なぜ三鷹にこの住宅が⁉ その謎をひもとく「三鷹天命反転中‼ 荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」が5月18日まで、『三鷹市美術ギャラリー』で開催中
どのようにして三鷹の地に『三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller』が誕生したのか? 荒川修作(1936-2010)+マドリン・ギンズ(1941-2014)の活動の軌跡を振り返る「三鷹天命反転中‼ 荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」が2025年5月18日(日)まで、東京都の『三鷹市美術ギャラリー』で開催されている。
今や三鷹のランドマーク⁉ 荒川+ギンズの活動の軌跡をたどる
三鷹市を東西に走る通称・東八道路沿いに、ひときわ目を引くカラフルな建物。鮮やかな14色の円柱形や立方体で構成されたこの建築物は、ニューヨークを拠点に活動した荒川修作+マドリン・ギンズにより企画、デザインされた『三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller』。2005年に完成して2025年で20年目を迎えるこの集合住宅は、現在では三鷹のランドマークの一つとして定着し、住居やオフィスとして利用されている。
展覧会担当の青柳さんは「本展は、三鷹市の大沢という場所にある『三鷹天命反転住宅』がなぜこの場所に生まれたのか、どのように作られたのか、今もなおなぜ多くの人を惹きつけているのかという疑問に対し、建設当時の関係者や『三鷹天命反転住宅』にお住まいの方のインタビューと当時の資料を通して迫っていくものです」と見どころを語る。
荒川修作の思考実験を追体験できる構成
岐阜にある『養老天命反転地』でも知られる荒川修作。1961年以降は活動の場をニューヨークに移し、ダダの巨匠マルセル・デュシャンとの交流を経て、図式絵画(ダイアグラム)を制作。当地で出会ったマドリン・ギンズとともに、1963年から「意味のメカニズム」という知覚に関する思考実験を行い、世界的な評価を確立した。
幼少期から人間の死に対する強い恐れと生命への関心を抱き、生涯を通してこのテーマに向き合い続けた荒川。天命(宿命)に従う生き方から脱し、与えられた世界から自由になることを目指して、カンヴァスからインスタレーション、建築へと活動の場を拡大していった。後年には自らを「コーデノロジスト(Coordinologist)」と称し、芸術・哲学・科学の総合と、その実践を目指すものとして、天命反転都市という社会実験の実現に向けて活動した。
本展は、これまでの荒川の作品や模型などを通して、『三鷹天命反転住宅』に込められた荒川とギンズの思考実験を追体験できる構成となっている。
また大沢にある『三鷹天命反転住宅』では月に数回、スタッフの案内による見学会も開催されている。展覧会の前に見学会へ参加する、もしくは展覧会に行ったあとに足を運べば、いっそう理解が深まること請け合いだ。
開催概要
「三鷹天命反転中‼ 荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」
開催期間:2025年3月22日(土)~5月18日(日)
開催時間:10:00~20:00(入館は~19:30)
休館日:月(ただし5月5日は開館)・4月10日(木)・5月7日(水)
会場:三鷹市美術ギャラリー(東京都三鷹市下連雀3-35-1 CORAL5F)
アクセス:JR中央線三鷹駅すぐ
入館料:一般1000円、高校生・大学生・65歳以上500円、中学生以下無料
※障がい者手帳などお持ちの人と付添の人1名は無料。
※三鷹天命反転住宅見学会チケットをお持ちの人は一般観覧料2割引き。
【問い合わせ先】
三鷹市美術ギャラリー☏0422-79-0033
公式HP https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20250322/
取材・文=前田真紀 画像提供=三鷹市美術ギャラリー
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。