「世界を目標に練習してる」“キングスユース勢”がU16アジアカップで躍動…育成体制の強化が奏功
バスケットボールの「U16男子アジアカップ2025」が8月31日〜9月7日、モンゴル・ウランバートルで開催され、日本代表は4位で大会を終えた。ベスト4以上のチームが対象となる「U17ワールドカップ2026」の出場権を獲得し、最大の目標を達成。同大会は来年の6月27日〜7月5日にトルコ・イスタンブールで開かれる。 今回のU16アジアカップでは、琉球ゴールデンキングスのユースチームにゆかりのある選手、スタッフの存在感が目立った。 キングスU18の宮里俊佑とキングスU15出身の越圭司(Concordia Lutheran School of Omaha)はガードコンビとして全6試合に先発出場を果たし、キングスU18のブレイク・ジェレマイヤデービッド海斗もディフェンス力を買われてローテーション入り。キングスU15の末広朋也ヘッドコーチ(HC)はアシスタントコーチとしてチームに帯同し、ベンチから的確な指示を送り続けた。 キングスユースを巡っては、今年7月にトップチームでの指導実績が豊富な浜口炎氏もキングスU18のヘッドコーチに就任した。Bリーグの中でも先駆けて育成環境の強化に注力しているクラブの一つだ。その効果が、アジアの舞台でも奏功した面はあるだろう。
U15年代を席巻した“PGコンビ”が再タッグ
特に活躍が際立ったのは、いずれもポイントガード(PG)である宮里と越だ。既にA代表候補にも選出されている逸材の白谷柱誠ジャック(福岡大学附属大濠高校)と共にチームの中心を担った。 この二人は、共闘したキングスU15時代にダブルエースを張った仲だ。今年1月にあった「京王Jr.ウインターカップ2024-25 2024年度第5回全国U15バスケットボール選手権大会」でチームを準優勝に導き、いずれもベスト5に選出。さらに3月の「インフロニア B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2025」では初優勝を達成し、またも二人ともベスト5に選ばれ、越は大会MVPに輝いた。 日の丸を背負ったU16アジアカップで再びタッグを組み、優れた得点能力やゲームコントロール、声でのリーダーシップで代表チームをけん引した。 時には「圭司ナイス!」「俊佑ありがとう!」と互いに励まし合う場面も。大会中、宮里は越について「本当に頼もしい存在なので、とても刺激になっています」と言及。越も宮里について「自分が難しい状況の時には、俊佑に託したいと思っています」と深い信頼関係をのぞかせていた。
宮里はアシスト数で大会5位…豪州戦で課題明確に
宮里は大会5位の平均5.3アシストを記録。二桁得点を記録した試合も6試合中3試合あった。司令塔としての状況判断はチーム内で最も安定し、その選手が出ている時間帯の得失点差を示す「+/−」は毎試合チームの上位だった。 U17ワールドカップへの出場を決めた準々決勝のチャイニーズ・タイペイ戦でも12得点4リバウンド6アシストと安定した活躍を見せ、「自分でドライブをしてファウルをもらったり、しっかりオープンな選手を見付けてパスを出したりすることはできたので、そこは良かったと思います」と手応えを語っていた。 一方、36-101で大敗した準決勝のオーストラリア戦では、ほとんどの選手が190〜200cm台という世界基準のチームを肌で体感。「相手は高さとフィジカルの強さがあって、何枚も上でした。ペイントエリアに入れても、その後のフィニッシュまで持っていけない。将来、Bリーグとかでプレーするためには、今のままでは全く通用しません。PGとしてもっと視野を広げることなど、やることはたくさんあります」と課題も明確になったようだ。
越は平均得点で大会5位…渡米でさらなる進化を
越は身長163cmとチームで最も小柄ながら、持ち前のスコアリング能力を遺憾無く発揮し、大会6位の平均17.8点を記録した。最大の持ち味であるスピードと一度入り出したら止まらない3ポイントシュートを武器に、準々決勝で31得点、92-93で惜敗したニュージーランドとの3位決定戦でも24得点を挙げた。 オーストラリア戦の翌日にあった3位決定戦後、越は「昨日の試合では相手の強さや高さに圧倒され、思ったようなプレーができませんでした。今日はしっかり切り替えて、スピードと3ポイントシュートで相手を翻弄できました」と振り返った。 FIBA(世界バスケットボール連盟)の地域区分で「アジア」に入るオーストラリアとニュージーランドは、高さとフィジカルの強さが世界基準にある。宮里と同じく、越も自身の成長の糧にしたい考えだ。 「今回は負けてしまいましたけど、来年にはU17ワールドカップがあります。(リベンジに向けて)そのチャンスをものにしたいです。自分たちもこの1年で成長し、個人個人、みんなで頑張っていきたいです」 越は今秋から米国の高校に通い、勉学とバスケットボールの鍛錬に励む。ぜひU17ワールドカップにも出場し、さらに進化した姿を見せてもらいたい。
ローテーション入りを果たしたジェレマイヤ、DFに手応え
ジャレマイヤも6試合全てでコートに立ち、平均出場時間は19分20秒でしっかりとローテーション入り。身長は185cmで特段大きい訳ではないが、簡単に押されない強さがある。自身が「体は結構強いので、(国際大会でも)コンタクトに耐え切れる部分はありました」と言う通り、ディフェンス面で大きく貢献した。 これまで国内の大会で目立った活躍を残していた訳ではない。「正直、大会前はそこまでチームに貢献できるとは思っていなかったので、貢献できたことは本当に良かったです」と安堵の表情を浮かべた。 その意味でも、アジアの舞台は自信を付けるきっかけになったはずだ。さらに持ち味を伸ばすべく、「高さで負けたりした部分もあったので、上でやられる前に、もっと(体を張って)下で戦うための勉強をしないといけないと思いました」と意欲的に語っていた。 まだ課題の多いオフェンス面では、特に状況判断の質を磨く必要性を感じたようだ。 「世界レベルの選手はみんな体が大きくて、高いので、1対1では突破できません。そういう時に空いているチームメイトを探してパスを送り、チームとしてフリーのシュートを作ることが大事だと感じました」 将来的には海外でプレーすることも目指している。「めちゃくちゃいい経験になりました」と快活な声で大会を振り返った。
末広朋也HC「『もっと大きく育てくれ』というメッセージ」
キングスユースゆかりのプレーヤーが、各国から世代別のトップ選手たちが集うアジアの舞台で、これだけの活躍をしたことは特筆すべき点だ。ジェレマイヤにその要因を聞くと、以下のように語った。 「キングスユースは選手もコーチも世界で戦っていくことが目標なので、質の高い練習ができていると思います。その積み重ねがあって、少しずつ国際大会でも通用できるようになってきているのだと感じます」 「沖縄を世界へ」というビジョンを掲げるキングス。今月はトップチームがオーストラリア遠征を実施したほか、U18ユースチームも香港で行われた国際大会に出場した。こういった経験の蓄積が、アジア、そして世界で活躍できる選手の輩出につながっていく可能性は十分にある。 以前は日本代表のテクニカルスタッフ(戦術分析)を務め、さまざまなカテゴリーの国際大会に帯同してきたキングスU15の末広朋也HCは「今回のU16アジアカップは、3人にとって次につながる経験ができました。また、相手に借りができたということは、バスケの神様からの『もっと大きく育ってくれ』というメッセージです。それを受け取るか否かは、彼らにかかっています」と語り、一層のレベル向上につなげてくれることを期待した。 活躍の場を広げるキングスユースの選手たち。ユースから巣立っていったU22枠の平良宗龍、佐取龍之介のように、将来、この中からトップチームのユニフォームを着ることになる選手も現れるはず。その時を想像しながら、彼らの日々の進歩を見守っていきたい。