自分たちが暮らす地域の小麦や米の美味しさを追求したパンに惚れる人続出!【Bakery Direct(ベーカリーディレクト)】(山形県・酒田市)
「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.22
『環境再生型農業』を応援するパン作りをしているベーカリーを紹介するシリーズ。
山形県酒田市にある「Bakery Direct(ベーカリーディレクト)」の森 源輝シェフにお話を聞いてきました。2023年6月にオープン。まもなく2周年を迎えられます。
土曜日の13時半の訪問でしたが客足の途絶えることのない人気店。
JR羽越本線「酒田」駅から徒歩5分と近いので電車で旅行する方も行きやすい立地です。
まず目を引いたのが店内右側に並んでいた山形産のお米「はえぬき」を使った「はえぬき湯種クロワッサンα」。
クロワッサン好きの私を捉えたのだから何か特徴があるはず!
昨年開催された『第1回 おいしい米粉パンコンテストinやまがた』で優秀賞を受賞されているのですね。
商品が少なくなると補充したり見やすいようにサッと陳列を変えてくださるなど、細かいところまで気を使われているから本当にどれも美味しく見えてかなり悩みました。
スタッフの方に人気のパンをお聞きすると「春よ恋・キタノカオリ高加水熟成食パン」はよく出ます、と。
確かに食パンを手に取るお客様が多かったです。
その隣には庄内産小麦や国産ライ麦を使った「パン・オ・ルヴァン」も美しい焼き色が目を惹きます。
他には「塩バターロール」、「メロンパン」なども挙げてくださいました。
水分を逃さないよう大きく焼いた「キタノカオリブール」、これも絶対美味しいはず!
旅先で欲張ると、本来の美味しさを感じられないタイミングで食べることになり作り手の方に申し訳なくなるので、吟味に吟味を重ねてパンを購入。
国産ライ麦“ハンコック”、庄内産小麦を使ったパンをまずは実食
◆パン・オ・ルヴァン
国産小麦、庄内産小麦、国産ライ麦を36時間ゆっくりと発酵させることで複雑で深みのある味わいを生みだしています。
焼いた当日ではなく2日後に食べたのですが、クラストは焼きこんだ香ばしさと麦の甘みを感じる香りがあり、手で軽くちぎれるくらいソフト。
クラムからは草原で風に吹かれた時のような心地いい香りがします。
トーストすると、小麦にはないライ麦の深みのある香りが湯気と共にぶわ~っと立ちのぼり、
クラストはカリッと香ばしく、甘みが後から追ってくる。
クラムはカリッほわっ、もっちり。
バターを塗るとミルキーさが加わり、素朴だったパンがドレスをまとったシンデレラのように味わいが変化します。
国産の粉をつかうようになったのは?
森 源輝シェフは埼玉県の出身で、ご実家も埼玉県内にある人気のベーカリー。
そのお店では北海道にある「アグリシステム株式会社」の国産小麦粉を使い、できるだけ農薬や化学肥料不使用のものを選んで使われていたのだそう。
自家製酵母や様々な発酵種を使い分けるなど、現在のお店の基礎を学ばれました。
森シェフの個人Instagramアカウントを拝見すると、一つの商品に多種類の粉をブレンドされたり、ルヴァン種以外にライサワー種やつや姫から採った米麹を使うなど、まるでラボ(研究所)を覗かせてもらっているよう。
昨年6月に月山の小麦畑の見学に行ったことで、自分たちが使う小麦は生産者さん、製粉会社さんの弛まぬ努力があるからこそパンを作ることができていると再認識されたのだそう。
店内にあった『庄内産小麦を作って食べよう』というパンフレット。
昨年7月に取材させていただいた宮城県松島町にある「ぱんやあいざわ」さんにも置いてありました。
「山形大学農学部」と山形県東根市にある「株式会社 小川製粉」さんが中心となって始まった『庄内スマート・テロワール』という取り組み。
農と食の循環による、持続可能な食糧自給を目指し、地域内消費を増やしていこうというものです。
現在、ディレクトさんでは一般的な「ゆきちから」と、鶴岡市産の石臼挽き「ゆきちから」を使った『月山の粉雪』というブランドの粉を使い、取り組みを応援されています。
前述のアグリシステムさんも、“健全な土壌作り”から持続可能な環境再生型農業を行っています。
このような生産者さんから作り手さんまでの流れ(バトン)を受け取り、私たち消費者がそういう商品を選んで食べることで、また生産者さんが安定した収量の作物を作ることができるのです。
安全で美味しいものを食べて応援していきたいですね。
“はえぬき”の米粉を使ったクロワッサンは食べるべき一品!
入店してすぐ、形の美しさや山形県産はえぬきの米粉を使っているところに惹かれ、持ち帰って撮影しながら改めて見惚れてしまう。
バターのミルキーなリッチさと糖の甘やかな香りに食指が動く。
端からはバターがじゅわっとしみ出し、薪を使って焼いているかのような香ばしい風味が鼻を抜けていき、とても好ましい。
当日の夜に食べたので食感は少し変化しているかもしれませんが、米粉なのにふんわりしっとり、もちっと感が同居。
米粉特有のサラサラとした口どけも。
米粉を8割も使ってこの食感が出るのは湯種製法だからでしょうか。
これはまた食べたい!と思わされる好みのクロワッサンでした。
小麦粉のクロワッサンとの食べ比べも
米粉のクロワッサンを購入しているので、小麦粉のクロワッサンと同じ生地を使ったパン・オ・ショコラを購入。
◆ヴァローナ・パンオ・ショコラ
この麗しさなら食べずとも美味しいであろうことが一目瞭然!
米粉のクロワッサンとは違う、発酵バターが一瞬香るけれどバターに頼るものでなはいように感じます。
パリッザクッ、威勢のいい音。生地の味や食感を楽しんでもらうクロワッサンなのでしょう。
ヴァローナ社のチョコスティックが3本使われていてベストなバランス。
クロワッサンがリベイク推奨と書いてあったのでこれもリベイクすると
温めたことでチョコが華やかに香り、薄氷を踏んだかのようなパリンという食感が心地いい。
お店のスペシャリテは高加水のこちら!
◆キタノカオリブール
自家製ルヴァン種を使用。
断面が艶々うるるんなクラムは、ぺたぺたと指が吸い付く。
お餅のような求肥のようなもちもち食感で、キタノカオリの特徴である甘みがじわじわ広がりするりと消えていった。
後から酵母の爽やかな風味が甘みを引き立ててとても美味しい。
一見硬そうに見えて、クラストはソフトで歯切れがいいので、幅広い年代から「美味しい」と感じてもらえるはず。
地産地消をパン作りで応援する森シェフ
実は、リジェネラティブベーカリーの取材としてではなく東北旅行中に偶然訪れた「Bakery Direct」さん。
お話を聞かせていただくうちに「環境再生型農業を応援しているお店」であるとわかり、突然の訪問にもかかわらずお時間をつくっていただきました。
なぜ酒田市にお店を開いたのかをお聞きすると「知り合いがいたわけでもなく、単純に居抜き物件があると紹介されて気に入ったからなんです」と親しみやすい笑顔を浮かべながら教えてくださいました。
この思い切りの良さで、前例にとらわれないパン作りをして、庄内地方を盛り上げていかれることでしょう。
お住まいの方はもちろん、旅先でパンを楽しみたい方もぜひ訪れてみてくださいね。
※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。
https://www.agrisystem.co.jp/regenerativerye2023.html
SHOP INFORMATION
【店名】Bakery Direct(ベーカリーディレクト)
【住所】山形県酒田市駅東2-2-10
【営業時間】10:00~16:00
【定休日】月・火(不定休あり)
※写真の商品の種類、価格は、2025年5月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。