【第10回静岡県高校ビブリオバトル】 令和の高校生が薦める江戸川乱歩
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は9月28日に静岡市駿河区の常葉大静岡草薙キャンパスで開かれた「第10回静岡県高校ビブリオバトル」から。
2015年度に始まった県内高校生によるビブリオバトルの記念すべき第10回は、チャンプ本に「人間椅子(江戸川乱歩ベストセレクション1)」(KADOKAWA)を選出した。
バトラー(プレゼンした生徒)は富士宮西高の酒井美幸さん。2000年代に生まれた高校生が、「エログロナンセンス」とも評された1925年の乱歩の小説に価値を見いだし、自分の言葉で、しかも半ばユーモラスに作品の本質を語っているさまに、大きな感動を覚えた。「読んだら椅子に座れなくなる本」というキャッチーなフレーズは、まさに高校生が作った高校生に「刺さる」表現だろう。
残念ながら8人による決勝進出はならなかったが、浜松西高の波多野勇輝さんも同じ江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」を選んでいる。「人間椅子」同様、大正15年発刊である。現代よりも暗がりが多い町や家屋に潜む人間の暗部を、令和の高校生たちはどう読んだのだろうか。本との出会い方にも興味が湧いた。
小説の読まれ方は時代をへるにしたがって、少しずつズレていく。そのズレた部分、断面のような部分にもキラリと光る何かが見つかるかどうか。風雪に耐える小説の条件を突きつけられた気がした。(は)