白州のハイボール缶が完璧に白州すぎる! → 缶ハイボールに関する宇宙の法則が崩壊した
もう皆、買えた者は飲んで、十分に堪能したことだろう。定期的に出てくるので、なんだか恒例感がでてきた白州のハイボール缶の話だ!
サントリーのプレミアムハイボールの白州は、これで4種目となる。私は4種のうち、今年のが最も素のボトル入り白州で作ったものに近しいハイボールなのではないか……と感じた。
ちょ、待てよ。缶になったら、多少はクオリティダウンするのが宇宙の法則だと思い込んでいたが、実はやろうと思えば回避できた……ってコト??
・4種
これまでに出た白州のハイボールシリーズは、いずれも美味いことは揺るがないが、いい意味で “フレーバード白州” みたいな側面も明確だったように思う。
最初に出た「香るスモーキー」はスモーキー感がまあまあ強めで私は好きだったが、表記無しの無印な白州……いわばノンエイジ白州の世界観とは違うような気がしなくもなかった。
個人的に白州には、「もののけ姫」に出てきたような苔深い森の香りみたいな印象をもっているのだが、「香るスモーキー」は、その辺で野焼きしてます?みたいな。
次に出た「シェリー樽ブレンド」は甘さがしっかり前に出てきており、ハイボールとしての一般ウケ的には強そうだが、ノンエイジ白州との違いは最も大きかったのではないかと思っている。
続いて出た「清々しいスモーキー」は、最初の「香るスモーキー」よりスモーキー感を抑え、まあまあノンエイジ白州のイメージの延長線上的な感じが強まったと記憶している。
しかし何にせよ、これまでの白州缶ハイボール3種には、「これがあの白州だよ」と言って白州を飲んだことが無い人に飲ませるのは、ちょっと違うかもしれないと感じさせる面があったと思う。でもまあ、缶だしそういうものかなみたいな。
・白州み
そして今年の「爽やかにして豊かな余韻」だ。近所のローソンでは726円だった。前回までは600円台だった気がしたが、ついに700円超え。
しかし、それでも飛ぶように売れていくからすごい。近所のスーパーでは備蓄米は残っていたが、白州のハイボールは速攻で売り切れていた。ちなみに私も、米を買わず白州を買ったタイプ。
今回はホワイトオーク樽の長期熟成原酒が入っていることをアピールしている。そして開けた瞬間に噴出する、白州らしい青りんごやラフランスみたいな香りの中に漂うココナッツみ。
まさにホワイトオーク樽がウリのウィスキーっぽい。しかし芯にあるのは、間違いなく白州だ……! 飲む前からこんなにも表記通りな缶ハイボールが実現可能なのかという、驚くべき精度。
まずは缶のまま飲んだが、これは凄く白州としか言いようがない! そしてやや強めの炭酸。白州のハイボール缶は、毎回炭酸がちゃんと機能していて好ましい。
炭酸の気泡がはじける度に、白州の森の世界観が脳にまで香るッ……!! というか実は今日、帰宅前に新宿のバーでノンエイジ白州のハイボールを飲んできたのだが、差が無い気がする。
そこは結構ちゃんとした間違いのない有名なバーで、1杯2000円くらいの美味しいハイボールだったのだが、こいつは700円ちょっとの缶なのに、バーの2000円ハイボールと同格だ。
最後にグラスでも飲んでみたが、少しパンチ力が下がった感がした。まあ私の愛用グラスは変な形なので、そのせいかもしれない。とりあえず、個人的には缶のまま行くのが良い気がした。
・可能なのかよ
さて、こうして4弾目にして極まった感のある白州のハイボールを飲んで抱かずにいられなかったのが、缶で可能なのだな……という驚嘆だ。
これまでも様々な美味い銘柄のウィスキーが缶のハイボールになってきたが、なぜか不快なアルコール感が出てきたり、妙に風味が薄くなったり、全く香らなくなったりといった、缶ハイボール化に定番の多少の品質の低下は、あって当然のものみたいなイメージがあったじゃないか。
レビューする時も、その辺は特に叩くポイントではないみたいな暗黙の忖度をしていた。不可避なものなので、減点するにしても一定の配慮をするみたいな。
しかし「爽やかにして豊かな余韻」は、バーで出てくるノンエイジ白州のボトルから作ったハイボールと、風味は微妙に異なっていても品質に差は無いと言わざるを得ない。
風味の違いは、私の感覚だと缶は華やかさがボトルよりあるので、そこがホワイトオーク樽の原酒をアピールしていた理由ではないかと思っている。
何にせよ、今回の缶とボトルの味の違いは品質の差ではなく、ブレンドの違いみたいな、そういう水準のものだと確信している。
まあそりゃあ1缶700円超えなので、きっと他の銘柄の缶ハイボールが超えられなかった何かを、コストをかけて超えたのではないかとは思う。しかし缶化でありがちなクオリティダウンは技術的に回避可能なことを、白州が示したのは確か。
ちなみに700円は数字だけ見ると高いが、普通にボトルのノンエイジ白州を現在の平均的な値段で買ってきて、自分で王道の1:4の割合で350mlのハイボールを作るより安いと思われる。
つまり今回の缶の白州は、ボトルと比してはるかに入手しやすい価格の缶を通じ、ボトルの白州を飲んだ時とそん色ない体験を、広い層に提供できるものだったわけだ。
これは200円とか300円に抑えて出して、飲んだ者に “オリジナルと比べるとだいぶ劣化しているが、まあ缶なので許すよ” みたいな、そういうクオリティのよくある缶ハイボール化よりも、ブランドへの信頼を高め、新規ファンを増やせるだろう。
元からその銘柄の熱心なファンにとっても、バチバチにクオリティの高いハイボール缶化は、テンションのあがるものに違いない。何の分野でも、自分の推してる物が、別形態で出ても高いクオリティを維持していたら、そりゃあ嬉しいのが真理だろ?
ということで白州の2025年の新作ハイボール缶を飲んでみたが、これは想定外の衝撃だ。缶ハイボールになると劣化するという宇宙の法則が崩壊してしまった。
今後は、オリジナルのボトルが存在するウィスキーのハイボール缶のレビューから、”缶なので劣化するもの” みたいな忖度は消える。そしてクオリティに明確な低下が感じられたら、安かろう悪かろうというストレートなジャッジに移行せざるを得ない。
そういや、白州でできるなら、その他のサントリー所有の蒸留所の酒でもできるのだろう。白州ファンには悪いが、もうこの4弾目で白州は完成と言って良いのではないかと思う。
そのうち、例えばラフロイグやマッカランのような他のサントリーのモルトウィスキーの、ガチクオリティなハイボール缶も出してほしいですね。
参考リンク:サントリー
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.