【高知家の後継者募集】刀剣の世界に飛び込もう! 高知県南国市の「古美術 宮本」
刀剣ブームの勢いが止まらない。
「戦国BASARA」や「刀剣乱舞」などのゲーム界隈から端を発したブームは、「刀剣女子」という言葉が生まれるなど、古くからコアなファンが親しんでいた刀剣の世界に新たなファンを多数誕生させた。
刀剣女子を始めとする新たなファンは、ゲームという2次元世界だけでなく、原作を元にしたミュージカルなどにも派生。
その大きな流れの中で、現存する名刀を一目見ようという人々が、全国の博物館や美術館などに足を運びはじめ、その様子をSNSに発信するなど、刀剣の「推し活」に励む人々は少なくない。また、コロナ明けから大挙訪日している外国人観光客の中にも刀剣の魅力にハマる人々は数多い。
こうした刀剣ブームを下支えしているのが、全国に存在する刀剣にまつわる伝統工芸の技術者たち。
今回紹介する高知県南国市の古美術「宮本」の店主、宮本文章さん(74)もその一人だ。
宮本さんの古美術店は、刀剣の売買、修理が中心。中でも得意としているのが、刀剣になくてはならない「鎺(ハバキ)」という部分の制作だ。
この技術を持っている職人を刀剣の世界では「白銀師(しろがねし)」と呼ぶ。
「ハバキ」というのは、いったい何か。
ほとんどの人が分からないだろうから(もちろん私も知らなかった)、宮本さんの話を聴いて、詳しく説明してみる。
「ハバキ」とは、日本刀を構成する部材の一つで、刀身の手元の部分に嵌める金具。
刀と鞘が不要な時に離れるのを防ぎ、鞘の中で刀身を浮かせたまま支える役割を持つ。
日本刀の部材の中で最も重要な役目を果たしているといわれているものだ。(写真の矢印部分)
ハバキは、刀剣を使用しているうちに、摩耗していくため、一定の状態になったら、取り替えなければならない部品。
白銀師は修理する刀剣の刀身を見て、銅板の地金から必要なサイズを切り出す。
そして、幾種類もの専用道具を駆使して、刀身にフィットするハバキを手作業で成型していく。
ミリ単位ではなくマイクロ単位の極めて繊細な手仕事。細工する専用の道具類も手作りしているほどだ。
持ち込まれる刀剣の中には、今から800年ほど前、鎌倉時代作というものもある。
源頼朝や足利尊氏、楠木正成などが活躍していた時代。
その頃の刀剣でも、刀身を精査して、ピッタリと合うハバキを制作していく。
鎌倉時代の刀鍛冶の仕事に、令和の白銀師の技術が融合する訳だ。
時空を超えてつながる日本の伝統技術。それぞれの業師の仕事が共鳴して新しい完成品が現れる姿には、深い奥行を感じさせる。
白銀師が手掛けるのは、ハバキだけではない。
柄(つか)の先端につける縁頭(ふちがしら)や、柄に施す装飾品、目貫(めぬき)なども作る。
技術のいる手仕事だけに、「修業には3年はかかる」(宮本さん)そうで、「その間の給与を出す余裕はないので、1日2~3時間ずつ通いで習得してもらいたい。無償でマンツーマン指導をする形にしてほしい」と話す。
白銀師になるための重要な要素は、「刀剣が好きなこと」。
そして、細かい仕事をするための集中力と修業を続ける熱意が必要だという。
性別は男女を問わない。「刀剣女子」でも、本気で飛び込んで来てくれるなら、喜んで受け入れると言う。
土佐の高知の白銀師は「我こそは」という熱い刀剣ファンを求めている。
経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。
高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。
「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受けたい人を繋ぐ連載です。
高知県事業承継・引継ぎ支援センター(088-802-6002)
メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp
担当:横山(よこやま)