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「妻夫木、これが沖縄よ」心に刻まれた“戦争のにおい”とは…高校生へ特別授業

Sitakke

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沖縄戦を通じて、戦争と平和を学ぶ高校が札幌にあります。
戦後80年が経ち、戦争体験者がどんどん少なくなる中、ある映画を通して、戦争をより深く知る取り組みが行われました。

連載「じぶんごとニュース」

史実も描く…映画「宝島」

7月、札幌市の北海高校で行われた特別授業。
講師は俳優の妻夫木聡さんと、大友啓史監督です。

映画『宝島』。

今まで描かれてこなかった、沖縄がアメリカだった時代。
米軍基地から物資を盗み、人々に分け与えていた“戦果アギヤー”をめぐって物語は進んでいきます。

沖縄で今も続くアメリカ兵による性暴力事件や基地問題。
小学校へのジェット機墜落事故、コザ騒動など、実際にあった出来事も『宝島』は描きます。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

太平洋戦争末期の1945年3月、アメリカ軍が沖縄に上陸。
沖縄では3か月以上にわたり激しい地上戦が行われました。
沖縄戦では民間人を含む約20万人がなくなったといわれています。

沖縄戦を学んできた北海高校

北海高校は30年以上、修学旅行で沖縄を訪れています。
沖縄戦の体験者の話を聞き、集団自決のあったガマに入り、明かりを消し当時の暗闇を体験。
米軍基地を見たり、沖縄平和祈念資料館を訪れたりするなど、沖縄戦を学んでいます。

大森和之教頭は、北海高校に赴任して以来、日本史の教師として平和学習に関わってきました。

「沖縄戦の中で、北海道の方々が多く亡くなっている。北海道と沖縄はすごく離れているけど、実はつながっている。そんな意味を持って平和学習を30年続けている」

初めての試写は…最近の平和学習の難しさ

『宝島』の特別授業を前に、試写会が行われました。

歴史の授業ではほとんど扱わない米軍占領下の時代、そして3時間を超える内容に生徒たちは圧倒されていました。

10月の修学旅行に向け、これから沖縄を学んでいく生徒たち。

「画がリアルで勉強になりました」
「戦争の悲惨さを考えるきっかけになりました」

こう話すものの、映画の内容は少し難しかったようです。

大森教頭は「落とし込みきれてはいないかな。非常にたくさんの情報があったので、3時間という非常に長い映画。うまく消化できない部分があるだろうけど」と話します。

そんな大森教頭は最近、平和学習の難しさを感じています。

「当然だが、実体験を聞く機会が急速に減っている」
「沖縄も追体験がやりづらい」

戦後80年…映画を通して戦争の現実、そして“平和とは何か”少しでも考えてほしい。

大森教頭は、妻夫木さんらによる特別授業を前に、レクチャーを行うと決めていました。

「映画に出てくる史実を生徒たちに確認してほしい。深めないともったいない。こういう機会を与えてもらったので」


背景を知ることで実際にイメージできる

妻夫木さんらの登場を前に、約200人の生徒を前にして、大森教頭のレクチャーが始まりました。

「車にひかれた人を米軍の憲兵隊が、自分たちで勝手に取り調べしようとしたことに対して、沖縄の人たちが『お前たちに調べさせないぞ』と車を取り囲んだ。それがエスカレートしたのがコザ騒動」

「沖縄戦では沖縄県民の4分の1、約20万人が亡くなっている。実数がわからない。行方不明のまま終わっちゃっている人もいる」

「宮森小学校にジェット機が墜落。これは実際にあった。17人、そのうち児童11人が亡くなっています。最終的には。不可抗力だからしかたないねってことで、大した補償がないまま実は終わってしまう」

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

「宝島」の中には実際の史実がいくつも描かれています。

こういった背景を知ってもう一度映画を見ると、沖縄の人たちがどれだけ大変な思いをしたのか、実際にイメージをもって見られるのではないか。
大森教頭はそんな思いでレクチャーを続けます。

「日本の国土の1パーセントに70パーセントの米軍基地がある」

「なかなかここは難しいです。どっちが正しいかは言えない。基地がある・ないっていうのは。ただ、沖縄の人からするとなんで沖縄に基地があるのか…そういうことを考えてほしい」


妻夫木さんの心に刻まれたこと

特別授業を前に、『宝島』に出てきた史実を確認した生徒たち。
いよいよ特別授業が始まります。

妻夫木聡さん、大友啓史監督に、生徒たちの質問が飛びました。

「撮影をしている中で、心に深く刻んでいたこと、刻まれたことは?」

妻夫木さんはこんなエピソードを生徒に教えてくれました。

「友だちと海沿いのカフェに行ってお茶をしていた。くつろぐために連れていってくれたと思ったら、戦闘機がバーっと飛んで、『妻夫木、これが沖縄よ』と言われた。その瞬間にすごくハッとして」

そして、こう力を込めます。

「沖縄に住んでいる人にとってはまだ戦争のにおいは感じているし、どこかまだ終わってないんじゃないかと思う。そういう事実があることも知らなければならない。沖縄の過去の歴史は確実に知らなければならない」

『宝島』で描かれた沖縄の時代。
歴史の授業や平和学習ではあまり触れられなかった時代を、生徒たちは肌で感じたようです。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

大友監督は「戦争というのは戦っている間だけではなくて、戦った後にも人々の暮らしにどのくらいのしかかってくるのか伝えたい」と話します。

映画を用いての平和学習、その意義を大森教頭はこう語ります。

「平和学習はイメージできないとだめなんじゃないか。人が亡くなったりすることはイメージしづらい。そういう場面を映画で示してもらうだけでも、平和学習は映像によって進むのではないか」

北海高校は、2025年から修学旅行の行先を沖縄だけにし、10月27日に出発します。

映画「宝島」

9月19日(金)より全国公開
東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年8月15日)の情報に基づきます。

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