【女性の低体重・低栄養】理想は韓国アイドル!?世間に浸透する「細くなりたい」願望の裏で、懸念される痩せ過ぎ。健康に与える影響を知って、食生活を見直そう
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「女性の低体重・低栄養」。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年5月22日放送)
(山田)今日は、女性の痩せ過ぎに対して日本肥満学会が警鐘を鳴らしているという話題ですね。
(山本)医者や研究者らが作っている日本肥満学会が今年4月、女性の低体重や低栄養が招く健康障害を新たな症候群として確立する必要があるという提言を発表しました。
近年、女性、特に若い女性に体重が軽すぎる人が増えていて、これは健康上、非常にゆゆしき事態であるということで、提言が出されました。
多くの方がそれが病気だとは捉えていなくて、「細くなりたい」という美意識による行動でそうなっていますが、現状のままで行くと、例えば筋力低下や貧血や体組織の異常、月経周期の異常、低骨密度などの症状が現れてしまいます。こういった症状をまとめて「病気」として、「女性の低体重・低栄養症候群」と名付けることを提唱したのです。
名付けることによって、本人たちにも自覚してもらい、また社会的にも、病気として防ぐ方向にしていこうと呼びかけたということで、ニュースになりました。
(山田)美意識として「痩せたい」っていう気持ちはとてもよく分かりますし、例えば、韓国アイドルなんかは足がすらっとしていて綺麗だなと思います。ただ、それを真似して痩せ過ぎていくと日常生活にも支障をきたすようなことが起きてくるっていうことですね。
(山本)はい。女性なので将来的に妊娠がしにくくなったりします。また、高齢になるに従って増えるのが骨粗鬆症という病気です。これは、骨量が十分に獲得できなくなって骨折し、それが原因で寝たきりになったり介護が必要になったりすることにつながります。若い頃の低体重思考や低栄養が、そうしたことにつながっているということですね。
日本は諸外国と比べても、経済的な事情で「食べられない」状況は少ないと思います。それなのに、体重が軽すぎるっていう人がすごく多いんですね。
(山田)なんでですかね。食べないんですか。
(山本)そういうことだと思います。先ほど話に出た韓国アイドルもそうですが、社会の美意識みたいなものがあり、「細くなきゃいけない、太っちゃいけない」あるいは全然太ってないのに「もっと痩せたい」と感じている人が多いんじゃないかなと。社会の風潮がそうなってしまっているところに原因があるのではないかと思いました。
(山田)渡辺直美さんや、ゆりやんレトリィバァさんが「ちょっと体重が多くても、美しく楽しくいられるよ」っていうことは伝えているんですけども、やっぱりみんな「痩せたい、細い方がいい」って思って食べないのですかね。
(山本)そうですね。私は50代ですが、私が若い頃もやっぱりそういうような風潮はありました。でも、その当時に比べても、どんどん女性が細くなっているというか、低体重とされる女性が増えていると感じます。
BMIって何?
(山本)「低体重」「標準体重」「肥満」などと言う時に、「BMI」という指標を一つの基準があります。BMIというのは、ボディ・マス・インデックス、体格指数というようです。私たちも男女関係なく、健康診断で体重や腹囲を測る時にBMIという言葉を聞きます。
(山田)「メタボ」って言葉と一緒に出てきますよね。
(山本)私は太りすぎにならないようにBMIを気にするんですけれども(笑)。
(山田)僕は毎週測ってるんですよ、BMIを。最新の数字、25はどうですか?
(山本)BMI25はこの基準でいうと「肥満」ですね。医学の世界では、BMI22というのが最も病気になりにくく、この時の体重が「標準体重」「適正体重」と呼ばれています。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートルに換算)の2乗で割った数字です。
(山田)体重を身長の2乗で割った数字ですか。
(山本)一つの健康の指標として、22が最も病気になりにくいということです。これが25以上になると、「肥満」という範疇になってしまうと。30になると肥満の次のステージになります。肥満は「肥満度」に分かれ、30以上だと肥満度2。35以上だと肥満度3。40だと肥満度4とされます。それぞれに応じて、こういう治療を施せばいいといったことが決まっています。
逆に18.5未満を「低体重」と呼びます。18.5未満の女性は、低骨密度や月経の周期の異常、貧血、筋力低下などが現れてくることが多いということです。
(山田)今、みんなBMI18とか目指してるんですか?
(山本)BMI18になる体重を「シンデレラ体重」っていうそうなんです。
(山田)へぇー。
(山本)これはちょっと疑わしくて、誰が言い出したかもよく分からないんですが、これが実はSNSでかなり広がったということです。若い皆さんの中にはこれが普及していて、これを目指そうという風潮があるそうです。
低体重でも「もっと痩せたい」
(山本)こういう現状を若い人はどう捉えてるのか、あるいは自分の体型についてどう思っているのかを知るため、静岡県立大学の皆さんにご協力をいただき、163人の方にアンケートを行いました。
163人中139人が女性でした。身長と体重を教えてもらい、BMIはこちらで計算してみたところ、12.8%に当たる21人の方が低体重に該当していました。
138人の方が普通体重と言われる18.5以上25未満の間に入っていました。健康かどうかは個人によりますが、特に体重上は問題はないということですね。肥満に該当する人は4人だけでした。
この138人に自分はどう思ってるのかを5段階で聞いたときに、半数以上の方が、「自分は太っている」「少し太っている」と答えました。また、8割にあたる111人が「痩せたい」「少し痩せたい」と思っていて、痩せたいという願望がすごく強いんだなっていうことがこの意識調査からも分かりました。
(山田)リスナーの方からは、「シンデレラ体重とかいろいろ行き過ぎていると思います。標準体重が一番体も健康的で楽だと思います」とメッセージが来ています。
(山本)低体重の21人でさえも、8人の方が「もっと痩せたい」「少し痩せたい」って言ってたんですよね。痩せたい願望っていうのは根強く、皆さんの中にあるのかなと思いました。
本当に、「痩せた方が可愛い」なの?
(山本)なぜ、そういうふうに思うのかということが、この調査で本当に聞きたかったことなんですが。「痩せ気味というのが理想だ」「足が細い体型が理想なのでもっと痩せたい、ほっそりしてる方が可愛い」という考えがあるようです。
(山田)自分ではそういうふうに思ってるということですね。
(山本)やはり、高身長で痩せている韓国アイドルが理想なんだと。それに近づきたいっていう思いがあるということなんですよね。やはり細い体型を維持している人はかっこ良く見えるから「私もああなりたい」と思う人が多いようです。
(山田)多分韓国アイドルさんたちって、トレーニングをめちゃくちゃしてると思うんですよ。筋肉ありきであのスタイルだと思うんです。
(山本)やはり、一流のところで活躍されてる方は食事なんかもとった上できちんと鍛えていると思います。
(山田)当然彼女は彼らは体が資本ですから、健康でいなくてはいけないので、食事は徹底してると思うんですよ。栄養もちゃんと取った上でああいう綺麗な体系をしていると思うので、それを真似しようってのは、難しいっすよ。
(山本)取材でご協力いただいた医療機関も、こうしたことを非常に危惧していて、ホームページなどにも、筋力アップさせることと、バランスの良いきちんとした食事をすることでBMI22に近づけていくのがいいんじゃないかということを訴えています。
男子学生の意見の中には、「女性の側は気にするけれど、今は多様性の時代だから、太っている痩せてるってのも全然気にしない」というような声もありました。
(山田)男性の意見との間にズレがあるというのも、ありますよね。今日の勉強はこれでおしまい!