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1990年代の洋楽シーン【スウェディッシュ・ポップ】カーディガンズが切り開いた世界への道

Re:minder

1995年03月25日 カーディガンズのセカンドアルバム「Life」発売日

リレー連載【1990年代の洋楽シーン】vol.4スウェディッシュ・ポップ

1990年代、ついこの前のことのように思ってしまうのは私だけだろうか? しかし実際は30年も前の話なので、当時のポップミュージックはすでに音楽史の出来事として語られるべき対象ともいえる。こうした背景を鑑み、Re:minderでは【1990年代の洋楽シーン】と題し、代表するアーティストやその作品をシリーズで取り上げていく。

スウェディッシュ・ポップ最大の人気バンドとなるカーディガンズ


スウェディッシュ・ポップは、スウェーデンのインディーバンドを中心としたシーンを表すジャンルとして、1990年代半ば頃から日本でも紹介され始めた。当初は、エッグストーンやディス・パーフェクト・デイ、ワナダイズといったバンドが輸入レコード店でレコメンドされ、インディーロックやギターポップ愛好家たちがスウェディッシュ・ポップのバンドを漁るように聴き始めたのがきっかけだった。

この頃のロックシーンは、グランジ・ムーブメントが一段落し、アメリカでは、ウィーザーが登場。よりポップでメロディアスな歌を聴かせるいわゆるパワーポップのバンドがポスト・グランジと目されるようになっていた。一方、イギリスではブリットポップが隆盛を極め、やはりポップでメロディアスな方向を目指していた。

こうした英米のロックシーンに同調するようにメロディアスでポップな特徴を持つスウェディッシュ・ポップの様々なバンドにも注目が集まり始めたところに、同シーン最大の人気バンドとなるカーディガンズが登場したのだ。カーディガンズは、スウェディッシュ・ポップの中でもギターポップやネオアコ色が強く、爽やかな印象を与えるバンドだ。併せて、これは日本人の勝手なイメージなのかもしれないが、北欧の澄み切った自然や英米のショービズに染まっていない初々しさが、カーディガンズのバンドイメージとピタリと符合し、その魅力を一層際立たせた。

英米のマーケットへ挑戦した「ファースト・バンド・オン・ザ・ムーン」


そして、日本ではセカンドアルバム『Life』からのシングル「カーニバル」が大ヒット。1960年代のヴィンテージな音像とエバーグリーンなメロディーは普段あまり洋楽を聴かない音楽ファンにも広く受け入れられた。
また、当時、人気絶頂の渋谷系との親和性も高く、スウェディッシュ・ポップが一躍大きなムーブメントとして発展することにも繋がった。

しかし、この時点ではカーディガンズの日本でのブレイクは世界的な広がりには至っておらず、サードアルバム『ファースト・バンド・オン・ザ・ムーン』はネクストステージである英米のマーケットへの挑戦が課題となっていた。

アメリカではメジャーレーベルと契約し、盤石の体勢で制作に臨んだサードアルバムは、ヴィンテージでお洒落な音像はそのままに、メロディーの分かりやすさや演奏技術が飛躍的な成長を遂げていった。また、本作は曲間をシームレスに繋ぐ構成でアルバムとしての統一感が大幅に増し、シングルヒット志向のバンドではなくアルバム1枚をひとつの作品として表現できるポテンシャルの高さを示すことにも成功した。
チャートアクションもイギリスでは18位、アメリカでは35位にランクされ、スマッシュヒットとなっている。

スウェーデンはポップミュージックの一大産地


カーディガンズの成功は、これ以降にスウェーデンから登場した様々なバンドの世界進出に大きな影響を与えている。ギターポップ系にとどまらす、特にパンクやエモ、ガレージ系からはスターマーケットやラスト・デイ・オブ・エイプリル、ザ・ハイヴス、マンドゥ・ディアオ、ヴァイアグラ・ボーイズらが世界のマーケットに向けてデビューしている。また、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンやシーザーズは日本でもCMソングに起用され人気を獲得している。

ロック以外のアーティストとしては、EDMのスーパースターである、アヴィーチーもスウェーデン出身だし、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデを手がけた超売れっ子プロデューサーのマックス・マーティンもスウェーデン出身だ。このように現在では、多くのスウェーデン出身のアーティストが世界規模で活躍しており、何も珍しいことではなくなっている。今日、スウェーデンはポップミュージックの一大産地と言っても過言ではない状況だ。

スウェーデン出身のアーティストの大躍進


ところで、スウェーデンの人口は2023年の統計によると1,054万人で、東京都の人口よりも少ないということはご存じだろうか。決して大国とは言えない国から、これほどまでに多くの魅力的なバンドやアーティストが出現したことは単なる偶然ではなく、バンドを育むインディーズシーンがしっかりと根付いているからだろう。また、国内マーケットが小さいため、自ずと国外にも活動を広げていく必要があり、そうした環境もスウェーデンのアーティストが世界を目指す理由にもなっている。

スウェーデン出身のアーティストの大躍進には目を見張るものがあり、今後も大きな才能が出現し、ポップミュージックを面白いものにしてくれることは間違いなさそうだ。1990年代にカーディガンズが切り開いた世界への道は、30年経った今日も多くのアーティストが夢を抱いて駆け抜けている。

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