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日本遺産フェスティバル in 倉敷 エクスカーション「倉敷を彩る『白』と『青』」(2025年10月26日開催)~ 児島の構成文化財を巡り、ものづくりを体験する日帰りツアー

倉敷とことこ

日本遺産フェスティバル in 倉敷 エクスカーション「倉敷を彩る『白』と『青』」(2025年10月26日開催)~ 児島の構成文化財を巡り、ものづくりを体験する日帰りツアー

倉敷には三つの日本遺産が認定されており、それらを構成する47の構成文化財が市内のいたるところにあります。

これまで、構成文化財を一度に巡る機会はほとんどありませんでしたが、2025年10月25・26日に開催された「日本遺産フェスティバル in 倉敷」では、各地域の構成文化財を訪れるエクスカーション(体験型見学会)がおこなわれました。

良い機会なので、筆者も児島の構成文化財を巡るエクスカーションに参加しました。

半日ツアーとは思えないほど内容の濃かったエクスカーションのようすを紹介します。

日本遺産フェスティバル in 倉敷 エクスカーションとは

画像提供:倉敷市日本遺産推進室

2025年10月25日(土)・26日(日)、倉敷アイビースクエアで開催された日本遺産フェスティバル in 倉敷

全国にある104の日本遺産が倉敷に集結し、日本遺産の魅力を伝えるPRブースや、民俗芸能のステージ、学びを深めるミニシンポジウムなど、多彩な企画を通じて、多くのかたに日本遺産の魅力を伝える機会となりました。

数ある企画のなかで、筆者が参加したのは2日目に実施されたエクスカーションです。半日程度の日帰りツアーで、倉敷市内に点在する日本遺産のストーリーを巡ります。

画像提供:倉敷市日本遺産推進室

コースは以下の3種類がありました。

・倉敷を彩る「白」と「青」~多島美の絶景と「ものづくり」体験日帰りの旅
・かつての北前船に思いを馳せて~瀬戸内クルーズと交易で栄えた港町の風情探訪日帰りの旅
・古代吉備の歴史探訪~全国有数の遺跡を巡り伝説の神事に触れる日帰りの旅

筆者が選んだのは、1番のコースです。ものづくり体験の楽しさとともに、歴史のロマンを感じられるツアーでした。

児島を巡るエクスカーションのようす

10月26日(日)午前8時30分頃、雨がしとしと降り続けるなか、倉敷アイビースクエアからバスが出発しました。

約40分かけて児島へ移動します。

普段は入れない「旧野﨑家住宅別邸 迨暇堂(たいかどう)」

最初に訪れたのは、「旧野﨑家住宅別邸 迨暇堂(たいかどう)」です。旧野﨑家住宅のガイドさんから説明を受けながら、立派な庭へと足を進めます。

迨暇堂は、児島で製塩業を営んで財を成し、「塩田王とも呼ばれた野﨑武左衛門(のざき ぶざえもん)の孫、野﨑武吉郎(のざき ぶきちろう)によって建てられました。

旧野﨑家住宅別邸 迨暇堂(たいかどう)

迨暇堂は普段非公開で、お雛様が展示される2月~3月の一定期間のみ一般の人が入場できます。今回のエクスカーションでは特別に見学できました。

ガイドさんによると、迨暇堂は約130年前にできた建物で、100畳の広さがあるそうです。

迨暇堂(たいかどう)の庭でガイドさんの話を聞く

「広大な庭では昔、鵜(う)を飼っていたそうですが、戦争が始まると周りの目などもあり岡山の後楽園に寄附したんです」

「野﨑武吉郎は、この庭で盛大に還暦祝いのパーティーを開催したそうですよ」

ガイドさんのお話を聞きながら庭を眺めていると、人々が暮らしていた当時の風景が自然と目に浮かびます。

野﨑武吉郎の銅像

国指定重要文化財&構成文化財にも指定されている「旧野﨑家住宅」

続いて訪れたのは、迨暇堂から徒歩1分の位置にある「旧野﨑家住宅」です。

塩田王として財を成した野﨑武左衛門の邸宅で、江戸時代後期に建てられました。

旧野﨑家住宅

敷地内には塩づくり体験館があり、塩づくりにチャレンジします。

塩づくり体験館

テーブルの上に用意されていたのは、カセットコンロに置かれた鍋と、竹製のへら、軍手とスプーンです。鍋には、塩づくりの素となる「かん水」が入っていました。

海水の塩分濃度は3%で、かん水の塩分濃度は18%。ぎゅっと濃縮された塩水で塩が作られるのだと勉強になりました。

かん水を火にかけている間、野﨑家がどのように塩を作っていたのかを動画で学びます。

動画を見終わる頃にはかん水が沸騰し、鍋にはすでに塩がくっついていました。竹べらを使ってかん水をかき混ぜながら、さらに熱を加えていきます。

かき混ぜていくうちにかん水がどろどろになり、気づけば個体の塩が出来上がっていました。乾煎りをすると、ポップコーンのように塩が跳ねます。

沸騰してからあっという間にオリジナルの塩が完成です。

出来立ての塩はお土産に持って帰れました。
同じテーブルに座った参加者と、「この塩で何を作ろう」という話で盛り上がります。筆者はシンプルな塩にぎりか、茹でた枝豆に使いたいと思います。

塩づくりを終えた後は、ガイドさんと一緒に邸宅を見学しました。

茶室 容膝亭(ようしつてい)

私たちが訪れた時期は、備前焼作家の作品も展示されていました。畳の上に海の生き物が泳いでいる風景はなんともユニークです。

特別展示されていた備前焼の作品

筆者はこれまでに4回ほど旧野﨑家住宅を訪れたことがありますが、今回初めてガイドさんに案内され、敷地内に神社があることを知りました。

自然の恵みが必要不可欠な塩づくり。たしかに自然へ感謝するための神社があるのも納得です。

5回目でも、ガイドさんと回ることで新たな気づきがあるものですね。

旧野﨑家住宅を見学した後は、ジーンズストリートをぶらぶら散策してからバスに乗り込みました。一か所目とは思えないほどの満足感で、次のスポットへと向かいます。

ジーンズストリート

北前船の歴史を残す「むかし下津井廻船問屋」

次の目的地である下津井へ向かう道中、瀬戸大橋のふもとをバスで走りました。間近に迫る瀬戸大橋は、いつ見ても迫力があります。

15分ほどバスに揺られて到着したのは、構成文化財に登録されている「むかし下津井廻船問屋」です。現地のボランティアガイドのかたがお出迎えしてくれました。

むかし下津井廻船問屋は、かつて北前船の寄港地として栄えた下津井の歴史を伝える施設です。江戸時代後期から明治時代の下津井のようすがわかる、貴重な資料が展示されています。

むかし下津井廻船問屋

中庭に飾られていた大きな竹製の船は、今回のために用意した手作りの北前船だそうです。あまりにも立派な作品なので、期間限定ではなく常時飾ってほしいと思いました。

展示室に入り、下津井の歴史について教えてもらいます。

「かつて児島は干拓地で、綿花を栽培していました。綿花栽培の肥料で使っていたニシン粕は、北前船が北海道から運んでいたんです」

「北前船の船員さんは1千両(※現在の貨幣価値では約1億円)も稼いだそうですが、行く先々でお酒の席を楽しんで散財していました。下津井にも、船員さんへのおもてなしとして、『下津井節』という歌があるんですよ」

下津井節も構成文化財のひとつということで、その場で下津井節も披露してくれました。みんなで手拍子をしていると、当時の下津井でのもてなしの雰囲気を味わっているような気分になりました。

北前船と下津井の歴史を紹介するパネル

むかし下津井廻船問屋の2階に上がると、当時の貴重な資料が数多く展示されていました。

むかし下津井廻船問屋 2階展示室

北前船に積み込まれていた船箪笥も展示されています。海に落ちてもなかの荷物が濡れないように、片側に重りを入れて水が入らない工夫していたそうです。

船箪笥

かわいらしいミニチュアの模型は、子ども達がじっくりと見つめていました。

展示が充実していたので、次回はゆっくりと見学に訪れたいと思いました。

瀬戸大橋を一望できる「鷲羽山レストハウス」でランチ

朝早くから活動していたためお腹もすき、お待ちかねのランチタイムを鷲羽山レストハウスのローカル食堂で迎えました。

鷲羽山レストハウスは、2025年4月にリニューアルオープンしたばかりの複合施設です。お土産ショップやローカル食堂、本屋や休憩所など、買い物と食を楽しみながらひと息つける施設となっています。

鷲羽山レストハウスのショップ
ローカル食堂で食事

用意されていたのは、メニューには載っていない特別なお弁当で、海の幸やフルーツなど岡山の味覚を堪能できるランチは、まさにツアーならではです。

「お刺身を食べられると思っていなかったからうれしい」と話す参加者もいました。お刺身は新鮮でおいしかったです。

食事を終えた後は、お土産ショップを覗いてみました。

児島の塩を使った食べ物や、真田紐・畳縁・足袋シューズ・デニム製品といった倉敷を代表する繊維製品など、倉敷が誇るアイテムが一挙集結しています。

児島の塩を使った食べ物が並ぶ
児島で作られた真田紐
MARUGOの足袋シューズ

品ぞろえが非常に豊富なので、じっくりと買い物を楽しみたいかたは、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。

室内から瀬戸内海を一望できるのも、鷲羽山レストハウスの見どころです。雨が降っていても瀬戸大橋の壮大な景色を楽しめました。

ショップから見える瀬戸内海の景色

国内初のレディースジーンズメーカー「ベティスミス」でストラップづくり

最後に訪れたのは、国内初のレディースジーンズブランド「ベティスミス」です。

ここでは株式会社ベティスミス代表の大島康弘(おおしま やすひろ)さんのガイドとともに、ジーンズミュージアムを見学します。

ベティスミスへ

ジーンズミュージアムは、ベティスミスが子ども達の社会科見学のために設立した資料館です。貴重なジーンズや、実際に昔使われていたミシンなど、ジーンズに関する資料が数多く展示されています。

まずは大島さんから、ジーンズの歴史について教えてもらいました。

ガイドする大島康弘(おおしま やすひろ)さん

「ジーンズは、私たちがちょんまげの時代にアメリカで初めて作られたんですよ」

児島が国産ジーンズ発祥の地と呼ばれるのは、日本で初めてジーンズの量産化に成功したからだと思います。昔はデニムの素材も産地も日本にありませんでしたが、ジーンズが売れ始めて国内でも生地や素材が作られるようになりました」

「ジーンズを産業にしたのは、児島が初めてです」

アメリカから輸入したミシン

大島さんのガイドを聞いていると、児島の人々のさまざまな工夫と努力によって、ジーンズが日本に普及していったことがわかります。

ジーンズミュージアム2

メイドインジャパンといえば質の高いイメージがありますが、日本のジーンズの最大の特徴は加工技術だと大島さんは語ります。

ジーンズミュージアム2では、子ども達がすり加工を体験しました。波のような凹凸のある型を生地の下に敷いて、上から一方向にこすりつけると、しわが生まれます。

加工は、オシャレな見た目になるだけではなく、身体に馴染んで履きやすいジーンズにすることもできるのです。

ジーンズミュージアムには歴代の貴重な資料がずらりと展示されており、入館料無料とは思えない見応えです。

ジーンズや機械だけでなく、雑誌やポスターなどもあり、当時のジーンズの流行を追えました。

1976年の『anan』

現在ベティスミスが取り組んでいるのは、生み出した服を循環させること。ハギレや、着古したジーンズなどを基に作られた再生デニムTシャツは、想像以上に肌触りが良く、つい欲しくなってしまいました。

デニム再生Tシャツ

続いて、ショップに移動してデニムストラップづくりを体験します。

まずは、カラフルな糸で縫われたデニムの帯と、20種類以上のリベットから、自分の好きな組み合わせを選びます。

ストラップになるデニムの帯

リベットとは、ジーンズの補強で使われる金属のパーツです。普段履くジーンズでは特にこだわりのないリベットですが、色や形が豊富で、選ぶのに時間がかかってしまいます。

カラフルなリベット

帯とリベットを決めたら、リベットをくっつける機器を使ってスタッフのかたと一緒にストラップを仕上げます。

リベットを装着する機器

足元にあるレバーを強く踏み込むと、「ガション!」という大きな音がなってストラップが完成です。思っていたよりも強い力が必要で、筆者が苦戦しているとスタッフさんが一緒に踏み込んでくれました。

完成したデニムストラップは一点物。エクスカーションの良い思い出となりました。

完成したデニムストラップ

おわりに

半日とは思えないほど充実していたエクスカーションでした。塩づくりやデニムストラップづくりなど、ものづくり体験ができたことも、良い思い出となりました。

倉敷市内に住んでいると、日々の暮らしのなかに構成文化財が自然と溶け込んでいることに気づかされます。一度足を運んだことがある場所でも、ガイドさんの説明を受けることで、奥深い歴史があることを再認識できました。

当たり前のことかもしれませんが、構成文化財が多くの人々によって長い年月をかけて大切に守られてきた存在であることを、実感できるエクスカーションでした。

今回のエクスカーションで学んだ内容は、周りの人にもぜひ伝えていきたいと思います。

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