耳から涼しくなりましょう【暑さを忘れるシティポップ5選】あなたが選ぶのは誰の曲?
外出の際には日傘が必須となってしまった令和の日本の夏は、もはや熱帯である。熱帯夜が続き、灼熱の太陽がアスファルトジャングルを照らし、熱い気化熱が発生し、スコールのような激しい雨が降る。そんなとき、耳から涼しくなりましょう、ということで、暑さを忘れるシティポップ5曲をピックアップしてみた。
ボサノバ風に仕立てた土岐麻子の「サマーヌード」
涼しい声とサウンドで真っ先に思い浮かんだのが土岐麻子の「サマーヌード」。2008年6月25日に発売されたアルバム『Summerin’』に収録されている。オリジナルは1995年に真心ブラザーズが発表し、その後セルフカバーやヴァージョン違いもあり。「サマーヌード」だけの収録で、ライブ音源を含めた6曲入りのCD『SUMMER NUDE 999 REMIX』も1999年に発売された。他にも多数の歌い手によるカバーが存在しているが、涼しさという観点では土岐麻子のカバー作品がずば抜けている。テンポの速いボサノバ風に仕立てたポップなサウンドの上で、伸びやかに弾けるヴォーカルが心地良い。
シティポップの原点ともいえる「中央フリーウェイ」へのオマージュ「3号線」
シティポップに欠かせないモチーフのひとつに “都会のドライブ” がある。この視点で、RYUSENKE feat. 堀込泰行の「3号線」を。2003年に流線形名義で発表された同名楽曲を、独特の雰囲気を持つ堀込泰行をボーカリストに迎えてリメイクした作品で、2022年に配信リリースされた。ストリングスとフルートが織りなす、隙のあるサウンドとどこか哀愁あるメロディ。都心の三宅坂ジャンクションから東名高速道路に向かって走る首都高速道路3号線を舞台にしたロマンティックなリリックを、唯一無二の涼しい声で唄う堀込泰行。ギターソロが印象的な長く続くアウトロもエンドレスで聴いていたくなる。流線形 / RYUSENKEIの作品には涼感のあるポップスが多数あり選曲に迷ったが、シティポップの原点ともいえる「中央フリーウェイ」へのオマージュに敬意を表して、こちらをピックアップした。
ハイ・ファイ・セットの極上のボーカルワークが涼しさを呼ぶ「7月のクリスマス」
少し大人の夏という視点では、ハイ・ファイ・セットの「7月のクリスマス」を。1984年のアルバム『Pasadena Park』に収録されている。12月が真夏にあたる南半球のオーストラリアやニュージーランドでは7月25日にクリスマスを祝うことがあるが、この曲は交際5年のカップルの記念日に、ミステリー小説を読む彼と、海辺のカフェで記念日のことを話そうとする彼女の微笑ましいお喋りを切り取ったショートドラマ。ハイ・ファイ・セットの極上のボーカルワークが涼しさを呼ぶ1曲。作詞は田口俊、作曲は伊藤銀次というクレジット。ちなみに南半球の7月は寒いというよりも涼しいらしい。
山下達郎もカバーした、愛奴のデビューシングル「二人の夏」
今よりもっと涼しかったであろう1970年代に時間を戻し、愛奴のデビューシングルとして1975年5月1日に発売された「二人の夏」。愛奴のメンバーだった浜田省吾が、暑いので涼しい曲を作ろうということで神奈川大学の下宿で書いたザ・ビーチ・ボーイズ風の1曲。波のイントロに涼しいハーモニーが広がっている。のちに浜田省吾が1987年にセルフカバーしているが、涼しさではシンプルなアレンジとファルセットが印象に残るこちらに軍配が上がる。メインヴォーカルは町支寛二と青山徹。なお、浜田省吾のセルフカバーの他に、椎名恵、山下達郎もカバーした音源があるので聴き比べてみるのも楽しい。
「潮騒(The Wispering Sea)」で聴ける村田和人の優しく伸びやかな歌声
最後に紹介するのは、村田和人with 安部恭弘&木戸やすひろ「潮騒(The Wispering Sea)」。村田和人の編曲で、もともとは1991年にフジパシフィック音楽出版の創立25周年を記念した非売品に収録されていたもの。2003年に発売された「CITY POP」シリーズのワーナー盤に収録されている。村田和人の優しく伸びやかな歌声と、アコースティックギターの響きが印象的なアレンジ、美しいコーラスが涼しい風を呼び起こしてくれる。オリジナルはご存知のとおり、山下達郎の「潮騒(THE WISPERING SEA)」。1978年発売のアルバム『GO AHEAD!』に収録され、1979年に4枚目のシングルとしても発売された。
以上5曲、暑苦しくない曲を選んでみましたが、皆さんもハンディファンとスマホを片手に “私の涼しい曲プレイリスト” を作ってみることをお勧めします。暑さを忘れられます。