「苦しみ」は物語に常についてくるもの。どんな表現方法がある?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.07 苦しみ【くるしみ】
[英:Suffering]
【意味】
辛くてもがいている状態。
【類語】
苦労 苦悩 不運 辛苦 難儀 腐心 悶々 苦渋 苦役 苦慮など
体(フィジカル)の反応
息が詰まる呻くその場から逃げ出す顔がゆがむ下唇を噛むじたばたする身を縮こませる身をよじる顔が曇る食欲がなくなる立ち止まるやつれる眉根を寄せる弱音を吐く逃れようとあがく額にしわが寄る
心(メンタル)の反応
悩みが絶えない気分が重い切迫する感じ戸惑うやりきれない気持ち陰鬱な気分打ちのめされる我慢する現状から抜け出したい気を病む切羽詰まる思いあぐねるくよくよする絶望感が襲ううんざりするなりふり構っていられない
場面に応じ的確に表現できれば体と心の在り方を伝え切れる
生きている限り、避けて通れない「苦しみ」。どんなに裕福になろうと、強運の持ち主であろうと、必ず「苦しみ」に見舞われます。左ページに列挙された体と心の反応を一読し、うんざりした方も多いでしょう。物語創作においても、主人公をはじめとする登場人物に「苦しみ」はつきものです。特に主人公はエンディングまで「苦しみ」と闘い、もがきながら目標に邁進する宿命にあります。
とはいえ、「苦しみ」を描く際、どういう「苦しみ」なのか、書き手は十分に理解したうえで表現しなければなりません。なぜなら「苦しみ」の意味は非常に幅広く、多岐にわたるからです。『食べ過ぎてお腹が苦しい』は、ともするとユーモラスな「苦しみ」です。『彼を思うと胸が苦しい』は、淡い恋の「苦しみ」です。『生みの苦しみ』は、クリエイティブで前向きな「苦しみ」です。
逆をいうなら「苦しみ」の質を場面に応じ的確に表現できれば、臨場感に満ちた登場人物の体と心の在り方を伝え切れます。
自らを苦しめる修行で成長を目指す『苦行』も前向きな「苦しみ」のひとつ
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅