【劇団ストレイシープス「fractal.2」】 古今東西の戯曲、SF、漫画のモチーフを引用。言葉や関係性を独自に押し広げる
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は劇団ストレイシープスの山田清顕さん演出「fractal.2」を題材に。静岡市葵区の「あそviva!劇場」の4月12日午後1時の公演を鑑賞。同作は13日午後1時、3時、6時にも同じ会場で上演。
「今日はあなたの人生を180度変える、とっておきの話をします」という妙にテンションの高い男の宣言から始まり、男2人女1人がさまざまな組み合わせで、「いさかいと平和」「生と死」「統治と開放」を色濃く感じさせる掌篇を次々に紡いでいく。10篇近くあったか。
当日配布の資料に「ネタバレ注意!」とあるので元ネタの詳細は省くが。さまざまな戯曲、SF、漫画などのモチーフが引用されていて、一つ一つの作品世界に漂う言葉や関係性をさらに押し広げていく。
とある落語演目との接続を感じさせるラストシーンの美しさには息をのんだ。
とにかく情報量が多い作品だ。俳優二人が一部の単語をあえて変えてせりふを重ねる場面もある。数メートル先から飛んでくる言葉を逐一捕まえ、筋道立てて頭の中のノートに整理する作業に没頭。だんだんその行為自体が心地よくなっていく。「観劇」ではあるのだが、脳みそを使う快感を味わうための特別な体験、とも言える。
舞台上には蛍光グリーンに塗られたパイプ椅子が一つだけ。バレエ曲として知られるラヴェル「ボレロ」、トランステクノや能楽といった身体性を伴う音楽の切り替えで、シンプルなステージがその都度色合いが変わって見えるのも興味深かった。
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