リビングでの発生が44%!愛犬が家にいるからって安心できない『熱中症』知っておきたい10のポイント
人間だけでなく、わんこやにゃんこも熱中症になるということを知らない飼い主さんは、もはやいないと思います。
でも、どんな場所で発生して、どんな症状が出て、どう対処したらよいのか、何に気をつければよいのか、正確に理解している人がどれだけいるでしょうか?
今回は、これからやってくる、現代ニッポンの異常なまでの酷暑からウチの子を守るための、熱中症の基礎知識をご紹介しますね。
確実に暑さを増しているニッポンの夏
地球温暖化という言葉を頻繁に耳にするようになって久しいですよね。そして、ここ数年、夏が異常なほどに暑いということは、皆さんが肌で感じていることだと思います。
では、具体的に、過去と比べて現代はどのくらい暑くなっているのでしょう?ちょっと調べてみました。
するとどうでしょう! やっぱりというか、まぁそうだよねというか…。過去と比べてみて、現代は確実に暑くなっているんです。
上の図のように、50年前とここ10年の東京の7月の最高気温(平均値)を比べてみたら一目瞭然、今のほうが暑いということが分かりますよね。
ちなみに、東京の7月の最高気温(平均値)が「33℃」を初めて超えたのが2001年。その後、2004年(33.1℃)、2023年(33.9℃)、2024年(33.5℃)と、観測開始から130年以上一度も超えなかった「33℃の壁」を、2000年代にはすでに4回も超えてしまったんです。なるほど、暑いわけだ…。そりゃ熱中症も増えますよね…。
ペットの熱中症ってどんな病気?どうなっちゃうの?
高温多湿な環境に長時間さらされたり、運動を続けたりすると、体温が上がってしまいます。すると、体温調節機能が正常に働かなくなってしまい、高体温および脱水によってさまざまな症状を引き起こし、最悪の場合、死に至ってしまう。これがいわゆる「熱中症」です。
では、ペットの熱中症では、どんな症状が出るかというと…。
初期症状
パンティング(ハァハァと激しい呼吸)体が熱いよだれ粘膜(歯肉や舌など)の充血やうっ血頻脈(心拍数の増加)
重症化した場合
嘔吐や下痢震えやけいれん発作虚脱(ぐったりとして意識が朦朧としている状態)多臓器不全(死に至るかもしれない危険な状態)
日中の屋外はもちろん、家の中にも熱中症の危険が…
真夏の日中にアスファルトの路面に触れたことはありますか?
もし、触れたことがないという方がいたら、ぜひ、一度は触れてみてください。「目玉焼きができるほど」という比喩がまんざらウソではないと感じるくらい熱いということに、驚かれると思います。その温度は60℃を超えることもあると言われているんです。
そのくらいの温度になると、卵焼きができるというのは大げさだとしても、わんこの肉球はやけどをしてしまうでしょう。
「ウチは、夏の日中はわんこを外に出さないから安心!」
…と思っているアナタ。No、No、No!
実は、家のリビングで熱中症になってしまうわんこが意外に多く、その数は全体の44%に上ると言われています。しかも、わんこが留守番をしているときよりも、家族が在宅しているときに多く発生しているという報告があるんです。
飼い主さんにとっては快適な環境でも、わんこにとっては体調を崩す可能性のある環境だということを、ぜひ知っておいてくださいね。
成犬にとって快適な環境は、気温15~21℃、湿度50%程度だとされています。
また、たとえエアコンをつけていても、たとえ短時間であっても、車の中でわんこに留守番させることは絶対に避けてください!
正常なバイタルサインを知っておこう
「バイタルサイン」ってご存知ですか?
よく医療系のドラマで看護師さんなどが「バイタルは!?」って叫んでいたりしますが、それがバイタルサインで、「体温」「血圧」「心拍数」「呼吸数」の値を指しています。
ペットの場合は、「体温」「心拍数」「呼吸数」の3項目の値をバイタルサイン(T・P・R)として用います。一度だけでなく、何度か測ってみると、その子の標準値を知ることができます。
ペットの体の異常を知るうえで、バイタルサインの標準値を知っておくことはとても大切なことなので、ぜひ、記憶に留めておいてほしいと思います。
体温(Temperature)
ペットの肛門に体温計の先を入れて、直腸温を計測します。自宅で計る場合は、体温計の先をラップなどで包むとよいでしょう。
心拍数(Pulse)
ペットの後肢の付け根の内側にある動脈に、指で軽く触れて計ります。
15秒間の脈拍を計測して、4倍することで1分間の心拍数が分かります。
呼吸数(Respiratory rate)
呼吸数は、運動後や食後ではなく、睡眠時や安静時に計るようにしましょう。
呼吸する際の胸の動きを見て、15秒間計測して、4倍することで1分間の呼吸数が分かります。
普段から気をつけたい10のポイント
体の面で気をつけたいポイント
熱中症になりやすい犬種かどうか
短頭種はパンティングによる体温調節がうまく働かなくなってしまうことがあるので、熱中症になりやすいといえます。
☆短頭種:パグ、フレンチ・ブルドッグ、ペキニーズなど太っているかどうか
過剰な脂肪は、体内に熱を閉じ込めてしまい、心臓や呼吸機能にも悪影響をもたらします。持病があるかどうか
呼吸が苦しくなる呼吸器疾患(気管虚脱、肺炎、気管支炎、アレルギー性肺炎、フィラリア性肺炎など)や、心疾患(僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症、大動脈狭窄、フィラリア症など)がある場合は、細心の注意を払ってください。また、糖尿病、腎臓病、クッシング症候群がある場合や、利尿剤を使用している場合も同様です。いつでも水が飲めるかどうか
脱水は熱中症に直結します。家にいる場合でも、いつでも新鮮な水が飲めるようにしておきましょう。また、遊びの途中でもしっかり水分補給をしましょう。わんこは、人よりも地面に近い
わんこ、特に小型犬や超小型犬は、60℃近くにもなる地面に近く、熱い放射熱を全身で受け止めています。しかも、その上を裸足で歩いています。試しに、熱いアスファルトの上に横になってみてください。きっと、その熱さを実感できますよ。
環境の面で気をつけたいポイント
気温差や湿度の差が激しい移動
わんこと一緒に旅行などをする場合、気温差や湿度の差が激しい場所への移動は、できるだけ避けるようにしましょう。お盆に、北海道から実家のある九州にわんこと一緒に帰省した際、帰省先でわんこが熱中症になってしまったという例もあります。エアコンや扇風機を適切に使用しているかどうか
家にいてもペットは熱中症になる可能性があります。電気代が気になるところではありますが、ペットファーストで、エアコンや扇風機を適切に使って、家の中をペットにとって快適な環境に保ちましょう。時間が経つにつれ、室内に直射日光が差し込むようになる場合もありますので、注意しましょう。暑い日中にわんこの散歩をさせない
犬用のクールネックやクールウェアを着用しているし、水も持っていくからといって、暑い日中に散歩に出かけることは避けましょう。わんこの散歩は、一日のうちでも比較的気温が低い、早朝か夕方以降にしましょう。気温や湿度が高い状況では激しい運動をさせない
激しい運動は、わんこの体力を奪うだけでなく、脱水を招くことも。朝や夜であっても、気温や湿度が高い場合は、ドッグランなどで激しい運動をさせないでくださいね。わんこは夢中になってしまうので、飼い主さんがしっかりとコントロールしましょう。車の中での留守番はNG
外気温が20℃でも、車の中の気温は50℃くらいまで上がってしまうことがあります。エアコンをつけていても、ペットは熱中症になる可能性があります。車内に置き去りにすることは絶対に避けてください。
家でもできることがある?!ペットの熱中症への対処法
熱中症は、ペットにとっての超緊急事態といえます。
ペットが熱中症になってしまった場合は、もちろん、動物病院での治療が必要になりますが、その前に、自宅でもできることがあるので、ぜひ覚えておいてくださいね。
冷却
わんこを涼しい場所に移動させ、タオルで包んだ氷や保冷剤などで体を冷やします。脇の下や首筋、後肢の付け根を冷やすと効果的です。
ただし、氷水などの冷たい水をかけると、血管が収縮してしまって逆効果となるので、常温の水を使うようにしてください。
水分補給
わんこが水を飲める状態であれば、少しずつ水を飲ませてください。
ただし、立ち上がれないときや、意識が朦朧としているときに水を与えるのは危険です。
まとめ
熱中症はペットにとって、とても危険な病気ですが、だからといって夏の間ずっと家で過ごさせるのは、ペットのストレスになってしまいます。
たまには、涼しい高原でマイナスイオンを浴びながら木立の中を一緒に散歩したり、川や湖で水遊びをしたりして、夏を楽しんでくださいね。
もちろん、犬用のクールグッズや水を用意し、こまめに休憩しながら遊ぶなど、熱中症対策をしっかり行うことは、いうまでもありません。
そして、忘れてはいけないのが、外出先でのペットの体調急変への対応。わんこと遠出をする場合は、もしものことを想定して、旅先での動物病院の場所と診療情報を事前に確認しておきましょう。
万一のことがあっても、落ち着いて対処できるよう、万全の準備をしておいてくださいね。
わんこにとっても飼い主さんにとっても、思い出深い素敵な夏になりますように!
◎写真:ほりまさゆき(風の犬たち)
記事の監修
獣医師徳本一義一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長一般社団法人ペット栄養学会 理事有限会社ハーモニー 代表取締役日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師