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40周年!南野陽子「スケバン刑事Ⅱ少女鉄仮面伝説」東映を背負ったアイドルの原点がここに

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1985年11月07日 フジテレビ系ドラマ「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」放送開始日

放送開始40周年!南野陽子主演「スケバン刑事Ⅱ」


2025年11月7日、南野陽子をトップアイドルに押し上げた東映制作のテレビドラマ『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』(以下:スケバン刑事Ⅱ)が放送開始40周年を迎えた。この作品は斉藤由貴主演の『スケバン刑事』終了直後に始まった続編で、前作同様、学校で起こる事件を捜査・解決する特命刑事(通称:スケバン刑事)に任命された女子高校生が主人公である。ただし、第1作と異なり、原作から離れたオリジナル要素が強い。

この『スケバン刑事Ⅱ』は南野陽子にとって、単なる出世作にとどまらない。以後の芸能キャリアを決定づけた作品と言ってもいい。その理由は、この作品が東映の得意分野の要素を織り込んだ大娯楽作だったからだ。そこでの洗礼を最大限に受けた南野陽子は、以後、同社の三角マークを背負っていくことになる。ここでは、「スケバン刑事Ⅱ」に東映的要素がどれほど凝縮されているのかを確かめていこう。

「仮面ライダー」ミーツ「鬼龍院花子の生涯」


まず、設定に着目したい。南野陽子が演じる “二代目麻宮サキ” こと五代陽子(以下:サキ)は、幼い時から鉄仮面を強制的に被らされ、その姿で小学校から高校まで過ごしていた。この “異形の仮面を被った主人公” というのは、言うまでもなく『仮面ライダー』に通じる要素である。鉄仮面はサキがスケバン刑事になる過程で外されるが、以後も象徴的モチーフとして随時描写される。

そして、高知県で育ったサキは、上京後も土佐弁で通す。“おまんら、許さんぜよ!” はお馴染みのフレーズだ。南野陽子自身もたびたび言及しているが、これは1982年にヒットした東映映画『鬼龍院花子の生涯』で夏目雅子が放った台詞 “なめたらいかんぜよ!” が流行語となったことが背景にある。第5話ではサキが “麻宮サキをなめたらいかんぜよ!” と啖呵を切るシーンもある。

「水戸黄門」をモチーフに任侠映画へのオマージュも


サキは、矢島雪乃(吉沢秋絵)と中村京子(相楽ハル子 / のちに相楽晴子)という2人の仲間を左右に従える。これは主に京都・太秦の東映撮影所で撮影された時代劇『水戸黄門』で、主人公の水戸光圀が助さん&格さんを帯同する図式をトレースしている。

ビー玉を武器にして戦う “ビー玉のお京” こと中村京子の初登場シーンは、 “姓名の義は中村京子。通り名をビー玉のお京と発します” と、藤純子主演の『緋牡丹博徒』シリーズのパロディ的シークエンスがあり、『緋牡丹博徒』主題歌がインストでうっすら流れている。

第3話では、この3人が勢ぞろいして歩くシー
ンがあるが、ここで雪乃はサキに赤い番傘をさしかける。エンディングでも毎回流れた場面なのでご記憶の方も多いだろう。これは、『昭和残侠伝』シリーズで敵地に殴り込みに行く高倉健と池部良が1本の傘で雪を凌ぐシーンのオマージュだ。

巨大な敵のキャラ設定も東映的


サキは学園で起こるさまざまな事件を日常的に解決していくが、それと同時に、自らの出生にも関わる巨大な敵と戦う “宿命” が作品を通して描かれる。第一の敵である “影の総統” こと信楽恭志郎(長島ナオト)は10代の若さで巨大な影の権力を背景に持ち、明晰な頭脳と非情な選民思想によって社会の支配を企む。これは原作:雁屋哲、作画:池上遼一による劇画を実写化した東映映画『男組』シリーズ(1975年〜)の敵役、神竜剛次に通じるカリスマ的悪役キャラクターである。

また、ラスボスである “鎌倉の老人” こと信楽老(森塚敏)は、戦中、戦後の日本で暗躍し、国家を影で動かしている黒幕だ。これは『日本の首領』シリーズ(1977年〜)や『日本の黒幕』(1979年)など、権力者を描いた東映
映画にありがちなキャラクター像だといえる。

細かく挙げればキリがない。サキ、雪乃、お京が3人横一列で真っ直ぐに歩いてくるエンディングは『Gメン’75』(TBS系 / 1975年〜)を彷彿させる。第23話には、映画『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズのヒロシとトオルをイメージしたゲストも登場する。“網走番外高校” という、高倉健主演映画『網走番外地』(1965年)を想起させる高校名も出てくる。

「スケバン刑事Ⅱ」は「仮面ライダー」の系譜にある作品でもある


『スケバン刑事Ⅱ』のアクションを担ったのは、『仮面ライダー』シリーズと同じ、殺陣のプロフェッショナル集団、大野剣友会だ。したがって、アクションのひとつひとつがライダー的である。サキは高くジャンプしてからのキックを得意技とする。これぞライダーキックそのものだ。そして、第6話では雪乃、お京と3人で同時にキックを繰り出す。言わずもがな仮面ライダー1号、2号、V3とのトリプルライダーキックの再現だった。また、サキはオートバイ(カワサキ・GPZ400R)で移動する “ライダー” であることも見逃せないポイントだ。

ライダー要素はまだまだある。サキらのクラスメイトの新聞部員役で、『仮面ライダー』の原作者である、石ノ森章太郎の実子・小野寺丈がレギュラー出演していた。物語の終盤、第37話には麻宮サキの実父が登場するが、それを演じたのは『仮面ライダーV3』『秘密戦隊ゴレンジャー』『ジャッカー電撃隊』『快傑ズバット』で名を馳せた宮内洋だったのである。そんなこともあって、『スケバン刑事Ⅱ』は特撮マニア界隈でも注目されるコンテンツとなり、専門誌でも特集が組まれるほどだった。

南野陽子は東映の三角マークを背負う存在に


『スケバン刑事Ⅱ』は15%近い視聴率(*)をキープし、放送期間が延長され約1年間の番組となった。そして、その間に南野陽子の人気は急上昇。最終回は19.1%という番組トップの数字を記録した。最高の終わり方だった。

以後、南野陽子は俳優業と歌手業を並行しながら、トップアイドルの道をひた走る。特筆すべきは、初代の斉藤由貴と同様、そのキャリアにおいて映画出演を重視した点だ。斉藤由貴は東宝芸能の所属で、東映にとっては借り物だった。これに対し、競合他社のしがらみのない南野陽子を、東映は若手看板スターとして売り出していく。

まず、初主演映画として1987年2月公開の劇場版『スケバン刑事』が公開された。その主題歌「楽園のDoor」は南野陽子にとって初のオリコン1位曲である。続いて1987年12月公開の『はいからさんが通る』に主演。映画も同名主題歌も大いに当たった。以後、20代半ばにかけて、主演、ヒロイン、助演、カメオ出演を問わず、南野陽子は東映のスクリーンに出演を重ね続けたのである。

▶ 菩提樹 リンデンバウム(1988年8月)
▶ ゴールドラッシュ(1990年12月)
▶ 福沢諭吉(1991年8月)
▶ 寒椿(1992年5月)
▶ 天国の大罪(1992年10月)
▶ 青春デンデケデケデケ(1992年10月)
▶ 私を抱いてそしてキスして(1992年11月)
▶ 修羅場の人間学(1993年11月)
▶ 東雲楼 女の乱(1994年10月)

芸姑を演じた『寒椿』では初のヌードシーンに挑み、『私を抱いてそしてキスして』ではエイズに感染して恋人と無防備で性交してしまう女性を演じた。このようなキャリアを築いた1980年代のトップアイドルは他にいない。そう、その原点に『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』があった。時は流れ、2023年に南野陽子は『仮面ライダーガッチャード』にレギュラー出演。主人公の母親を演じ、ファンを大いに喜ばせた。

*視聴率はビデオリサーチ調べ(関東地区)


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