福岡の人気店「ミツ」出身の料理人が独立開業!高宮に現れた期待のビストロ
先日、高宮通り沿いに可愛い看板を見つけました。店の名前は「アヒル食堂」。もうズルいくらい温かな響きですよね(笑)。ほっこり気分に釣られて入店すると、そこは普通の食堂ではなく、8月1日にできたばかりのビストロ。聞けば薬院の人気店「ビストロ・ミツ」で長年研鑽した方がオーナーシェフだそうで、これはかなり期待できそうな一軒ですよ。
新築マンション1階の店舗は、コンクリートと木材が主役のシンプル&モダンな空間です。洗練と端正さを漂わせつつ、堅苦しさが皆無なのは高い天井と店奥に見える緑のおかげでしょう。前後にゆったり幅をとったカウンターも快適そうで、気さくなワインダイニングといった趣。普段使いはもちろん、ちょっとした記念日などにも良さげな雰囲気です。
そんな「アヒル食堂」を構えたのは43歳の幸(ゆき)辰弥さん。元々大分県で和の職人をしていましたが、顧客の紹介で訪れた「ビストロ・ミツ」の料理に感動し、オーナーの平田充さんに弟子入りしたと言います。
料理が本当においしくて、しかも値頃でボリューミー。店内も明るく賑やかで、「あの空気に一瞬で魅せられた」と幸さん。「何よりお客様のために献身するスタッフの努力が素晴らしく、実は一番そこに惹かれたんです。僕も人を喜ばせるのが大好きで、そのために“料理人”という仕事を選んだのですから」
以来、平田さんや兄弟子たちに師事して12年。「ミツ」で得た心技を胸に、幸さんは新たな道に踏み出しました。
さて、こちらの料理はアラカルトのみ。コスト管理等がしやすいコースを出すことも考えましたが、「気軽に通えること」を重視し、このスタイルに決めたそうです。現在、メニューは日替わりを含め約30種。その中から、まずは「前菜盛り合わせ」(2200円)を頼んでみました。
2人前を想定したボリュームで、ホワイトコーンのムース、ポテトサラダ、フォアグラとイチジクの燻製、サーモンのマリネ、鳥肝のムースが今宵の内容。ホワイトコーンには鰹出汁がかかり、和食出身の幸さんらしい個性が伺えます。希少な雌の白肝を使った鳥肝ムースは、フワリと軽やかな口溶けが印象的。また手間暇かけて仕込む“平田さん譲り”のフォアグラは、幸さんが「ミツで働く決め手になった」という思い出の品だけあって見事な完成度でした。
続いて供されたのは、熱々の人気メニュー「マカロニチキングラタン」(1430円)。濃厚なベシャメルソースがとにかく美味で、会話も忘れて頬張ってしまいました。生クリームをたっぷり使うのがポイントで、少々冷めてもびくともしない旨味はワインのアテとしても秀逸です。懐かしい家庭料理のようでもありますが、ふくよかな食味に「さすがプロの仕事は一味違う!」と痛感する一品でした。
どの料理にも染み入るうまさと確かな技術が垣間見え、ワインもぐいぐい進みます。その勢いで、幸さん自身もお気に入りのメイン料理「仔羊のロースト」(3.850円)をオーダー。オーストラリア産仔羊の表面に焼き色を付け、低温でじっくり火入れした赤身は極上の仕上がりでした。モッチリした弾力は“噛む”という行為の快楽を際立たせ、骨から取ったジュのソースも仔羊独特の野生味を与えています。
骨周りにたっぷり付いた肉の量も文句なし。他の料理も食べ応えあるポーションで、幸さんも「お腹一杯で帰っていただきたくて」と微笑みます。こんな気取りのなさも「食堂」を名乗る理由でしょう。
「ワインと前菜を少々……みたいな軽い利用も歓迎ですし、お子様連れでも構いません。広い世代に愛される店になれたらいいなと思います」と幸さん。笑顔が花咲く憩いの店が、高宮にまた一つ増えたようです。
アヒル食堂
福岡市南区高宮1-4-10 LINO高宮1F
092-600-4000