よくある「梅雨の不調」あなたはどのタイプ? 4つのタイプと対処法
しとしとと降り続く雨、ジメジメとした空気……。6月、梅雨の時期がやってくると、「なんだかからだが重くてだるい」「雨が降る前になると頭が痛くなる」「理由もなく気分が落ち込んでしまう」そんな心身の不調を感じることはありませんか?
毎年この時期になると繰り返される不快な症状に、「梅雨だから仕方ない」と諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その不調には理由があります。不調の理由を知り、適切な対策をとることで、つらい梅雨の時期を少しでも快適に乗り切ることができます。
この記事では、なぜ梅雨の時期に体調を崩しやすいのか、自分の不調がどのタイプに当てはまるのか、タイプ別の具体的なセルフケア方法ついてご紹介します。ジメジメした季節に負けず、心身ともに健やかに過ごすためのヒントを見つけていきましょう。
なぜ梅雨は体調を崩しやすいの?
梅雨時期の不調は、単なる気のせいではありません。この時期特有の気候の変化が、私たちのからだにさまざまな影響を与えているのです。主な原因を見ていきましょう。
1.からだにまとわりつく「湿気」の影響
梅雨の時期、もっとも私たちのからだに影響を与えるのが「湿気」です。湿気には以下のような性質があり、さまざまな不調を引き起こします。
重だるさ(重濁性):湿気は重く、下に停滞しやすい性質があります。そのため、からだが重く感じたり、頭が重くスッキリしなかったり、手足がだるくなったりします。とくに下半身に症状が出やすいのも特徴です。
停滞しやすさ(粘滞性):湿気はネバネバと粘りつくように停滞しやすく、からだの巡りを悪くします。これにより、水分代謝が悪くなってむくんだり、関節が痛んだり、症状が長引いたりしやすくなります。
消化器系への影響:東洋医学では、湿気はとくに消化吸収を担う「脾(ひ)」(現代医学の脾臓とは異なり、胃腸機能全体を指す概念)の働きを弱めやすいと考えられています。脾が湿気に負けると、食欲不振、胃もたれ、おなかの張り、軟便、下痢といった胃腸症状があらわれやすくなります。
気の巡りを阻害:からだのエネルギーである「気」はスムーズに流れることで心身の健康を保ちますが、湿邪はこの気の流れを邪魔します。気の巡りが悪くなる(気滞)と、だるさ、倦怠感、気分の落ち込み、やる気の低下などを引き起こします。
このように、外気の湿気が高まると、体内の水分代謝も悪くなり、さまざまな不調があらわれるのです。
2.気圧の変化の影響
梅雨時期は、低気圧が頻繁に通過し、気圧が大きく変動します。この気圧の変化は、私たちのからだ、とくに自律神経に影響を与えます。
自律神経は、からだの活動を司る「交感神経」と、休息を司る「副交感神経」がバランスを取りながら、呼吸、体温、血圧、内臓の働きなどを無意識のうちにコントロールしています。
気圧が低下すると、からだはそれに適応しようとして自律神経のバランスを調整しますが、その調整がうまくいかないと、さまざまな不調があらわれます。
血管の拡張と頭痛:気圧が下がると、体内の血管がわずかに拡張すると考えられています。これが脳の血管で起こると、周囲の神経を刺激して「ズキンズキン」とした片頭痛のような痛みを引き起こすことがあります。また、自律神経の乱れ自体が頭痛(緊張型頭痛など)を誘発することも。
めまい・だるさ:自律神経の乱れは、血圧のコントロールにも影響し、めまいや立ちくらみを引き起こすことがあります。また、交感神経が優位になりすぎてからだが緊張状態になったり、逆に副交感神経が過剰に働いてからだが休息モードに入りすぎたりして、だるさや眠気を感じることもあります。
3.冷えの影響
梅雨時期は、蒸し暑い日があるかと思えば、雨が降って急に肌寒くなる日もあり、寒暖差が大きいのが特徴です。また、湿気が多いと汗が蒸発しにくく、汗がからだを冷やしてしまうことも。さらに、蒸し暑さから冷房を使う機会が増えますが、冷房の効いた室内に長時間いることもからだを冷やす原因となります。
からだが冷えると、以下のような悪影響があります。
血行不良:血管が収縮し、血の巡りが悪くなります。これにより、からだの隅々まで酸素や栄養が行き渡りにくくなり、疲労感やだるさ、肩こり、頭痛などを引き起こします。
水分代謝の低下:血行が悪くなると、リンパの流れも滞り、体内の余分な水分や老廃物が排出されにくくなります。これがむくみを悪化させる原因にもなります。
胃腸機能の低下:からだが冷えると、胃腸の働きも鈍くなり、消化不良や食欲不振、下痢などを起こしやすくなります。
免疫力の低下:体温が低い状態が続くと、免疫細胞の働きが低下し、風邪などをひきやすくなる可能性もあります。
このように、湿気、気圧の変化、冷えという3つの要因が複合的に絡み合い、梅雨時期特有のさまざまな不調を引き起こしているのです。
あなたの不調はどのタイプ?6月によくある症状と対策方法
梅雨時期の不調は、人それぞれあらわれ方が異なります。ここでは、代表的な4つのタイプと、それぞれのタイプに合ったセルフケア方法をご紹介します。ご自身の症状と照らし合わせて、対策の参考にしてみてください。
1.からだに水分をため込んでしまうタイプ
主な症状:からだが重だるい、とくに下半身が重い、むくみやすい(夕方になると足がパンパンになる、靴下の跡がくっきり残る)、頭が重い、頭に何か被っているような感じがする(頭重感)、雨の日や湿度の高い日に症状が悪化する、便がゆるい、または下痢をしやすい。
おすすめのセルフケア
・利水作用のある食材を摂る:体内の余分な水分を排泄するのを助ける食材を意識して摂りましょう。きゅうり、冬瓜、スイカ、メロンなどの瓜類、小豆、はとむぎ、とうもろこし、あさり、海藻類(昆布、わかめ)などがおすすめです。ただし、瓜類やスイカなどはからだを冷やす性質もあるため、冷えが気になる方は摂りすぎに注意し、加熱したり、温める食材(生姜など)と組み合わせたりするといいでしょう。はとむぎ茶なども手軽に取り入れられます。
・適度な運動で汗をかく:ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどで軽く汗をかく習慣をつけましょう。汗とともに余分な水分を排出し、血行やリンパの流れを促進して水分代謝を高めます。
2.胃腸が弱く、湿気の影響でさらに機能が低下しているタイプ
主な症状:食欲がない、食べてもすぐにおなかがいっぱいになる、胃もたれしやすい、おなかが張りやすい、からだがだるくて疲れやすい、気力が出ない、食後に眠くなる。
おすすめのセルフケア
・温かい食事・飲み物を心がける:冷たい飲食物は胃腸の働きをさらに低下させ、湿気をため込む原因になります。食事はなるべく温かいものを、飲み物も常温か温かいもの(白湯、ほうじ茶、生姜紅茶など)を選びましょう。
・消化の良い調理法・食材を選ぶ:胃腸に負担をかけないよう、煮る、蒸すなどの調理法がおすすめです。食材も、脂っこいもの、生もの、硬いもの、甘すぎるものは控えめにし、おかゆ、うどん、芋類(じゃがいも、さといも、山芋など)、かぼちゃ、鶏肉などを中心に。
・よく噛んで腹八分目:消化を助けるために、一口30回を目安によく噛んで食べましょう。食べ過ぎも胃腸の負担になるため、腹八分目を心がけます。
3.ストレスや気分の低下がしばしばあるタイプ
主な症状:気分が落ち込む、憂鬱な気分になる、イライラしやすい、怒りっぽい、喉や胸につかえたような感じがする、おなかが張って苦しい、ゲップやおならが多い、ため息が多い、便秘や下痢を繰り返す。
おすすめのセルフケア
・リラックスできる時間を作る:ストレスを解消するには、心身のリラックスが不可欠です。ぬるめのお湯(38~40℃程度)にゆっくり浸かるのがおすすめです。好きな香りの入浴剤やアロマオイル(柑橘系、ラベンダー、ミントなど)を使うと、さらにリラックス効果が高まります。読書や音楽鑑賞、軽いストレッチなど、自分が心地よいと感じる時間を作りましょう。
・質の高い睡眠をとる:睡眠不足は自律神経の乱れを招き、気の巡りを悪くします。寝る前はスマートフォンやパソコンを避け、リラックスして過ごし、十分な睡眠時間を確保しましょう。
・香りの良い食材を摂る:しそ、みょうが、パクチー、セロリ、三つ葉、春菊などの香味野菜や、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類は、気の巡りを良くするのを助けるといわれています。ハーブティー(ジャスミン茶、ミントティーなど)もおすすめです。
4.冷えが強いタイプ
主な症状:手足やおなか、腰などが冷える(とくに下半身)、温めると症状が楽になる、むくみやすい、トイレが近いまたは尿量が少ない、下痢しやすい、寒がりで、夏でも冷房が苦手。
おすすめのセルフケア
・からだを冷やさない工夫:何よりもからだを冷やさないことが大切です。汗をかいたらこまめに着替えをする、濡れた服はすぐに乾かす。冷房の効いた部屋では、羽織物やひざ掛け、レッグウォーマー、腹巻などを活用し、直接冷風に当たらないようにしましょう。とくに、足首、おなか、腰回りは冷やさないように意識します。
・からだを温める食材を摂る: 生姜、ネギ、ニラ、ニンニク、玉ねぎ、かぼちゃ、シナモン、山椒などのからだを温める性質のある食材を料理に取り入れましょう。ただし、摂りすぎるとのぼせの原因になることもあるので適量を心がけます。
これらのタイプは、はっきりと分かれる場合もあれば、複数のタイプの特徴を併せ持つ場合もあります。ご自身の主な症状や体質に合わせて、セルフケアを取り入れてみてください。
梅雨の不調には漢方薬もおすすめ
セルフケアを続けてもなかなか改善しない、もっと根本的に体質から見直したい、という場合には、「漢方薬」によるアプローチも有効です。
漢方薬は、今ある症状を抑えるだけでなく、なぜその症状が起こっているのかという根本的な原因に働きかけ、心とからだ全体のバランスを整えることを得意としています。梅雨時期の不調であれば、「水分の循環をよくする」「弱った胃腸の機能を回復する」「血流や自律神経を整える」といった働きの漢方薬を選び、根本からの改善を目指します。
梅雨時期の不調によく用いられる漢方薬の例
五苓散(ごれいさん): からだの水分バランスを整える代表的な漢方薬。むくみ、頭痛、めまい、下痢、二日酔いなど、水分の偏りによるさまざまな症状に用いられます。
参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん): 胃腸が弱く、下痢しやすく、むくみやだるさが強い場合に用いられます。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう): 気分が塞ぎ、喉のつかえ感(梅核気)がある場合に。気の巡りを良くします。
加味逍遙散(かみしょうようさん): イライラや不安感、不眠などを伴う場合に。気血の巡りを整え、精神を安定させます。
「自分にはどの漢方薬が合うのだろう?」と思われた方は、必ず医師、薬剤師、または登録販売者などの漢方の専門家にご相談ください。
最近では、病院や薬局に行かなくても、スマートフォンやパソコンを使ってオンラインで漢方の専門家に相談できる「あんしん漢方」のようなサービスもあります。経験豊富な専門家が、あなたの体質や症状を丁寧にヒアリングし、あなたに合った漢方薬の提案や生活習慣のアドバイスをしてくれます。「忙しくて時間がない」「気軽に専門家の意見を聞いてみたい」という方は、こうしたサービスを活用してみるのも良いでしょう。
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ジメジメとした梅雨の季節。からだが重だるかったり、頭痛がしたり、気分が落ち込んだりするのは、決して気のせいではなく、この時期特有の「湿気」「気圧の変化」「冷え」などが複雑に絡み合って、からだに影響を与えているからです。
まずは、ご自身の不調がどのタイプに近いのかを知り、ご紹介したセルフケア(食事や生活習慣の見直し)を試してみてください。温かいものを食べる、適度に体を動かす、リラックスする時間を作る、からだを冷やさないようにするなど、できることから少しずつ取り入れていくことが大切です。
そして、セルフケアだけではなかなか改善しない場合や、体質から根本的に見直したい場合には、漢方薬という選択肢も有効です。ただし、漢方薬を選ぶ際は、必ず専門家に相談し、ご自身の体質に合ったものを選んでもらうようにしましょう。
梅雨の時期は体調を崩しやすいですが、自分のからだの声に耳を傾け、早めに対策をとることで、少しでも快適に過ごしましょう。
<この記事の監修者>
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師
碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
(ハピママ*/あんしん漢方)