『光る君へ』主演・吉高由里子(紫式部/まひろ役)×柄本佑(藤原道長役)対談【NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 完結編】
2024年放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安時代中期に『源氏物語』を生み出した紫式部の生涯を、脚本家・大石静さんが描いていきます。
今回は、10月4日に発売した『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 完結編』より、主演・まひろ役の吉高由里子さんと、藤原道長役の柄本 佑さんによる対談を一部掲載。ドラマを牽引してきた2人に、それぞれの思い、物語の展開のこれからについて語っていただきました。
(※NHK出版公式note「本がひらく」から抜粋)
2人の歩みを振り返ると、心に残るシーンがたくさん
吉高 撮影が始まってからほぼ1年半、制作発表から数えると2年以上もたっているとは……。
柄本 つまり、2つ年を取った。
吉高 やめてー(笑)。
柄本 まひろと道長も、ドラマの中で年を重ねてきて、まひろが宮中勤めになってからは、この2人の距離感がだいぶ変わってきていると思う。
吉高 そうだね。まひろが『源氏物語』の執筆を通して道長の政(まつりごと)に協力していくことに。ただ、2人のイチャイチャした雰囲気は相変わらずだよね。
柄本 相変わらずだね(笑)。
吉高 しかも道長は、妻の倫子さんの前でも態度に出てしまう。まひろが詠んだ歌に対して道長があうんの呼吸で歌を返すシーン(第36回)とか、「交換日記が公開されて恥ずかしっ!」みたいな気まずさがあった。
柄本 僕も「妻の前ではまずいだろ、道長!」と思った。
吉高 機嫌を損ねて去っていく倫子さんが怖かった~!
柄本 そりゃ怒るよね。でも道長はずっと「まひろラブ」。何かとまひろに会いに行くし。
吉高 まひろはあえて距離を置こうとしているのに、道長は「なんでつれないの?」っていう顔をするよね。鈍感すぎる!
柄本 そういう鈍感さはプライドを持たずに演じている(笑)。
吉高 まひろがあえて距離を置こうとするのは、石山寺で道長と愛し合ったときみたいに“ラブ”のスイッチが入っちゃうと自分を止められなくなると分かっているからなんだろうな。
柄本 石山寺のシーン(第27回)か……。長い撮影だったね。
吉高 大変だったー! 一度去った道長が走って戻ってきて、まひろを抱き締めるシーンを、半日以上かけて撮ったよね。佑君は何十回も走らされて。
柄本 うん。スタジオの広さがない中で、「ある程度の距離を走っているように見せたい」と、監督から言われて。
吉高 ヘトヘトになってようやく撮り終えたら、今度は2人で絡み合って逢瀬のシーン!
柄本 で、まひろがこのときにみごもったのが、賢子。僕は最初、道長は賢子が自分の子だと会ってすぐに気づいたのかと思ったんだけど、監督から気づいていないと言われたんだよね。
吉高 いつか気づくのかな。大石静さんの脚本だから、何か展開があるような気もする。
柄本 そうかも。それにしても、まひろが夫の宣孝さんの子どもを産んだと思い込んでいる道長って、素直だよね。
吉高 ほんと素直で鈍感で、そこは幼い頃の「三郎」のまま。
柄本 ともするとヒール(悪役)に転がりそうなキャラクターだけど、三郎の性格が土台にあるから、えげつないような行いも素直な行いとして見てもらえるのかなという気もしている。
吉高 1日がかりで撮ったシーンもあったね。まひろがまだ内裏に上がる前に道長がまひろを訪ねてきて、日が暮れるまで帝の話や、思い出話をするシーン。
柄本 第31回だね。あのシーンも何度も繰り返し撮ったなぁ。
吉高 大事なシーンだったこともあって、とても印象深い。
柄本 会話の質がそれまでとは違ったし、2人の関係がもう一段上がったような感じがした。確かこの回は、台本が来るまでに時間がかかったんだよね。
吉高 大石さんが練りに練って書かれたんだろうな。
柄本 まひろがいよいよ『源氏物語』を書き始めるという、すごく重要な回だもんね。
吉高 ソウルメイトの2人の歩みを振り返る“第1章”の締めくくりであり、”第2章”の幕開けとも言える回だったと思う。
芝居する中でお互いに気づかされる感情がある
柄本 道長から「この不義の話をどういう心積もりで書いた?」と聞かれたまひろが、「わが身に起きたことはすべて物語の種」と言うシーン(第35回)もとても印象的だった。創作に懸ける熱意に“すごみ”を感じたし、道長は執筆を頼んだ自分の目に狂いはなかったと確信したと思う。
吉高 まひろとしては「帝の気持ちを娘に向けたい」という道長の思いに応えてよい作品を!という思いだったんだろうな。
柄本 そもそも道長が娘・彰子の入内に動いたのは、まひろと約束した「民のための政」のため。でも彰子が不幸になったらやりきれないし、その不安や弱みを妻たちにも友たちにも見せられない。唯一見せられるのがまひろで、だからまひろの前では思い切り“パパ”していると思う。「彰子のために頼む!」って。
吉高 その心の悲鳴がまひろには聞こえたんだと思う。
柄本 実際、『源氏物語』は一条天皇が彰子のもとに足を運ぶきっかけになった。それだけじゃなく、彰子はまひろ自身に心を開いていく。能面のように表情のなかった彰子がまひろの前で豊かな表情を見せるようになっているのは、見ていてすごく感動するんだよね。
吉高 道長は期待に応えたまひろに扇を贈るよね。あの扇の絵は、大和絵の第一人者である林 美木子さんが描いてくださったそうで、だから収録のとき以外は触らせてもらえないのよ(笑)。
柄本 そうなんだ。まひろが扇をひとりでじっと見返すシーンが何度かあるけれど……。
吉高 うん。時々見返すということは、人知れず道長に対して未練タラタラなのかな。
柄本 いざ道長が言い寄ると振るけどね、まひろは(笑)。
吉高 道長がまひろに「俺たちは志を同じくする仲間だ」と言うシーン(第37回)があったけれど、2人はもう、“ラブ”を超えた関係になりつつある気もする。
柄本 そうだね。
吉高 そのセリフに続いて道長は「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は、次の東宮となられるお方ゆえ」と言う。そこのト書きに「…!(今俺、なんて言った? の気分)」とあって、「うわぁ、演じるのが難しそう」と思ったの。でも佑君のお芝居を見て「さすが!」と思った。
柄本 いやぁ、難しかったよ。監督から、「彰子が産んだ敦成親王を東宮にしたいという本音が、気が緩んでポロッと出たという感じで」と言われたので、演じてみたら「それはちょっとやりすぎ」と言われてさ。「やりすぎ」と言われるほど恥ずかしいことはないよ(笑)。
吉高 “爪痕を残そうとする若手俳優”みたいな(笑)。
柄本 そんなつもりないのに! 大石さんはちょくちょくこういう難しいお題をト書きで提示してくるよね。
吉高 試されているのかな。
柄本 それはあると思う。
吉高 でも、感情の矢印が分かるようにも書いてくださるので、理解に苦しむことはなくて。
柄本 うんうん。
吉高 私の場合、佑君とお芝居する中で気づかされる感情もいっぱいある。だから佑君のお芝居を近くで見てると楽しい。
柄本 一緒だぜ!
吉高 またイチャイチャした!
柄本 ふふふ(笑)。
この対談の続きは、10月4日発売の『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 完結編』に掲載されています。
取材・文=髙橋和子 撮影=平岩 享
ヘア&メイク=RYO(吉高さん)、森下奈央子(柄本さん)
スタイリング=藤本大輔(tas/吉高さん)、林 道雄(柄本さん)
吉高由里子(よしたか ゆりこ)
1988年生まれ、東京都出身。2006年、映画「紀子の食卓」でスクリーンデビュー。主な出演作に、ドラマ「美丘-君がいた日々-」「わたし、定時で帰ります。」「知らなくていいコト」「最愛」「星降る夜に」、映画「蛇にピアス」「真夏の方程式」「ユリゴコロ」「きみの瞳が問いかけている」など。NHKでは、連続テレビ小説「花子とアン」、「風よあらしよ」など。大河ドラマは「篤姫」に出演。
柄本 佑(えもと たすく)
1986年生まれ、東京都出身。主な出演作に、ドラマ「知らなくていいコト」、映画「きみの鳥はうたえる」「シン・仮面ライダー」など。NHKでは、連続テレビ小説「あさが来た」、「心の傷を癒すということ」「空白を満たしなさい」など。大河ドラマは「風林火山」「いだてん~東京オリムピック噺~」に出演。