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上野恩賜公園の『新鶯亭』で、鶯だんごとおでんを味わう

さんたつ

【東京おだんだね】新鶯亭の鶯だんごとおでん

今回は上野恩賜公園で営業を続ける甘味処、『新鶯亭(しんうぐいすてい)』の鶯だんごとおでんを紹介しよう。動物園や博物館に向かう人々の喧騒から離れ、ゆっくりと過ごせる『新鶯亭』では、自慢の鶯だんごのほかにおでんも提供している。

100年の歴史を刻む上野公園の甘味処『新鶯亭』

東京の代表的な観光地、上野恩賜公園。古くから桜の名所として親しまれ、明治6年(1873)には日本の都市公園第一号に指定されている。

現在でも多くの人々が訪れているが、とりわけ最近は外国人観光客が目立つ。美術館には長蛇の列ができ、広場で開催されているイベントも盛況のようだ。

上野公園はにぎやかなイメージがあるが、すこし奥に入れば静かにくつろげる場所も多い。不忍池には野鳥が冬越しのためにやってくるし、四季折々の草花も鑑賞することができる。今回紹介する『新鶯亭』も上野動物園正門のすぐ隣でありながら、木々に囲まれた落ち着いた場所にある。

以前はお店の向かいに遊園地があったが、2016年に閉鎖された。以前を知る者にとってはすこし寂しく感じるが、現在の落ち着いた雰囲気も悪くない。

『新鶯亭』の隣には『東照宮第一売店』というお店があり、こちらでもおでん(おでんライス)を味わうことができる。昭和の雰囲気を残した古き良きお店なので、こちらもぜひ足を運んでいただきたい。

『新鶯亭』に話題を戻そう。創業は大正4年(1915)で100年以上の歴史がある。創業者は鶯谷に貸席料亭「鶯亭」を経営していたことから、店名に「新」がついているという。

日本家屋風の建物は木々に覆われており、落ち着いた雰囲気で休憩できる。店内は窓が多く、日がやさしく注いでいる。上品でありながらも気取りがなく、肩肘張らずに利用できる。

庭にもテーブルと椅子が設置してある。暖かい季節はこちらの席を選べば、さらに心地よく過ごせるだろう。

料理と顧客に真摯に向き合う、『新鶯亭』の心意気

テーブルに置いてあるメニューを見ると、創業当時からの名物「鶯だんご」とおでんが掲載してある。

抹茶あんをのせたあんみつ、ところてんのほか、季節によってお汁粉やかき氷なども提供している。多すぎず、それでいて少なくもない。選ぶ楽しさをあらためて感じさせてくれるラインアップだ。

おでんと鶯だんごをオーダーすると、先におでんが運ばれてきた。昆布出汁がきいた汁でじっくり煮たおでん種は6種類。はんぺん、がんも、焼ちくわ、結び昆布、こんにゃく、さつま揚げ。練り物が多いのは蒲鉾マニアとしてうれしいところだ。また、彩りとして添えられたなると巻に趣を感じる。

とりわけはんぺんは東京をこよなく愛する筆者にはポイントが高い。ふっくらと柔らかな厚みがあるところにこだわりが見られる。

弱火でやさしくじっくり煮てあるので、具材の持ち味を殺さずに出汁が染みている。後述する鶯だんごにもこだわりが詰まっており、料理と顧客、その両方に真摯に向き合う『新鶯亭』の心意気が伝わってくる。

すこし時間をおいて鶯だんごが運ばれてきた。小豆、白いんげん、そして抹茶の3色の餡が美しい、創業当時からの名物だ。テイクアウトもできるが、日持ちがしないので当日にいただくようにしよう。

3つともきめ細やかなこしあんで、とても柔らかい。中には団子が入っているが、小豆には赤きび、白いんげんと抹茶には上新粉が使われている。作り方は何代にもわたって受け継がれているそうで、丁寧につくられた団子の見た目も舌触りも非常に上品だ。

店内には古い写真がいくつか飾られており、『新鶯亭』が刻んだ長い歴史を感じさせる。上野公園はいつの時代もにぎわい、『新鶯亭』は変わらず人々をやさしく迎えてきたのだろう。

上野公園はモダンなカフェが増えたが、個人的には『新鶯亭』のほうがずっとしゃれたお店のように思う。新しいものに目移りせず、変わらぬ味に愛着を持ちながら、四季折々の風景を楽しむ。そんな大人の余裕を楽しめる『新鶯亭』は、都内でも数少ない貴重な場所だと思う。世代を超えて、いつまでも親しみ続けられることだろう。

『新鶯亭』の基本情報

『新鶯亭』
東京都台東区上野公園9-86
03-3821-6306
定休日:月(祝の場合は火)
営業時間:10:00~17:00

取材・文・撮影=東京おでんだね

東京おでんだね
東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介
「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。

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