【やまとさんの湯湯自適の記】#8 神通峡 春日温泉 ゆ~とりあ越中(富山市大沢野地域)連載とやまのおふろ
この連載は、富山県公衆浴場業生活衛生同業組合が行ったスタンプラリーで全45軒を制覇し、「富山銭湯マイスター」の称号を手にした会社員「やまとさん」が、日々の銭湯めぐりや強く惹かれた入浴体験をつづる不定期連載のコラムです。
#8 神通峡 春日温泉 ゆ~とりあ越中
その日は鮮やかな青空をバックに白銀の立山連峰が映えまくっていた。曇りがちな北陸、ましてや季節は冬。陽の光なんてナンボあってもイイもんですからねー。
「県総」のランニングコースを走りながら、某漫才コンビよろしく、晴天のありがたみを全身で感じていた。
5kmも走れば、ほどよく汗もかき、気分も爽やかなもの。あとは風呂でシメれば、完璧な休日である。さて、どうせならまだ行ったことのない風呂はないものか、私は地図アプリに指を這わせた。
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「県総」から車で南進すること15分、神通峡・春日温泉のほとりにある「ゆ~とりあ越中」は、里山のめぐみ、富山湾の海の幸がたのしめる温泉宿だ。周囲の田園風景や、立山連峰の雄姿をよりダイナミックに感じられるロケーションも、県外客に人気らしい。
日帰り温泉用の券売機に750円を投入し、受付を済ませる。
2階の大浴場へ向かう途中、その廊下からは、隣接する健康施設「ウィンディ」のプールサイドを浮き輪を腰にセットした少年が駆けているようすがちらりと見えた。この晴天も相まって、なんだか季節感が麻痺してしまう。
浴場は内湯にサウナ、外湯、という仕様。
場内には大きなガラス窓から陽の光が射し込んでいる。傾きはじめたやわらかい光が内湯の湯面に反射し、キラキラと眩しかった。ランニングで汗ばんだ身体を清め、まずは内湯に浸かる。湯は熱すぎずぬるすぎずの、適温といったところだ。
壁に貼られた解説板によると、内湯は「ほどよい塩分」、外湯は「濃い塩分」だが、どちらも美肌効果、保湿効果が期待できるナトリウム塩化物泉、とのこと。たしかに湯ざわりはなめらかに感じた。
外のランニングで冷えた身体がほぐれたころ、サウナも試してみることにした。
2段のコンパクトな造りのサウナは、詰めれば6人は入れるだろうか。先客は3人。みんな2段目に座っていたため、1段目からのスタートだ。室内の温度計は92℃を指していたが、なかなかにやさしい体感…。入室して3分が経ったころ、空いた2段目に移動して、ようやくちょうどよい熱気を感じた。
普段は6~7分を目安に入室しているが、ここでは12分計をひと回り見届けることができた。そんなあたりからも、このサウナ室の「やさしさ」をお察しいただきたい。
一方で、水風呂はしっかり冷たかった。サウナ室内とのギャップもあって、外湯スペースの外気浴では、しっかりととのうことができた。
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「ゆ~とりあ越中」の個人的なハイライトは、外湯に設置された壺湯だ。
内湯よりも少しぬるめで、晴天とはいえ冬の外気もあり、リラックスした状態でずっと浸かっていられる。これが本当によかった。壺の縁に肘や足首をひっかけ、浮力を感じながらだらんとくつろぐスタイルは、少し行儀が悪く映るかもしれないが、壺湯ならではの楽しみ方だと思っている。顔の位置に仕切り版が設置されていて、隣の壺湯に浸かる人の気配を最大限消してくれているのも、配慮が行き届いているように感じた。
総じて、ランニング後の身体を癒やすにはちょうどよい環境だった。「県総」でひとっ走り、からの「ゆ~とりあ越中」…休日コースのひとつに設定しようと思う。
帰り支度を済ませ、外へ向かう途中、「居酒屋おわら」、「カラオケBOX風の城」といった館内施設のサインに、土地柄とユーモアを感じた。もう何年か先、「ベテラン」の領域に達するころ、気の置けない仲間と宴席を設けるのもよさそうだ。そのためにも、健康維持はマスト事項。
いつまでも若く思うな四十歳。今年こそ、ランニングを習慣づけよう…。
【ゆ~とりあ越中】
住所 富山県富山市春日96-1
営業時間 受付 9:00~19:00