大分トリニータ 若きタレントたちが見せた意地と問われる真価 【大分県】
結果は2-3。数字だけを見れば、惜敗と片付けられる試合かもしれない。だが、この日の大分トリニータのピッチ上には、それ以上の意味があった―。YBCルヴァン・カップ1回戦。ホームにレノファ山口を迎えた大分は、リーグ戦から中2日というタイトなスケジュールの中、先発を総入れ替えする策をとった。いわば、育成と競争を重視したチャレンジである。
前半、大分は狙い通りのボール保持とビルドアップで主導権を握った。だが、セットプレーからのカウンターで失点を喫すると、後半には守備の甘さが露呈し、立て続けに2点を失う。スコアは0-3。敗色が濃厚となる中、片野坂知宏監督はギアを上げる決断を下した。3バックから4バックへのシステム変更。攻撃に比重を置いた布陣に切り替え、後半30分、今季初出場となるFW屋敷優成をピッチへと送り出す。その直後だった。屋敷はキム・ヒョンウのゴールをアシスト。さらに2分後、木許太賀のクロスに左足で合わせ、自らも得点を記録する。
「1点取れば流れが変わる」と送り出された片野坂監督の期待に、屋敷は見事なプレーで応えた。ただ、追撃もここまでだった。悔しさをにじませつつ、指揮官は冷静に試合を総括する。「後半の勢いは評価できる。ただ、2点目、3点目の失点は準備不足。個人戦術の甘さがあった」。特に守備陣、大卒1年目のDF宮川歩己にはポジショニングと判断の甘さが突きつけられた。空中戦での奮闘は光ったものの、失点場面では一瞬の遅れが致命傷となった。これこそがリアルな経験であり、敗戦が選手に与える最大の糧である。
先発メンバーを総入れ替えしたカップ戦
その一方で、屋敷や木許、キムといった若手の台頭は明るい材料だ。途中出場ながら攻撃に勢いをもたらし、希望を抱かせた。片野坂監督は「若い選手が結果に絡んでくれたのは大きなプラス」と語る。
大分のベースとなる戦術は3-4-3や3-5-2だが、試合展開や相手によって柔軟にスタイルを変化させる。今回はボールを動かしながら崩すスタイルが随所に見られた。選手たちがこの多様性を理解し、対応力を身につければ、チームとしての完成度はさらに増す。
この日の敗戦はチームにとって育ちの芽を得る貴重な一日だった。次なる戦いは中3日のリーグ戦。疲労の蓄積は避けられない。だが、それを跳ね返すだけのモチベーションは、すでにこの試合の終盤に宿っていたはずだ。0-3からの意地の2点。その反骨心を、次こそは勝点3に変えられるか。若きトリニータに、今こそ真価が問われている。
途中出場で1得点1アシストを記録した屋敷優成
(柚野真也)