第53回「いきいきと過ごせる場所」
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組。
今回もリスナーの方から寄せられたメッセージに3人でこたえました。
一年半前にコロナ後遺症になり、今も実家で療養を続けている 24 歳です。
少し歩いたり、立って家事をしただけでも 疲れと痛みの症状が悪化していくため、ほとんど寝たきりの生活を送っています。家族に支えられ穏やかに生きていますが、就職もできず、今のところ家にしか居場所がないことを時々とても辛く寂しく感じます。
治りにくい病気を抱えたままでも、社会の中で居場所を見つけたり、働いたりすることはできるのでしょうか。
何か良い方法はないでしょうか?
小泉:お若いのに、なかなか体調が良くならないっていうのは本当にもどかしいような日々を過ごしていらっしゃると思います。いろいろなお仕事が今はあって、在宅でできるお仕事もあったりすると思うけど。
大石:うん。
小泉:でも、きっとお若いから、もうちょっと外に出て社会に触れたいっていう気持ちもあるでしょうからね。
大石:そうだね。
上村:コロナもまだ全然解明されていないというか。5類感染症になってからちょっと軽く見られがちというか。かかった方も多かったので、「自分はあまり後遺症がなかった」「これくらいの症状だった」って話すようになりましたけど、本当に苦しんでいる方が取り残されちゃっているんだなって思ってました。
小泉:そうですね。
上村:報道番組とかでコロナの後遺症を扱ったものを私も観たことがあるんですけど、パッと見て怪我をしているわけでもないですし、疲れとか、痛みっていうのはなかなか目に見えないじゃないですか。
小泉:そうですね。
上村:だから声をあげにくいしょうし、一緒に過ごしている方もわかりにくいからこそ、なかなか見落とされがちというか、取り残されている感じがしちゃって…
小泉:これって、例えば、病院に行って「コロナ後遺症ですよ」って言われて、それで働けないということが保証されたりとかって、まだきっとないですよね…
大石:どうだろう。
上村:5類感染症になったことでその保証も削られているかもしれないですね。
小泉:そうですね。家族が支えてくれて穏やかに生きている、っていうことで少し安心ですけど。だけど、本当だったらここから堂々と社会に出て働き始めるような年齢の方ですから。
大石:そうですね。
小泉:焦らないで、まず体のことを考えてほしいです。だけど自分が何か心を許せるコミュニティみたいな、お友達とか、そういうことをまず見つけてもらって…というふうにしか言えないのがちょっと…
上村:大変な中でもメッセージをくださって、本当にありがたいですよね。
大石:共有していただくだけでも、多くの人に後遺症を知っていただくこともできるし、そういう意味ではこうやって発信するっていうのも大事なことな気がする。
小泉:何かあったら、教えてください。そうしたら、その言葉をきっかけになにかを考えたりとか、感じたりしてくれる人。あと、自分もそうだから頑張ろうって思える人がきいていらっしゃると思うので。ぜひぜひ、またメッセージいただければと思います。
上村:神奈川県の取り組みを一つご紹介させてください。神奈川県では、移動が難しい方を「在宅勤務の県職員」として
採用する取り組みを行っています。
小泉:あら、そういうのがあるのね。
上村:「OriHime」という分身ロボットを活用しています。 OriHimeは、カメラやマイク、スピーカーが付いたロボットで、 インターネットを使って自宅から操作ができます。つまり、家にいながら「自分の分身」が福祉ショップなどに立って、お客さんとリアルタイムで会話して、接客をしたり、商品説明をすることができるという仕組みです。
この取り組みを神奈川県がスタートした背景には、2016 年に起きた 「津久井やまゆり園」という障がい者支援施設で起きた事件があります。多くの命が奪われて、「障がいのある人の存在を否定するような考え」が、社会に大きな問いを投げかけましたよね。とても悲しい出来事でしたが、 神奈川県では「どんな人も大切にされ、社会とつながることができる」ことの大切さを、 あらためて見つめ直しました。
このOriHime を使った在宅就労の取り組みは、そんな思いから生まれたということです。
小泉:なるほど。子どもの頃に「未来ってこうなってたりして」って思っていたことが、現実になってる。
上村:本当ですね!
小泉:こんなことも、神奈川県がはじめたということで、全国に広がっていけば社会に参加することができるかもしれないですよね。
大石:UPDATERの関係者の中でも、障がいが重い方もいらっしゃって。目の動きとかで遠隔にあるものを操作するテクノロジーもあったりして。
小泉:そうですよね。
大石:その、目の動きで何かを操作するって、労働につながることもできることがあるかもしれないし。
小泉:文章を書いたりもできるんですよね。私見たことあります。
大石:あと、メタバースってあるでしょ?あの中で、もう1人の自分を存在させることもできるし。
上村:もう一つ、ご紹介します。家にいながら自分の得意なことを活かせるサービスもあります。
たとえば「ココナラ」というサイトでは、「自分のスキルを出品すること」ができます。「イラストを描きます」「文章を書きます」、あるいは「夫婦関係の相談、聞きます」といったやりとりもあって、いろいろ形のお仕事があります。体調やペースに合わせて、無理のないかたちで、収入につなげることもできます。「自分の力が、誰かの役に立っている」と感じられる場所としても、心強いかもしれないですね。
小泉:いいですね。もし、自分たちが自分のスキルを出品できるとしたら、何にしますか?
大石:そうやって言われると難しいですね。
上村:うーん。これは、オンラインで喋るのもいいんですかね。子どもに絵本の読み聞かせしたいな!リモートだと難しいのかな。
小泉:でも、いいんじゃないですか?私たちは声とか、喋るとか…私は、歌うこともできますね!
大石:特別なスキルですからね。
小泉:「子守唄を歌います」。笑
大石:僕何があるかな。普通のおじさん、何したらいいんですかね。
上村:会社経営のことも含め、話を聞きたい人いっぱいいますよ!
大石:励ましたりね。僕にもできそうかな?
小泉:できると思いますよ!
大石:「ココナラ」見てみよう。
新しいことを始めたい春!
「小学生が新たにしてみたい習い事」
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
春になって、新しいことに挑戦したいという方も多いかもしれません。ベネッセが実施した、「小学生が新たにしてみたい習い事」というランキングは以下のようになっていました。
1位:プログラミング
2位:ダンス
3位:動画制作
4位:ピアノ・電子オルガン
5位:絵画・工作
この中で注目したいのは、2位の「ダンス」です!小学校の体育では必修科目にもなっていますが、ダンス人気は、子どもたちだけに限りません。
今回、ご紹介するのはシニア専門のダンススクール。鳥取県では、いま、「ゆるダン」という名前の教室が話題を呼んでいます。「ゆるダン」の代表、佐々木啓太さんにお話を伺いました。
「ゆるダン」というのは、ゆるいダンスという意味でして、 シニア専門ダンススクールということで、主に 60 歳以上の方を対象にゆるいダンスを提供しています。
シニア向けですので、使う音楽はたとえば昭和歌謡であったりとか、シニアの方が無理なく踊れるような動けるような振り付けです。
もともと、小学校の教員を 10 年ほどしていて、2 年前に退職しました。
じゃあ、次の人生の中で自分に何ができるんだろうと考えた時に、ポンと頭の中に浮かんだのが、自分の祖母、おばあちゃんでした。
自分のばあちゃんが、長く認知症として生活している中で、そのばあちゃんの認知症の時期に、 僕は自分のダンスにハマっていたり先生という仕事にハマっていて、きちんと向き合いきれなかったという後悔がありまして。
じゃあ、教員を辞めてなにしようっていうときに、ダンスが自分にはできる、ばあちゃんに何もしなかった自分がいる。
それでいろいろ調べたところ、シニアの方への介護予防とかフレイル予防とか、今必要とされているものに、ダンスがすごくシナジーがあることがわかって。
いままで散々自分のためには踊ってきたから、これからは、ばあちゃんへの思いも込めながら、誰かのために踊ってみようかなと立ち上げたのが「ゆるダン」です。
手応えはものすごくあります。
従来の介護予防、フレイル予防も大切なんですけど、健康のための健康運動ではなく、明日をもっと楽しく生きたいとか、1年後にこんな楽しい目標があるよねっていう中でのゆるいダンスっていうことに価値があることを痛感しています。
よく、「子どもたちは未来だから、君たちはなんでもできる希望があるから」って大人は言うじゃないですか。
「高齢化ってすごく社会課題でよくないよね」って言っていると、「なんだ、おじいちゃんおばあちゃんになったら、楽しいことってなくなっていくんだな」って子どもに感じさせてしまうんだろうなと思っていて。
なので、シニアの方たちが楽しそうにいつまでも楽しく生きている姿こそが、結果、子どもたちの希望にもつながると思った時に、シニアの方への働きかけを、もっと夢のあるものにしていきたいなと思っています。
小泉:よく見かけるんですよ。最近、SNSとかっておすすめの動画とかが流れてくるじゃないですか。多分、SNSの人って私の年齢をだいたいわかってる感じがして、おすすめの中にシニアのダンスとか、60代のダンスのグループとか、結構出てくるんですよね。
大石:へー。
小泉:だから、今いろいろなところでそういう動きが始まっているんだろうなって。中には、多分現役時代、当時ディスコとかでカッコいいスーツを着て踊っていたおじいさま達が今もピシッとスーツで決めて踊っている動画とかが出てきて、胸熱だった。
大石・上村:へー!
小泉:70年代のソウルミュージックとかを踊ってて、今もめっちゃカッコいい!みたいな人たちも出てきたりするので。
上村:ダンスって、音楽を流せば家で自主練もできるし、1曲完成させてまた次の曲をやるとか、「この日に発表会がある」とか、目標も立てやすくて。やりがいも含めてやりやすいのかなって思いました。
小泉:脳も使うし、体、いろいろな関節も動かすし。だから肩こりとかも治っちゃうかもしれないし。何かを覚えるのって、動きと一緒だと覚えやすいらしいんですよね。先輩の俳優さん方とか、ちょっと散歩しながらセリフを覚えるとすごく入るって言う方も多かったりするから。歌詞とかもどんどん入ってきて脳が活性化するだろうなって。
大石:こういうの、三軒茶屋にあったら嬉しいけどな。
小泉:普通に、教室としては全国にあると思うんです。大人向け、シニア向けとか。私のタイムラインんで知ってるから。笑
上村:ターゲットにされてる。笑
小泉:ダンスは、私はそんなに得意じゃないんですけど、仕事上ちょこっとはやってきたので、楽しいと思う。
上村:本当ですね。「フレイル予防」という言葉が出てきましたけど…フレイルというのは、「虚弱」という意味があります。「栄養・運動・社会参加」の3つの柱でフレイルというみたいです。
小泉:たまに耳にすることがあるけど、ちゃんとはっきり意味が分かってなかった。
上村:でも、「フレイル予防教室」でダンスをしましょう、ではなくて「ゆるダン」で楽しみましょうっていう名前もいいですよね。
小泉:いいと思う!楽しそうだし、この先生、佐々木さんのおばあちゃんのことが胸にあってやり出したっていうエピソードもすごく素敵だなって思いました。
大石:そうですね。
上村:地域のシニアの方がいきいきしていると、周りもみんな元気になりますよね。
小泉:佐々木さんが望んでいる、子ども達に「自分の未来も明るいな」って思わせる、っていうところに視点があるのもすごくいいと思います。
大石:「ああいうじいちゃん、ばあちゃんになりたい」ってね。
小泉:まだまだ人生先が長いから、ゆっくり歩いていけるな、って思えるかなって。自分もその域に入ってきているので、何が残せるか、どんな楽しさを残しておけるか、っていうのは課題だし。いつも自分がライブをやる時は、同世代の人たちをいかに元気にするか。そうすると、周りの子どもとかお孫さんが元気になるんじゃないかなって思っているところが大きいですね。
上村:(ライブの)熱気、すごかったですもん!
小泉:10代から70代、80代の方まで来てくださったりしているの。だから、私も同じような気持ちでやっている気はします。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)