを見に行ったり、バスケの試合を観戦したりして、利用者の立場からも「またここに来たい」と思える場所になったと実感しています。

ス.髙:自分たちが作った空間にあれだけ多くの人が集まる光景を見ることは、本当に特別な体験でした。今後、海側の開発がさらに進んでいく中で、アリーナがその中核になっていくと信じています。

ス.和田:270度海に囲まれたパノラマビューを見たときの感動は忘れられません。このプロジェクトに関われたことは、非常に大きな刺激となりました。

ス.一色:普段は商業施設の設計が中心なので、今回のように「訪れた人の記憶に残る空間」づくりに関われたことは、本当に貴重な経験でした。誰かの思い出に残る場所を生み出せたことを、とても嬉しく思っています。

(左)OBK渋谷さん

佐倉:今後は、“日常的なにぎわい”をどう生み出していくか、来場者に感動を提供し続けるかが大きな課題になります。売上の向上も含め、スペースさんとはこれからもハード・ソフトの両面で協力しながら、プロジェクトを進化させていきたいです。

日下部:素晴らしい空間ができあがったので、これからは実際に来場者を迎えたことで見えてきたサービス面・ソフト面の課題にしっかり向き合っていきたいと考えています。

渋谷:無事に開業を迎え、社内でも「日本一のアリーナを目指す」という意識がさらに高まりました。ハード面だけでなく、質の高い体験の提供という面でも神戸らしさを体現できるように、スペースさんをはじめとする関係会社の皆さんとともに挑戦を続けていきます。

最後に「空間づくり」という仕事の醍醐味について教えてください!

ス.大田:空間づくりは「お客様との距離が近い」仕事であり、クライアントだけでなく、実際にその場を利用するユーザーとも近い距離感で関わることができます。

また、トレンドの移り変わりが激しい店舗・施設の空間づくりにおいては、時代の流れを反映させる視点と、普遍的な価値を捉える視点の両方が求められ、今を感じながら、未来に残る空間を作る—。そのバランスに面白さがあると感じています。

私はよく「店づくりは街づくり」と言っているのですが、空間を通して笑顔やにぎわいを生み出せるのが、この仕事のいちばんの醍醐味だと思います。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!


開業日
2025年4月4日(金)

場所
TOTTEI/GLION ARENA KOBE
(神戸市中央区新港町2番1号)

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