5人に1人はコンドームをまったく使っていない! 「自分は感染しないはず」危機意識の低さの現れも 国内シェアNo.1メーカーが性感染症から守る挑戦とは?
コンドームの使い方にまつわる性教育連載。今回は、コンドーム国内シェアNo.1メーカーのオカモト株式会社・和田翔雅さんに、コンドームを使用する意味や基礎知識についてお聞きしました。全3回の2回目。
「コンドーム」は恥ずかしいものではない! 性感染症から守るシェアNo.1メーカーの挑戦とは?コンドーム国内シェアNo.1メーカー・オカモトの調査では、約70%の人がコンドームを使わずに性行為をすることがあると回答していて、まったく使わない人も5人に1人に上ることが分かりました。今回は、子どもたちを性感染症から守るため、性教育に取り組み続けているオカモトの和田翔雅さんに、コンドームを使用する意味や基礎知識についてお聞きしました。
2022年以降 毎年1万人を超える梅毒感染者
──和田さんは、大学や自治体、企業などと共同で性教育などに関する活動を行っているとお聞きしました。どのような活動をしているのでしょうか?
和田翔雅さん(以下、和田さん):若い世代に性感染症などについて正しく知ってもらうために、渋谷の109や下北沢でコンドームを配ったり、スポーツやイベントを企画したりと、さまざまな取り組みを行っています。
また、青山大学や東洋大学ともコラボレーションして、文化祭のイベントに参加したり、ゼミの授業として学生と一緒に性に関するアンケート調査をしたりすることもあります。
オカモト株式会社の和田翔雅さん。
──なぜコンドームメーカーである和田さんが、性教育に取り組んでいるのですか?
和田さん:性感染症の増加が深刻になっていたり、予期しない妊娠の問題も存在したりしているからです。これらの問題に、コンドームメーカーとして取り組みたいと考えました。
例えば、梅毒はこの10年で感染者数が急増して、2022年以降は毎年1万人を超える報告がなされています。
梅毒は口や性器などの粘膜や皮膚から感染し、主に性行為で感染します。妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけではなく、胎盤を通して胎児にも感染して、死産や早産、生まれてくる子どもの神経や骨に異常が起こることもあるため、特に注意が必要です。
引用:厚生労働省より
5人に1人はコンドームをまったく使っていない
和田さん:予防するにはコンドームが有効ですが、実はコンドームを使わない人が多いことが分かっています。
私たちの調査では、約70%の人がコンドームを使わずに性行為をすることがあると回答していて、まったく使わない人も5人に1人に上ることが分かりました。
資料提供:オカモト株式会社
また、予期しない妊娠も日本における社会問題です。日本では年間約12万件の人工妊娠中絶(2022年度)が行われています。人工妊娠中絶は、女性の体や心に大きな負担となるのはもちろんのこと、ライフプランそのものにも大きな影響を及ぼします(※1)。
※1 こども家庭庁所管・母体保護関係資料
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/22/dl/kekka5.pdf
──どうしてコンドームを使わないのでしょうか?
和田さん:理由はさまざまですが、使わなくても「妊娠する可能性は低いと思う」(28.5%)、や「性感染症にかかる可能性は低いと思う」(9.8%)など、「自分だけは大丈夫」といった危機意識の低さも目立ちました。
資料提供:オカモト株式会社
──コンドームは体を守ってくれる大切なアイテムなのに、正しく使われていないことが多いのですね。
和田さん:はい。だからこそ、コンドームの使い方を含めた性教育が大切なのです。
行った内容は、性感染症の現状と予防についての話をしたり、正しいコンドームの使い方のレクチャーをしたりしました。実際に生徒にコンドームを配り、実物を触りながら使い方を伝えました。
「コンドームの先の『精液だまり』の場所など、実物を使って解説しました」(和田さん)
教育は保護者からも「やってほしい」の声が多数
──中学生にコンドームを配るというのは、ずいぶん進んでいると感じました。
和田さん:確かにそうかもしれません。しかし、生徒自身や保護者からのニーズは非常に高いとも感じています。中学校での授業の際に、保護者の方たちと話す機会がありましたが、皆さん「家庭でどうやって性について教えて良いのか分からない」「こういう授業があってありがたい」と切実な悩みを話してくれました。
実際に、最初は中学2年生を対象に授業を行いましたが、中学3年生の保護者からも「高校生になる前にぜひやってほしい」という要望があり、卒業間際の2月に、中学3年生を対象にした授業も行いました。
現在「オカモト」で販売されているさまざまな種類のコンドーム。
和田さん:日本では諸外国に比べて包括的な性教育が遅れているので、性について話すことをためらったり、「コンドーム」=「恥ずかしいもの」というイメージを持ったりするかもしれません。
しかし、コンドームは自分自身の体を性感染症や予期しない妊娠から守ってくれる、女性にとっても男性にとっても大切なアイテムです。ぜひ、多くの人に正しい知識を持ってもらい、大切な心と体を守ってほしいと思っています。
──◆───◆──
コンドームは性感染症などから自分自身を守ってくれる大切なアイテムです。それにもかかわらず、5人に1人がまったく使用していないとは驚きでした。
次回3回目では、実はあまり知られていないコンドームの正しい使い方を、装着動画も交えて、和田さんに引き続き教えていただきます。
撮影:安田光優
取材・文/横井かずえ