『トランプ政権のイラン核施設空爆』その背景と狙いは?拡大する反米テロの連鎖リスク
2025年6月、トランプ米大統領はイラン中部のナタンズ、フォルドゥ、イスファハンにある3つの核施設に対し、米軍による大規模な空爆を実施したと発表した。
この攻撃は、イスラエルとイランの軍事衝突が続く中、米軍のB-2ステルス爆撃機が「バンカーバスター」と呼ばれる特殊爆弾を使用し、イランの核濃縮能力を破壊することを目的とした。
トランプ大統領はホワイトハウスでの演説で「軍事的に大成功」と強調したが、この行動は中東情勢を一層緊迫化させ、世界各地で反米テロが増加する恐れを高めている。
空爆の背景と目的
トランプ政権の攻撃は、イスラエルによるイランへの軍事作戦が10日目に突入する中で行われた。
イスラエルは長年、イランの核開発を脅威とみなし、核施設の破壊を求めてきた。
トランプ大統領は当初、外交的解決を模索し、イランに核開発放棄を求める交渉を進めてきたが、進展が見られないことに苛立ちを募らせていたとされる。
6月17日には、トランプ氏が自身のSNSでイラン最高指導者アリ・ハメネイ師に無条件降伏を求める発言を行い、軍事行動への傾斜が明らかだった。
米軍の攻撃はイランの核濃縮施設を「完全かつ徹底的に抹消した」とトランプ氏は主張したが、イラン国営メディアは「フォルドのトンネルが損傷しただけ」と反発し、攻撃の効果については議論が分かれている。
反米テロ増加のリスク
イランの外務大臣アッバス・アラグチ氏は、米国の攻撃について「永遠の影響を及ぼす」と警告し、「すべての選択肢を留保する」と報復を示唆した。
イランは中東に展開する米軍基地や同盟国の施設を標的とする可能性が高く、特にイランが支援するヒズボラやフーシ派などの代理勢力が反米攻撃を激化させる恐れがある。
2020年にトランプ政権がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した際、親イラン勢力によるイラクの米軍基地へのロケット攻撃が頻発した前例がある。
また、イランは国際テロネットワークを通じて反米感情を煽る可能性がある。
中東だけでなく、欧州やアジア、アフリカの過激派組織がこの空爆を契機に、反米テロを計画するリスクが指摘されている。
イスラム過激派組織が「米国によるイスラム世界への攻撃」と宣伝し、若者の過激化を促す可能性も高い。
米国務省はすでに世界中の米国大使館に対し、テロ警戒レベルを引き上げる通達を出している。
今後の展望
トランプ大統領は「イランが報復すれば、さらなる強力な反撃を行う」と警告しているが、これは報復の連鎖を招く可能性は高い。
専門家は、米軍の攻撃がイランの核開発を一時的に遅らせたとしても、長期的な核武装の意欲を高めるリスクがあると指摘する。
また、反米テロの増加は、米国の同盟国や民間企業にも影響を及ぼし、グローバルな安全保障環境を悪化させる恐れがある。
米国は今後、テロ対策の強化と同時に、イランとの対話の窓口を維持する必要があるだろう。
しかし、トランプ氏の「力による平和」アプローチは、外交的解決を困難にする可能性が高い。
中東の不安定化が世界経済やエネルギー市場に波及する中、日本を含む国際社会は、冷静な対応と調停の役割を果たすことが求められている。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部