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戦後80年 平和への道 体験者の「リアル」届け戦争の記憶を継承

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体験者の「リアル」届け戦争の記憶を継承

小机町在住木村光義さん(79)

「戦時中のことを語る人が少なくなってきた中、戦争の悲惨さを、戦争を知らない世代に語り継いでいきたい」。そう語るのは、神奈川県退職公務員連盟(以下、退公連)港北支部の前支部長で、「戦争体験を語る会」を担当する木村光義さん(79)だ。

木村さんは、元小学校教諭で後に校長も務めている。「自分が教師になりたての頃は、毎年5月29日は、朝会や学級で横浜大空襲の話をするなど、市全体で平和教育に取り組んでいた。戦争を繰り返さないために、その悲惨さを伝える取組みでね」と回顧する。その後、指導要領が変わり、どの学校でもだんだん取り上げなくなっていったという。市教職員組合でも教育委員会に学習の実施を呼びかけてきたが、「教員の現場は忙しくて、各人に任せていたら衰退していった。戦争を知らない子どもたちが増えていって、なんとかせねばと常々思ってきた」と語る。

そうした思いの中で、木村さんは教員時代からずっと戦争にまつわる資料を集めてきた。引退後に所属した退公連で、木村さんの活動を知った当時の支部長に促され、約10年前に「戦争体験を語る会」をスタート。これまでに、年1回、コロナ禍での休止を挟み、7回講演を開いている。会員の中の体験者に話をしてもらうことから始まり、近隣に住む体験者を募りながら進めてきた。「横浜大空襲での集団疎開や、サイパンでの兵隊とのやり取り、遺体の腹部にめり込んでいた時計を遺族に返す取組み、予科練習生が受けた爆撃――。皆の生の声は印象深いものが多く、どれも心に残っている」

届く感謝と課題

講演のたびに、聴講者からは「貴重な戦争体験の共有、ありがとう」「平和のありがたさを伝える方が減っているので、とても良い機会だった」などの感想が聞かれ、会の必要性を強く感じた。過去にドイツに住んでいたという中学生からは、「ドイツでは、ナチスや誤った戦争について授業できちんと教わった。日本では教わる機会がなかった。今回、退公連でこうした取組みをしてくれて、感謝している」という手紙が届いたこともあった。

課題もある。戦後80年を迎え、戦争を実体験として語れる人は少なくなってきた。「体験者をどう発掘していくか――」。見つけたとしても、「当時のことを話したくない」という人も多い。聴講者の中には、「生々しい体験談に、自分の父親が、戦争のことを話してくれなかった理由がわかった」という感想もあったという。

同時に、「語り部の育成」も。区役所に登録しているボランティア、「港北区まちの先生」にも現在、語り部が2人いるが、稼働は年に1、2回ほどだ。「とにかく携わる機会がない。今の教員たち、校長にしても平和教育を受けていない世代。『どう伝えればいいかわからない』という声も聞く。できれば学校の中で、幼い頃から平和の尊さを伝えていってほしいのだが」と木村さん。「退公連の社会貢献の大切な取組み。課題に向き合いながら今後も地道に続けていきたい」

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