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チュウオウ・ディビジョン『.言の葉党』全員インタビュー、碧棺 合歓役・山本希望が語る”ヒプノシスマイク”と新曲への想い

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山本希望

音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』。6月から始まった7ヶ月連続の新作CDリリースを、チュウオウ・ディビジョンが締めくくる。『.言の葉党』に収録されている碧棺 合歓のソロ曲「Do the right thing」は、葛藤を経ても揺らぐことのない信念をまっすぐに伝えてくれる。演じている山本希望のラップスキルと表現力の高さも存分に発揮された楽曲だ。込めた想い、各楽曲とドラマトラックの聴きどころ、来年の2月21日に公開される映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』について語ってもらった。

――中王区の2枚目のCDですね。

はい。まさか中王区でこんなに歌を出せるとは。Reolさんに作っていただいた最初の楽曲の「Femme Fatale」で終わりだと思っていたくらいだったので。

――言の葉党の人気がどんどん高まっています。

そうですね。感情移入してくださる方々がいらっしゃるのを感じています。頂くファンレターにも気持ちと熱量がこもっていて、女性の生きづらさみたいな部分を言の葉党と重ねて、「曲を聴きながら励みにしています」と書いてくださっている方もいます。

――もともとラップがお好きだったさんは、合歓役に決まる前からヒプマイに注目していらっしゃったそうですね。

はい。一味違うものを初期から感じていました。ラップをするキャラクターを今までも演じさせていただいた経験があったんですけど、ステレオタイプなものだったんですよね。それはそれで面白いんですけど、ヘッズ(ヒップホップに夢中な人)としては「ラップってもっとかっこいいんだぜ」というところがあったんです。

――本物のラップには韻とかのマナーがありますからね。

そうなんです。韻は駄洒落ではなくて、文脈をしっかりとしながら踏んで攻撃力増し増しで構成していくものですし、そもそもフロウがありますから。ヒプマイは最初からものすごくて、映像がマイクリレーなのにもびっくりしました。「これはいよいよヒップホップ、日本語ラップの文脈を汲んだコンテンツが現れたのでは?」と思って気になって追いかけていたんです。ちゃんとライムしていてフロウもあって、流行りの音も取り入れていて新旧の日本語ラップの面白いところもあって、「これは私の求めていたものかもしれない」という感動がありました。

――山本さんは「MCのじょa.k.a.HOPE」として、かなり前から活動していましたよね?

はい。私がラップをし始めたのも「声優がラップをしたら絶対に面白い」と思ったからなんです。ラッパーさんには独自の世界観があって、ラップにパーソナルな部分が表れるんです。それは映画を観ているようで、キャラソンを聴いている感じがあって、声優に向いていると感じたんですよね。あと、ラッパーさんはラップが上手いのはもちろん、声が良いんです。そういう点でも声優がラップをするのって親和性が高いと思っていました。

山本希望

――アニメ、ゲーム、コミック、舞台と、様々な展開を重ねているのも『ヒプノシスマイク』の楽しさです。来年の2月21日には映画も公開されますからね。

ヒプマイは音声コンテンツから始まって、アニメになったのは少し経ってからでしたけど、どういう風に映像化されるのか私も楽しみにしていたんです。それが映画になるんですから、ものすごいことですよね。インタラクティブ映画なのも楽しみです。「ヒプマイって、面白いことをするコンテンツだな」と改めて思っています。

――今回のCDのドラマトラックを聴くと、映画への期待が高まると思います。

そうですね。言の葉党がチュウオウ・ディビジョンになってバトルに参戦することになりました。私もそういう想像をしたことはあったんですけど、まさか本当になるとは。お話はすごい展開になっています。他のディビジョンのみなさんとラップで戦うことを考えると武者震いがしますね(笑)。

――(笑)。様々な対戦の組み合わせを想像するとワクワクします。

合歓に限らず、キャラクター同士の様々な繋がりがありますからね。どういうバトルになって、どういうリリックでラップをするのか? そこも含めてぜひ映画を観ていただきたいです。

――キャラクター同士の過去の因縁があったり、時々判明する新たな事実もあったりもしますから、ヒプマイは本当に見どころが満載です。

そうなんです。キャラクターもたくさんいるので、考察するのも楽しいと思います。

――合歓の背景もどんどん掘り下げられていますね。

はい。合歓には信念と目指すべきところがあるのに、世の中が荒んでいるから理想になかなか辿り着けないんですよね。もどかしさを感じて苛立ってしまうこともあって、「冷静になろう」と自分をなだめて抑えることの繰り返しです。ちょっとずつ目指していることに辿り着こうとしている彼女と客観的に向き合うと、「それって1人じゃ無理だよね?  H歴の世の中で同じような志を持った仲間がいないと」って私は思います。彼女は彼女なりに一生懸命に理想のために、みんなが幸せになれるように頑張っているんですよ。本当は兄の左馬刻も含め、みんなが目指すところは一緒なはずなのにやり方が異なる悲しさと向き合っていると思うんです。それを考えると本当に切ないです。この先、上手く行くのかどうかもわからないですからね。

――乙統女様や無花果さんは優しく接してくださっていますけど、合歓は孤独ですよね。

そうですね。合歓は人間としては乙統女様や無花果さんを信頼していて、尊敬もしていると思うんですけど「そのやり方は正しいとは言えないのではないか?」という葛藤があるんです。本当に難しいですなって。乙統女様が行方不明になって激務に追われていて、「ちゃんと寝てるのかな?」と健康状態も心配になります。

――そういう状況の時に現れるのが、何かと苛立つことをしてくる邪答院 仄仄です。

そうなんです(笑)。合歓の反応がリアルだなと感じています。ちゃんと苛立つところは左馬刻と血が繋がっている印象がしますし、口が悪い時もたまにありますからね。

山本希望

――今回のCDに収録される合歓のソロ曲「Do the right thing」は、どのような印象で捉えていますか?

合歓の信念が詰まっている楽曲だと思います。前作の「Independence day」が、自分を鼓舞して進んで行く強い意志を持った楽曲だったのに対して、「Do the right thing」はどんなにいろいろな出来事が起こったとしても変わることのない合歓の一番大事な部分を感じます。

――例えば《“正しさ”とは押し付けるもんじゃなくて 想像から始まってく》は、合歓の強い信念ですよね。

そうですね。「合歓が言いたかったのは、これですよね。ASOBOiSMさん、すごい!」と、私も歌詞を見た時に思いました。

――《LoveとHateは共に生きる運命だ 愛と平和 願いは同じなのにどうして》も素晴らしいです。

これはもうパンチラインですよ。合歓の理想と願いが込められています。それと同時に《それぞれの魂が正しいね》と歌っている部分、合歓の器の大きさが表現されていて、すごくいいですよね。

――《都合悪い言葉はErase じゃなく書き残すの 全員のName》も、合歓のすごさが表れていると思います。合歓の信条が表現されていて、韻も気持ちいいです。

そうなんですよ。「Do the right thing」は韻が気持ちよくて、ラップもしやすくて、歌詞も覚えやすかったです。リズムも取りやすかったですね。

――《Beatあれば共にKeytalk 「でたよ、いい子。」じゃなくてまずは聞こうよ》の韻も気持ちいいです。

そこ、とても気持ちいいです。練習で歌っている時点で気持ちよかったから、レコーディングでも一発でいいテイクが録れました。

――気持ちいい韻が満載の「Do the right thing」ですけど、歌から始まるんですよね。かなり意表を突かれました。

歌始まりは、緊張しました。自分の中ではラップと歌は違う感覚があるんです。歌はラップと較べて身構えちゃうところがあって。デモのASOBOiSMさんの仮歌が澄んだ声で、綺麗だったんですけど、それを合歓としてどう歌うのかもすごく考えました。キャラクターと楽曲としての良さの的確なバランスみたいなことはヒプマイの楽曲でいつも悩むところで、試行錯誤を重ねています。それは自分の中だけでは解決しないことが多いので、レコーディングの時にディレクターさんとかみなさんのご意見もお伺いします。「Do the right thing」のレコーディングの時はASOBOiSMさんがスタジオに来てくださったので、いろいろご相談しました。

――キャラクターソングは、やはりそこが大切ですよね。

はい。合歓を表現することが一番なんですけど、作っていただいた楽曲の良さも表現することも含めて考えます。それはやはり簡単ではなくて、毎回じっくり練りますね。

山本希望

――東方天 乙統女(CV.小林ゆう)の「Mic rewrites the ending」と勘解由小路 無花果(CV.たかはし智秋)の「Get Freedom」も、ラップとしてかっこいいと同時にキャラクター像が深く伝わってくる楽曲です。

「Get Freedom」は拳を挙げて自由を叫ぶような楽曲ですね。今までの無花果さんは他人を縛ると同時に自分で自分を縛っているような人でもあったと思うんです。それがここで《Freedom》と言うようになったエモさがあります。

――おっしゃる通り、以前の無花果さんは《Freedom》と真逆のイメージでしたよね。

そうなんです。過去にもとらわれていましたし、がんじがらめみたいな印象でしたから。

――乙統女様の「Mic rewrites the ending」は、いかがですか?

ラップでありながら朗読のようでもあって、物語に耳を傾けているかのような楽しさがあります。展開に高低があって、とても引き込まれます。ゆうさんのお芝居って、すごく引き込まれるんですよ。私はゆうさんのお芝居が大好きなんです。同じユニットでライブとかに出演させていただく度に、ものすごい嬉しさがこみ上げてきます。

――今回のCDの3曲は、それぞれのキャラクターの心情の変化してきている部分をとても伝えてくれます。

そうですね。合歓はもともと持っていたけど、せわしない日々の中で忘れかけていたのかもしれないところを改めて思い出している「Do the right thing」なのかなと思います。「ちょっと気持ちが揺れ動いていたけど、正しさとは、やっぱりこういうことだよね?」という原点に戻る楽曲だなと。原点に戻るのが合歓にとっての進化、一皮むけるということなのかなと。経験しながらいろいろ知って、その上で正しさについて語る方が重みがありますよね。乙統女様も無花果さんもそれぞれの形で一皮剝けていて、3人ともより強くなりました。

――3人の魅力をより深く感じることができる今作です。凛々しいですよ。

強い女性って、みんな好きですよね。私も強い女性が好きだし、そういう女性になりたいなと思って日々生きているので。言の葉党の女性たちは本当の意味で強くなってきているんだと思います。見せかけだけでなく、権力によるものでもなく、内面と考え方が強くなっているので、そこに注目していただきたいです。

山本希望

――山本さんのラップのかっこよさも、今作を聴いて改めて感じました。

ありがとうございます(笑)。

――合歓は左馬刻に膝をつかせたこともあるラップスキルの持ち主ですから、演じる上でも求められるものが大きいですよね。

そうですね。だからいろいろ考えています。合歓は見た目はかわいらしいので、「ラップする時もかわいい方がいいのかな?」と思ったりもしたんですけど、やはり左馬刻と血が繋がっていますから、演じる上でも彼の存在がとても大事なんです。だから荒々しさみたいな部分を出すことも意識しますし、ちょっと重心を落とすような感じでラップをしようと考えたりもしています。

――合歓を表現するためにラップスキルを磨く努力も重ねているんじゃないですか?

ラップに関しては正直なところ楽しませていただいているので、練習とか、気負ったことはしていないです。合歓というキャラクターとしてラップすることは考えながらやっていますけど。「Independence day」は作ってくださったあっこゴリラさん節が出ていたので、あっこさんの曲をたくさん聴いてグルーヴを研究しました。

――そういう観点で楽曲と向き合っているのも、さんがヘッズだからこそですね。

ありがとうございます。「Do the right thing」って、ラッパ我リヤさんの「Do the GARIYA thing」から来ているのかもしれないと思っていて。それもヘッズとして嬉しかったんですよ。山田 一郎の「H歴維新」はキングギドラさんの「平成維新」から来ていますけど、あの感じを彷彿とさせる楽曲でもありますね。ラッパ我リヤさんの「Do the GARIYA thing」というタイトルは『Do the right thing』という映画から取られていて、ジャケットもオマージュなんです。そういうところも含めて、この曲はヘッズとして上がっています(笑)。

――(笑)。ヒップホップの文脈に沿ったサンプリングや遊び心がヒプマイにはたくさん盛り込まれているんですよね。

そうなんです。合歓の楽曲にもそういう要素が入っているのが嬉しいです。「Do the right thing」もそうですけど、「Independence day」も同じタイトルの映画があるので、それも面白い偶然ですね。2曲とも映画のタイトルが続いています。

――今作に収録されているドラマトラックに関しては、何か触れておきたいことはありますか?

いろいろ詰め込まれています。新キャラも出てきますからね。合歓の心は揺れ動いていますけど、乙統女様と無花果さんの気持ちを聞いて、共に手を取り合ってチュウオウ・ディビジョンの結成にまで至るんです。3人でずっと言の葉党で活動してきたのでチュウオウ・ディビジョンになったことに驚きはないんですけど、このユニット名はまだ言い慣れていなくて(笑)。収録で無花果さんが「チュウオウ・ディビジョン?」とおっしゃったシーンも不思議な感覚で、「すごいところまで来てしまったな」と思いました。今までのドラマトラックでお茶会をしたり、一緒に買い物に行ったり、お仕事以外でも関係性を深めていく3人が描かれていましたけど、本当の意味で団結して絆を深めたんですよね。ヒプマイには「絆 +」という曲があるくらいですから、各ディビジョンが絆を大事にしているコンテンツなんです。言の葉党もやっと本当の意味での絆が生まれたんだと思います。

取材・文=田中大 撮影=大塚秀美

山本希望

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