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【倉敷市】ガラス工房aun ~ 自分の生活に合わせたガラスペンを選び育てる体験を

倉敷とことこ

ガラス工房aun ~ 自分の生活に合わせたガラスペンを選び育てる体験を

ガラスペン」を知っていますか。

ガラスペンは、日本発祥の筆記用具で、万年筆のインクをペン先に浸してから筆記するペンです。昨今の万年筆ブームも相まって、注目されている高級文具のひとつ。

倉敷美観地区内の築170年木造2階建ての町家をリノベーションした複合施設「クラシキクラフトワークビレッジ」の一角にあるガラス工房aunでは、ガラスペンを中心としたガラス製品の工房兼ショップがあります。

使い手の生活に寄り添ったガラスペンを、倉敷から世界へ発信したいガラス工房aunを取材しました。

「ガラスペン」とは

ガラスペンは、その名のとおりガラスで作られたペンです。

ペン先をインクに浸してから筆記する「つけペン」の一種で、明治時代の風鈴職人によって考案されました。インクには、万年筆インクが多用されますが、書道用の墨汁など多様なインクも使用可能です。

ガラスペンのペン先に八本の溝が施されているので、そこにインクが入り込むことでペン先の先端にインクが流れ出す仕組み。一般的には、一度インクを浸すとハガキ一枚程度の文字が連続して書けると言われています。

見た目の美しさはもちろん、なめらかな書き心地や水洗いで複数のインクが使用できる機能性も相まって、現在は世界中で注目されています。

「ガラス工房aun」とは

ガラス工房aunは、倉敷美観地区の一角にある「クラシキクラフトワークビレッジ」に工房兼店舗を構える、2017年にオープンしたガラス工房です。

以前はガラスアクセサリーなども積極的に制作していましたが、現在はガラスペンを中心に制作しています。

入店は一組ずつなので、電話で予約してからの来店をお勧めします。もちろん、店内にほかのお客さんがいないときには、ふらっと入店することも可能ですので、気軽に声を掛けてみましょう。

自然光がきれいに降り注ぐ店内

「クラシキクラフトワークビレッジ」があるのは、町家独特の狭い路地を抜けた先。

中庭を中心に、ガラス張りのクラフトショップが並んでいて、どのお店も外から中が見えるので、ほかのお店も気になってしまいます。

中庭からあたたかな自然光がきれいに降り注ぎ、工房内のガラス作品がキラキラと輝きます。

ガラスペンは光の当たりかたによって色味の見えかたが変化するので、実際に手に取ってくるくるとまわしながら好きな色味のガラスペンを探せますよ。

工房兼ショップ

ガラス工房aunは、工房です。そのため、実際にガラスを制作するようすが見られます。

バーナーでガラスを加工したり、ペン先を研磨したりする姿を実際に見られる機会は貴重ですよね。海外のイベントにも出店するプロの技に、私もつい見入ってしまいました。

入店が一組ずつなので、工房を見学しながら店員とコミュニケーションも取れます。日々の生活のどのような場面にガラスペンを導入しようか、購入後のメンテナンスはどうしようか……など、相談しながら選べるので安心です。

倉敷市内の美術館や文具店とのコラボレーション商品も

店内には色とりどりのガラスペンやインクが並びます。使い手のライフスタイルに合ったガラスペンを選べるように、種類が数多くあるとのこと。

ガラスペンのなかには、大原美術館とコラボレーションしたモネの《睡蓮》やシニャックの《オーヴェルシーの運河》をモチーフにしたガラスペンもあります。

左:モネ《睡蓮》右:シニャック《オーヴェルシーの運河》(写真提供:ガラス工房aun)

絵画作品は、大原美術館から持ち出せません。また、館内でのメモは鉛筆のみ。ガラス作家の江田明裕(えだ あきひろ)さんは何度も大原美術館に通っては試作を繰り返したそうです。

ガラスペンを確認する江田さん

インクコーナーを眺めていると、aunオリジナルインクを発見!

夕暮れどきに湖面が深い青緑になってゆくようすを表現した「Twilight Teal」。このインクに合わせたガラスペンとペンレストもありますよ。セットで揃えるのも乙ですね。

また、倉敷市内の大型文具店「うさぎや」のインクも発見。「大手まんぢゅう」や「下津井の蛸」など食べ物や風景とコラボレーションした万年筆インクで有名なうさぎやのバリエーション豊富なインクとお気に入りのガラスペンのコーディネートも楽しめそうです。

ガラス工房aunで、ガラスペンを来店予約して購入するには?

ガラス工房aunでは、使い手に合わせてガラスペンを一本ずつ制作しています。来店予約の流れは、以下のとおりです。

・予約時に見たいガラスペンを二種類伝える
・来店して、指定した二種類のガラスペンが手に合うかどうか握ってみる
・しっくりこなかった場合は、店内のガラスペンのなかから選んだり、次回の来店予約をしたりする
・購入するガラスペンが決まったら、ペン先の太さを決める

私も早速、ガラスペンを選んでみました。

このように、試作と試し書きを重ねながらお気に入りの一本を探します。

ガラスはひとつずつ色味も異なるので、オンラインではなく自分の目で見て探すのがポイント。

太陽光に透かして色味を選ぶのもおすすめ

外気温度によって絵柄の変わるストームグラスなども気になりましたが、太陽光に当てた際にキラキラと輝くブルーに惚れてラグーン(上記写真で筆者が太陽光に当てているもの)を選びました。

また、制作されるガラスペンは一本ずつ太さも異なります。使い手のペンの持ちかた握りかたも考え、その人にとって一番使い心地の良いものを一緒に探してくれますよ。

ガラスペンを選ぶ筆者(高石真梨子)

ペン先もガラスでできているため、力を入れすぎたら割れてしまうのではないかとおっかなびっくり試し書きもしましたが、想像以上の書き心地が滑らかで衝撃。「これなら私にも使えそう!」と思い、普段からボールペンなどで使用しているものと似たペン軸「FM」を選択しました。

購入後も、ペン軸にインクが詰まってしまったりペン先の太さを変えたりしたい場合は、メンテナンスにも対応しています。多い人は月に一度ほど、平均年に一回はメンテナンスに出すお客さんが多いそうですよ。

ガラスは扱いが難しそうですが、細やかなアフターケアがあると「日常でも使ってみようかな」と思わせてくれますね。

ガラス工房aunが大切にしていることや今後のビジョンについて、店主でガラス職人の江田明裕さんに話を聞きました。

ガラス工房aunの店主でガラス職人の江田明裕(えだ あきひろ)さんに、大切にしていることや今後のビジョンを聞きました。

江田明裕(えだ あきひろ)さん

「阿吽の呼吸」のように、自分にぴったりの作品に出会える場所でありたい

──店名の由来を教えてください

江田(敬称略)──

店名の「aun」は「阿吽(あうん)の呼吸」が由来です。「阿吽の呼吸」には「呼吸がぴったりと合う」という意味があります。当店でも、お客さまにとってぴったりの作品に出会ってほしいと願いを込めて、店名に「aun」と名付けました。

より多くの人にガラスの魅力を伝えるべく、倉敷へ移住

──クラシキクラフトワークビレッジに工房を構える以前は、湯郷(ゆのごう)で活動していたそうですね

江田──

私は岡山市の出身なのですが、縁あって2013年から岡山県美作市の湯郷でガラス工房aunとして工房兼ショップの運営をはじめました。

湯郷での制作活動も楽しかったのですが、倉敷は美観地区に大原美術館があり、民藝も盛ん。いろいろな国や地域からくるお客さんにガラスの魅力を伝えたいと思って、倉敷へ工房を移転しました。

──湯郷から倉敷へ来て、変化はありましたか

江田──

予想通り、美術に興味のあるさまざまなお客さんが来てくれるようになりましたね。

大原美術館やうさぎやとのコラボレーション商品も誕生しました。これらは、倉敷に来たからこそ実現したことです。

──お店をやっていて、うれしかったことを教えてください

江田──

工房と店舗が一体になっていることをおもしろがってもらえます。私にとっても、お客さんに喜んでもらえる姿が見えるのは、やりがいにつながっています。

ガラス制作をする江田さん

また、当店には他店でガラスペンを購入したことのあるお客さまもいらっしゃいます。そのようなお客さまに「aunのガラスペンは書きやすい!」と言っていただけるのはうれしいです。

「使い手の生活に合ったガラスペン」を制作したい

──ガラスペンを制作するうえで、大切にしていることはありますか

江田──

大切にしていることは、大きく三つ。「書きやすさ、ガラスの色の変化、持ちやすさ」です。

なによりも、使い手の生活に合ったガラスペン制作をするようにしています。

手の大きさや心地良い握り心地、ペンの持ちかたは人によって異なりますよね。既製品の販売ではなく、工房で手作りしているからこそ、その人に合った太さにできます。

ペン先も一つひとつ手作業で研磨される

また、バーナーワークで作るガラスは一つひとつ色味が異なるので、それらも楽しんでもらいたいです。実際に来店して、自分の目でお気に入りの一本を選んでいただきたいですね。

──入店を一組ずつにしている理由を、教えてください

江田──

きっかけは、新型コロナウイルス感染症拡大対策の観点ではじめた試みなんです。

実際に入店を一組ずつにしたら、そのとき来店しているお客さんに対してガラスペンの説明がしっかりとできました。お客さんにガラスペンをじっくりと見ていただける時間になって、当店に合うスタイルだと気づきました。

試し書きもじっくり対応してくれる

先ほどもお話ししたように、使い手の生活に合ったガラスペンを制作したいと思っています。そのため、お客さんとじっくりコミュニケーションが取れることから、現在も入店を一組ずつにしています。

自分の目で見て手に取って、お気に入りの一本を見つけてほしい

──ガラス工房aunのガラスペンをとおして、使い手にどのような体験をしてほしいですか

江田──

書くことが好きになってほしいです。

一見、ガラスペンって壊れそうでなかなか触れない人もいると思います。しかし、当店は一組ずつのご案内になるのでお客さまの近くにスタッフがいます。そのため、遠慮せず手に取って、試し書きをしていただきたいです。実際に書いてみて、ガラスペン特有の書き心地を気に入っていただけるとうれしいです。

──今後の展望を教えてください

江田──

最近では、ガラスペンに興味を持つ海外のかたも増えてきました。私たちの工房も、海外に出張することもあるんですよ。倉敷から海外に、ガラスペンを伝えられる存在になりたいです。

あと個人的には、ガラス職人としての制作の幅も広げたいですね。今気になっているのは、切子や宝石研磨技術を使った作品の制作です。

──最後に、読者へメッセージをお願いします

江田──

ガラスペンに少しでも興味のあるかたはぜひお気軽に当店にいらしてください。そして、ガラスペンを手に取り試し書きを体験していただきたいです。

ガラス作家の江田さんと、研磨職人の小野さん

おわりに

私は文房具が好きなので、文具専門店やインクショップを訪れるたびに、ガラスのショーケースに入ったガラスペンをうっとり眺めていました。しかし、繊細なガラスペンに触れるには勇気が必要で、ただ眺めるだけ。

しかし、ガラス工房aunでは気になったガラスペンを手に取って試し書きまで楽しめます。一回の入店が一組までなので、スタッフのかたが寄り添ってくれるので安心して触れて、書き心地やヒカリの入り心地を楽しめました。

タブレットやパソコンの機能が広がる今日この頃だからこそ、お気に入りのペンで一文字ずつ紡いでいく時間が愛おしく感じられるでしょう。

「自分だったら生活のどんな瞬間にガラスペンを楽しもうか」といった相談から、自分の手に合ったガラスペン選びまで。ガラス工房aunを体験してみませんか。

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