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実は珍品!時代に翻弄された新製品のアピールセット「D-51こうげんのえきセット」とは?

鉄道ホビダス

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は長いプラレールの歴史の中でも短命だった「D-51こうげんのえきセット」に注目します。「こうげんのえき」が新製品として登場した際に、そのアピールのために発売されたであろうセットですが、なぜかごくわずかな期間で発売を終えてしまいました。その理由を推察します。(編集部)

【写真】短命に終わったD-51のセットとは?貴重な製品の写真はこちら!

 プラレールでは車両や情景部品、レールなどに新製品が登場すると、その使い方や遊び方を示すためのセット品を発売する事が多くあります。2024年の新製品でも、単品「S字レール」と同時に発売された「連結!E8系つばさ&トミカアーチ踏切セット」がその最たる例と言えるでしょう。
 今回はそんな情景部品の「新製品アピール用」として発売されたものの、続けて発売された車両の新製品アピール用に再編され、短期間の販売に終わってしまった「D-51こうげんのえきセット」を紹介します。

▲1975年に発売された「D-51こうげんのえきセット」

 プラレールの車両のラインナップが実車系に統一されるようになった1970年以降、情景部品の拡充も同時に進められていました。テンダー機関車が収まるサイズの「てんしゃだい」、リベット表現が素晴らしい「だいてっきょう」、単線・複線兼用のトンネル「大トンネル」など、実際の鉄道風景には欠かせないものが増えていきます。
 列車が停まる「駅」もバリエーションが増え、1960年代の傑作情景とも言われる車両の交互発着が可能な「ふくせんステーション」の単品発売が行なわれたり、貨物の積み下ろしをするための「積みこみかもつ駅」「積荷おろしかもつ駅」や、ホーム上に待合室とトイレ・タブレットキャッターが備えられた小ぶりな駅「いなかのえき」などが登場しています。これらの情景部品拡充の中で発売されたのが、今回取り上げる「こうげんのえき」になります。

 緑色のホームに白い駅舎、赤色の三角屋根に手回し式の発車ベルを内蔵して登場した「こうげんのえき」は、それまでは基本的にホームのみだった「駅」とは異なり、ホームと駅舎が一体になったことでカラフルな配色ながらリアルな面を兼ね備えた情景部品となりました。以降、1992年まで17年間ラインナップに載り続け、かつてのプラレールにおける定番の情景部品でした。
 もちろん「こうげんのえき」も単品の発売とほぼ同時に、新製品アピールのためのセット品が発売されました。それが「D-51こうげんのえきセット」です。一般的なエンドレスに、並木・立木・信号機・架線柱、そして「こうげんのえき」が組み合わさり、その中を青い客車を牽く「D-51きゅうこうれっしゃ」が走るという、駅名の通り「高原」を走る路線のような雰囲気に仕上がっています。

▲地方の路線の少し大きな駅、といった雰囲気だ。

 こうしてラインナップに載ったこのセットでしたが、同年に車両の新製品「しんだいとっきゅう」が発売されたことにより、短期間で生産終了を迎えてしまいます。「D-51きゅうこうれっしゃ」を「しんだいとっきゅう」に置き換え、「しんだいとっきゅうこうげんのえきセット」として改めて発売されることになったのです。この車種変更により「D-51こうげんのえきセット」は生産数が非常に少ない、珍しいセットとなってしまいました。
 「しんだいとっきゅう」は同時期の製品の中でも特に精巧に作られており、明かり取り窓や側面ルーバーをモールドで再現、窓周りと幕板部にもしっかりと塗装が施され、当時のラインナップにあった151系がモデルの「とっきゅう」と比べるとかなり高グレードな出来となったことで、人気の車種となりました。当然、新製品アピールとしてセット品を出すことが検討されたものと考えられますが、「こうげんのえき」とのセットにする事で車両と情景部品両方のアピールができると判断されたものと思われます。
 「D-51きゅうこうれっしゃ」が入ったセットは過去数年間にも複数あり、また1975年当時は蒸気機関車列車の最末期で、プラレールのメインユーザーとなる子供たちにとっては、既に馴染みの薄い存在になっていたことも車種置き換えの一因かもしれません。

 「D-51こうげんのえきセット」が掲載されたカタログは2024年10月現在発見されていませんが、「しんだいとっきゅうこうげんのえきセット」が掲載されたものは確認されています。車両を置き換えて再発売するという判断が下った理由は不明のままですが、結果として車両と商品名が異なるだけのほぼ同一のセットが同年内に発売されるという、変わった経歴を持つこのセット。今ではあまり起こり得ないであろう、時代に翻弄された製品と言えそうです。

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