青春とは今に繋がるための何か。3人が一緒にいられた時間をまた味わってほしいーー『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』家入硝子役・遠藤 綾さんインタビュー
『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』が2025年5月30日(金)より公開! TVシリーズでも語られた五条 悟と夏油 傑たちの青春を、今度はスクリーンで楽しむことができます。
本作の公開を記念して、家入硝子役・遠藤 綾さんにインタビューを実施。ミステリアスな雰囲気が魅力の家入硝子。彼女が“あの頃”に何を感じ、今にどう繋がっているのか。
遠藤さんに、高専時代を生きるひとりとして、そして仲間として、五条・夏油と共に過ごした日々への想いを、丁寧に語っていただきました。
【写真】『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』家入硝子役・遠藤 綾インタビュー
劇場で再体験する尊さ、痛み
ーー『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』の制作が決定した際のお気持ちをお聞かせください。
遠藤 綾さん(以下、遠藤):『呪術廻戦 懐玉・玉折』の総集編が劇場公開されると聞いたのが、昨年行われた「じゅじゅフェス 2024」でした。
会場のお客さんと一緒に知ったのでびっくりしましたし、すごく嬉しかった記憶があります。私自身、初めて出演させていただいた『呪術廻戦』のイベントでしたし、色んな意味で記憶に残るイベントでしたね。
TVシリーズで放送されたものを、もう一度劇場で見られることは素直に嬉しいです。しかし、辛いシーンもある作品なので、あれから少し時間が経って、私も含めて皆さんがどう物語を受け取るのかなという気持ちもありました。
ーー改めて『懐玉・玉折』はどういう作品だと思いますか?
遠藤:大人になった五条や夏油、先生になったキャラクターたち。虎杖たちのような生徒たちの今を作った数日間ですよね。過去にそういう物語があったからこそ、今の五条たちの行動があるわけじゃないですか。
ーー五条が虎杖たちを育てるきっかけですよね。
遠藤:そうなんですよ、普通に考えると五条が先生になんてならないと思います。私も向いてないんじゃないか、なんて印象もあったんですけど、彼なりの約束というか。今後の自分ができることや、どういう生き方が正解なのか、みたいなものに対する答えを出したいんだろうなと思います。
本作で描かれるエピソードはとても大事な時代の話。だけど虎杖たちに直接話すわけではないという。それでも、五条だけではなく、硝子も夜蛾先生もそういう辛い出来事があって、乗り越えたかどうかはわかりませんが、その経験を持ち続けながら高専にいる。それが切なくもあり、頼もしくもあって。
本当に重要な過去ですよね。しっかりTVシリーズで描いて、劇場版としても公開される意味のあるエピソードだと思っています。
ーー本作の映像をご覧になって、劇場版だからこそ感じたことはありますか?
遠藤:TV放送を見た際にも、アフレコ時には気付かなかったことが沢山ありました。ショッキングで辛くなってしまうシーンも、若い硝子たちを見て嬉しくなったりするシーンもあったんですが、今回改めて劇場版として見ても、同じところで嬉しくて、同じところで苦しかった。同じ感情をもう1回味わったな、と思います。皆さんは、どういう風に今回の映像を受け止めるのか興味がありますね。
また、当時の自分の演技を改めて見ると、良いなというか、今後の硝子にしっかり繋がっているなと感じました。
若き硝子を演じるために
ーー若い硝子を演じる上でどのようなアプローチをなさったのですか?
遠藤:私が準備していた、高専時代の硝子さんはもうちょっと明るかったんです。でも収録の際に、大人の成分を残した感じのディレクションをいただきました。
2年くらい経って、あの頃の硝子を見てみると、その大人感を残した演出が効いているなと思います。現在の硝子にシームレスに繋がっているんじゃないかな。
ーー遠藤さんが準備していた硝子は明るかったんですね。
遠藤:そうですね。沢山喋るシーンがあるわけじゃないんですが、ひとつひとつの台詞から若い頃の硝子だなって伝わるようにしたいと思っていました。
そもそも私のアフレコは五条と夏油を演じている中村悠一さん、櫻井孝宏さんの声を聞いてからだったんですよね。ふたりの若さを聞いたあとだったので私も元気にやってみたら、「もうちょっと気だるい感じを残したい」とおっしゃっていただいて。数パターン収録してもらったんですけど、結果的に、大人の硝子と比べても違和感のない彼女になっていると思います。
高専時代に明るすぎちゃうと、夏油並みに変化しちゃって、「何かあったの!?」って思われそうですしね(笑)。まあ、彼女なりになんだかんだあったんですが……。それでも良い感じにまとまっていて、満足しています!
ーー3人の掛け合いも印象的でしたが、アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
遠藤:当時はコロナ禍が収まり、ようやく数人で一緒に収録できるようになったばかりでした。天内理子ちゃん役の永瀬アンナさんたちにも会えましたし、もちろん中村さんや櫻井さんとも一緒に収録していって。
ーー印象的なキャラクターである理子を演じた永瀬さんの印象はいかがでしたか?
遠藤:永瀬さんとは、別の現場で一緒になっていたので「また一緒で嬉しいね!」って話をしましたね。
アフレコが始まる前のイベントで虎杖を演じる榎木淳弥さんとお話したんですけど、「(永瀬さんは)理子にぴったり。ぴったりすぎる」と大絶賛をしていたのが印象的でしたね。その時にはまだ理子ちゃんを知らなかったので、読んでみたら凄く楽しそうな台詞もあるし、可愛らしいキャラクターで納得しました。
ーー当時、実際の理子の映像をご覧になっていかがでしたか?
遠藤:五条や夏油たちも学生ですけど、理子ちゃんはそれよりももっと若い瑞々しさがあるじゃないですか。私たちが大人から高専時代に戻る感覚とはまた違って、まだまだ友達と遊んでいたい、生きていたい、みたいな純粋さがありました。それは、永瀬さんの演技だからこそだと思います。
ーー先ほど、同じ感情を味わったとおっしゃっていましたが、どのシーンが辛かったのでしょう?
遠藤:理子ちゃんのシーンです。あのシーンは硝子は出ていないですけど、やっぱり印象的です。夏油の表情が暗くなっていくところもリアリティがあって、相当ショックでした。
元気ハツラツとした若い女の子の未来はキラキラしていてほしいじゃないですか。生い立ちはどうあれ、未来は明るくあってほしい。みんなで沖縄に行くシーンとかあんなに楽しかったのに……。キャラクターとしては、理子ちゃんとの関わりはなかったんですけど、友人を亡くしたような思いでした。
ーーでは、嬉しかったシーンは理子のキラキラとしたシーンですか?
遠藤:彼女のキラキラとしているシーンでしょうか。あとは、学生をしている硝子たち3人を見られたことも嬉しかったです。バスケットのシーンもそうですし、OP映像も良いですよね。
本編では描かれなかった部分を補ってくれているというか。あんなふうに横並びで歩いて下校していたんだな……みたいなささやかな時間を見せてもらえて嬉しかったです。
ーー理子を演じた永瀬アンナさんにお好きなキャラクターを尋ねたら「硝子さん」っておっしゃっていました。
遠藤:嬉しいです!
ーー改めて、遠藤さんから見た硝子の魅力や印象を教えて下さい。
遠藤:ミステリアスな部分は魅力ですよね。謎が多く、五条や夏油とは違って私生活が見えないと言いますか。描かれている部分が少ないので、謎が多いのは当たり前かもしれないんですが(笑)。でも五条や夏油が硝子のいないところで彼女の話をしているシーンから、彼女のことを想像することはできますよね。
彼女は彼女にしかわからない言い回しとか、言動が不思議なことがありますが、五条と夏油はそれに対応してくれているんだな、って。そもそも、五条や夏油も十分変わった子だと思うので、彼らとつるんでいて違和感がないくらいに、硝子も変わり者なんだろうなと思います。
ーー確かに。彼らに対しても冷静というか、動じないですよね。
遠藤:あのふたりとセットになって良く一緒にいられますよね(笑)。硝子は、誰といようが動じない肝が座ったところも魅力かな。
何があっても顔色一つ変えずに、淡々と対応していく頼りがいがあるから、ふたりとつるんでいられるんだろうなと思います。私も見習いたいところがありますね。本人は動じているかもしれないんですが、強さを感じるというか、芯の通ったところが好きです。
高専時代の三人の絆とは?
ーーこの五条・夏油・硝子の関係性を改めてどのように捉えていますか?
遠藤:3人はチームとして任務にあたっているので、それぞれが役割をちゃんと持っていますよね。五条たちにしかできないこともあれば、硝子にしかできないこともあって。それぞれがお互いを尊重しながら任務をこなしていたんじゃないかなと思います。
なので、3人での他の任務の様子も見てみたかったなと思ったり。どれくらい喧嘩してたのかな……とか、3人が共闘しているシーンはかっこいいんだろうなとか。なんだかんだ、居心地の良さそうな3人ですよね。
ーーそれこそ、虎杖たちのような雰囲気だったかもしれないですね。
遠藤:たしかにそうですね。時代が変わっても、ああいう3人は現れるんだなって。ある種の王道パターン。
ーーそれが物語後半には崩れてしまう。
遠藤:だからこそ、3人が一緒にいられた時間が尊いなと思います。それがまた、総集編になって劇場で味わえるのはやっぱり嬉しいです。2年前にTVシリーズを見たファンの方も、少なからず変化しているんじゃないかと思います。ちょっとだけ大人になって3人の青春を見た時に、どう感じるんでしょうか。
ーー当時高校生だったり、キャラクターたちと同年代のファンの方は、2年分時間が経っていますもんね。
遠藤:ですよね〜! 高校生だった子が、大学生になっていたりとか。あの時の楽しみ方とは違う楽しみ方ができそう。取り返せないなにかが沢山あるんだよな〜って。
ーー遠藤さんには、放送当時にもアニメイトタイムズで取材をさせていただきまして。
遠藤:え!? なんか変なこと言ってますか? 恥ずかしい!
ーー五条と夏油の制服のビジュアルが好みだっておっしゃっていました(笑)。
遠藤:それに関しては何も変わっていないです!(笑) 今回の劇場版を見てもやっぱり良いなと思います。特に夏油の立ち姿がかっこいいですよね〜。現在の夏油とはビジュアルが違うので、より良さが引き立っていると思います!
ーー今回は新たに3人が登場する「じゅじゅさんぽ」の収録もあったとお聞きしました。
遠藤:いや〜嬉しかったです。改めて、高専時代をやる機会って今後ないじゃないですか。大人の硝子はこれからもありますけど、高専時代のワイワイしてる3人を見ることができました。
色々な役を演じていると、もう演じることがないであろうキャラクターもいっぱい生まれてしまいます。そんな中で、硝子たちの過去にフィーチャーしてもらって、それが劇場版にもなる。それだけ、見てくださるファンの方々や、スタッフの皆さんにとっても大切なエピソードなんだなと再認識しています。
ーー『死滅回游』の制作も決定していて、昨年には原作も完結しました。改めて、遠藤さんにとって『呪術廻戦』ってどのような作品ですか?
遠藤:私は自分がアフレコでやる範囲までの原作を読んで臨んでいるので、どんな展開が待っているのかわかっていないんです。でも、何故か全然作品に関係のないファンの友達から「呪術廻戦こうなったよ!」って教えられるんですよ(笑)。家入硝子さんに、ご報告!みたいな感じで。
ーーキャストさんもネタバレされることがあるんですね……(笑)。
遠藤:私としては、硝子の後輩とか、虎杖たちみたいな若い子たちがどうなってしまうのかが気になっています。どうにか幸せになってほしいなとだけ思っています。
私にさえネタバレしたくなってしまうくらいに、注目度があって、誰かと語り合いたくなってしまう作品が『呪術廻戦』なんだと思います。それに参加することができて改めて嬉しいなと思います。
『呪術廻戦 懐玉・玉折』を新たな気持で楽しもう!
ーー遠藤さんにとって「青春」ってどんなものですか?
遠藤:難しいですね。ふと、青春ってなんだろうって思って、辞書で調べたことがあって。青年・青・春にフォーカスした内容が書いてあったんですね。その時、「そんなに春って青いんだっけ?」って思いました。
私の中で、春はドキドキしちゃって、苦手だなって思います。そういうドキドキ感や、まだ何もわからない、どうしたらいいかわからない不安を味わってたような気がするんです。
先ほど話した過去があるから、今がある五条みたいな感覚。なので、青春って今に繋がるための、何かじゃないかな。今、めんどくさかったり、ごちゃっとしたものでも、後に何かに繋がる尊い時間だなと思います。
ーー最後にファンの皆様に向けて、劇場版総集編の見どころとメッセージをお願いします。
遠藤:すでにテレビシリーズで見たよって方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、改めて大きなスクリーンで、しかも1人じゃない環境の中で見るのは、また気持ちも違うと思います。
一度視聴した作品も見る度に感じることが変わったり、違うところに注目できたり、より印象が強くなったりしますよね。何度見ても面白いと思うので、1回1回を噛み締めながら見ていただけたらいいなと。苦しいシーンもありますが、若いキャラクターたちの雰囲気も感じられて、自分の青春ってどうだったかな、と振り返ってみても楽しいですよね。新しく出会った『呪術』ファンの方と行く、みたいなのも楽しそう!
推し変しちゃったとか、受験や就職でアニメから離れてしまったり、皆さんの生活も日々変化していると思うんですけど、せっかく劇場版として、改めて『呪術廻戦 懐玉・玉折』が劇場版総集編として公開されるので、もう一度、楽しんでいただけたら嬉しいです。ぜひ劇場でしか味わえない感覚を体験してみてください!
[取材・文/タイラ]