「シャトー・ラフルール」の深い魅力
その優美さでファンの多い「シャトー・ラフルール」。醸造責任者オムリ・ラム氏が昨年末に来日、ワインメディアとともに焼き鳥を楽しんだ。まるで忘年会のようなリラックスした雰囲気の中で、シャトー・ラフルールの造りの美しさの秘密と、和食との相性の良さを語ってくれた。
ボルドー右岸の最高峰の一つで「ペトリュスに迫る」と評されるのがポムロールの「シャトー・ラフルール」だ。力強さとフィネスを併せ持ち、その華やかな香りはグラスを手にする人を瞬時に魅了する。
ラフルールの名はポムロールのプラトーに位置する4.5ヘクタールのリューディ―に由来する。1872年にアンリ・グルルー氏が所有者となり、この地に家とセラーを建て、畑を改修したのがシャトーの歴史の始まりだ。その後、5代目に当たるジャック・ギノドーとシルヴィー夫妻が1985年に新たなオーナーとなり、2002年に彼らの3人の子どもに引き継がれた。ギノドー家の全員が畑を大切にしながら、素晴らしいワインを生み出してきた。
今回来日した醸造責任者のオムリ・ラム氏とともにテイスティングしたのは、柑橘の香りが豊かな『レ・シャン・リーヴル・ボルドーブラン 2019年』、上品で慎ましやかさを感じさせる『レ・ペリエ―ル ボルドー・シューペリュール 2018年』、華やかさが際立つ『レ・パンセ ポムロール 2014年』、そして優美さに満ちて奥深い『シャトー・ラフルール ポムロール 2012年』の4本。場所は銀座の名店「バードランド」で、今回はボルドーの銘醸ワインと究極の焼き鳥を合わせるという試みだ。
ラム氏は言う。
「実はこれは私の“和食に合わせたい”という思いから実現したマリアージュ。どのような料理と合うのか、探求してみたかった」と話す。ラム氏自身、焼き鳥は何度か経験しているというが「これほどレベルの高い焼き鳥は初めて」と驚いた様子。奥久慈軍鶏を使用した焼き鳥は、例えばササミはふっくらと焼き上げられ、添えられた生ワサビがさわやかなアクセントとなる。これを『レ・シャン・リーヴル・ボルドーブラン 2019年』と合わせると、ソーヴィニヨン・ブランの豊かな果実味が繊細な肉質とマッチする。シンプルなササミの旨味が際立ち、ラム氏も「これは素晴らしく美味しい!」と感動。
また、驚いたのが、ソリや手羽元など、たれを使わない焼き鳥と赤の『レ・ペリエ―ル ボルドー・シューペリュール 2018年』『レ・パンセ ポムロール 2014年』が絶妙な相性を見せていたことだ。通常は「たれの焼き鳥には赤」と思われがちだが、鶏でも肉の旨味や皮目の香ばしさが際立つことで、赤とも寄り添えることを証明している。それはおそらくレ・ペリエ―ルもレ・パンセも、芳醇ながら繊細さを併せ持っているからこそだろう。
“ベストマッチ”といえる組み合わせは、つくねと『シャトー・ラフルール ポムロール 2012年』だった。つくねには黒コショウと山椒、みそが隠し味として使われ、シャトー・ラフルールの芳醇な果実味がつくねの複雑な味に寄り添う。
「焼き鳥とのマリアージュは実に楽しいですね! 焼き鳥は、すべてのワインと合わせてみましたが、どれもよく合っていた。私たちのワインは和食との親和性が高いと知ることができて良かった」と満面の笑みを見せた。
まるで忘年会のように和やかな場面で、ラム氏はこんな話をしてくれた。
「私たちのコンセプトは“皆に愛される、わかりやすいワイン”。うれしい評価はその賜物だと思っています。私たちのシャトーはギノドー家による家族経営で、決して大きな規模ではありません。チームは、オーナーファミリーの4人と醸造家の私を含めて24人。全員が栽培のトレーニングを受けており、忙しい時には、オーナーを含める全員で畑での作業に当たっています。私たちは全員がヴィニュロンで、畑での作業がすべてだと思っています。そこが、ボルドーの他のシャトーと違うところなのかもしれません」
ラム氏はこんなことも教えてくれた。
「シャトー・ラフル―ルにはセカンドワインはありません。レ・ペリエールもレ・パンセも、それぞれの畑のテロワールを反映したワインとして独立しています。それぞれの個性を楽しんでいただければうれしいです」と満面の笑顔に。
この日、いつものプレスセミナーとはひと味違う趣向の“焼き鳥忘年会”は、ラム氏に和食とのマリアージュの可能性を示唆しただけでなく、シャトー・ラフルールの優雅さの奥にある“誠実にブドウと向き合うこと”の素晴らしさを教えてくれた。
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