空き家を相続することになったときの対処法、注意すべきことを解説
親が亡くなって、住んでいた家を相続することになったものの、自分はすでに自宅を持っている。このようなパターンで、空き家を相続せざるをえないケースが増えています。不動産という財産の性格上、そのまま放置するわけにはいきません。空き家を相続した場合の対処法、注意点について解説します。
空き家の相続で発生する問題
最初に空き家の相続によるデメリットからみておきましょう。
住まなくても課税される
空き家であっても、固定資産税や都市計画税(土地・家屋が市街化区域内にある場合)がかかります。居住している場合と同様、1月1日時点で所有していれば、その年の分を全額納付する必要があります。
なお、居住していなくても、家屋があれば「住宅土地」とみなされて、特例により固定資産税は1/6に軽減されます(敷地面積200㎡以下)。建物を解体して更地にすると、この特例は適用されません。
適切な維持・管理の義務が生じる
不動産は適切な維持・管理を怠ると、「荒れ放題」になります。建物内部や敷地の定期的な清掃やメンテナンス、雑草除去や立木のケアなどは、所有者である相続人が行わなくてはなりません。
例えば、建物の一部が壊れて通行人や近隣住宅に被害を与えたような場合、相続人がその責任を負うことになります。
「特定空家等」に指定されるリスクがある
「特定空家等」というのは、そのまま放置すれば倒壊などの恐れがある、著しく衛生上有害となる恐れがある、著しく景観を損なっている状態などが認められる空き家をいいます(空家等対策の推進に関する特別措置法)。
「特定空家等」に指定された後に、自治体からの助言・指導に従わず、「勧告」を受けると、さきほど説明した「住宅用地の特例」の対象から除外され、固定資産税額が更地と同等の最大6倍となります。さらに自治体からの「命令」に応じないでいると、50万円以下の過料が科せられます。
以上のようなことを踏まえて、空き家を相続した場合の対処法を考えていきましょう。方策としては、大きく、資産として活用する、できるだけコストを抑えて処分する――の2つに分かれます。
空き家を相続した場合の対処法⇒資産として活用する
賃貸して家賃収入を得る
「貸せる物件」であれば、賃貸にする選択肢があります。毎月家賃収入が得られるのは、大きなメリットといえるでしょう。
ただし、ハウスクリーニングやリフォームなどの初期費用が必要になります。維持・管理やさまざまなトラブルなどには、「家主」として対応しなくてはなりません。
更地にして土地を活用する
家屋の利用が難しい場合には、思い切って解体して土地活用を考える、という方法があります。駐車場にしたり、新たに賃貸物件を建てたりして、収入を得るわけです。また、更地のほうが売却しやすい、というメリットもあります。
しかし、当然、解体にもコストが発生します。また、更地にすると、「住宅用地の特例」の対象から外れ、固定資産税が高くなる点にも注意が必要です。
セカンドハウスにする
空き家になった家を、自宅以外のセカンドハウスとして活用することも可能です。セカンドハウスは、税制面では「毎月1日以上、日常生活のために使っている住居」のこと。一定の要件を満たせば、別荘とは違って、「住宅用地の特例」を受けることができます。
セカンドハウスとして認定を受けるためには、都道府県に居住状況がわかる書類などの提出が求められる場合があります。
空き家を相続した場合の対処法⇒家を手放す
売却する
「売れる物件」ならば、その道を選択するのもいいでしょう。売却益を得た上で、税金や維持・管理に関するランニングコストの負担から解放されるのは、大きなメリットです。ただ、その場合には、できるだけ早く手続きを進めるべきです。
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、譲渡所得税が課税されるのですが、「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに」売り、その他の一定の要件を満たしていれば、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで差し引くことができるからです(「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」)。売却の利益が3,000万円以内なら所得税はかからない、ということです。
この特例の主な要件は、
昭和56年5月31日以前に建築されたこと相続の開始の直前において、被相続人(亡くなった人)以外に居住をしていた人がいなかったこと売却代金が1億円以下であること
などです。
詳しくは:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
寄付をする
売却などが難しい空き家は、個人、法人、自治体などへの寄付を検討してみてはいかがでしょうか。
個人への寄付は、誰に対してでもできます。例えば、一般的には売却困難な物件であっても、つながった土地を取得できる隣人にとっては、メリットがあるでしょう。そういうかたちで引き取ってもらうことができるかもしれません。
法人に寄付する場合、相手が営利法人だと、みなし譲渡といって、寄付する側にも譲渡所得税が発生します。公益法人に寄付する場合には、みなし譲渡所得税は免除されます。
自治体は、積極的に寄付を受け付けているところと、そうでないところがあることに注意が必要です。寄付を考える場合には、空き家のある自治体に問い合わせてみましょう。
「相続土地国庫帰属制度」を利用する
2023年4月に、「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。「所有者不明土地の発生の抑制」を目的にしたもので、相続人にとって不要な不動産を国に引き取ってもらえます。
ただし、適用の対象になるのは、制度名にあるように土地(更地)で、家屋がある場合には事前に解体する必要があります。担保権など申請者の所有権以外の権利が設定されていたり、土壌汚染があったりする土地は申請できず、崖があったりして管理や処分が困難な土地は不承認となる可能性があります。
また、土地一筆当たり1万4,000円審査手数料のほか、「元々の土地の所有者が土地の管理の負担を免れる程度に応じて、国に生ずる管理費用の一部を負担していただく」という主旨の負担金が、原則20万円必要です。
詳しくは:
相続した「いらない土地」を国が引き取ってくれる 2023年4月27日施行の「相続土地国庫帰属法」を解説 |今知りたい!相続お役立ち情報
相続放棄する
空き家を相続する前ならば、相続放棄するという選択肢もあります。「負動産」をもらわないことにすれば、最初に説明したデメリットを回避することができるでしょう。ただし、相続放棄は、被相続人の相続財産に関する権利の一切を放棄することをいいますから、他の財産ももらうことはできなくなります。
相続放棄は、自分が相続人になったのを知った時から3ヵ月以内に手続きをする必要があります。一方、原則として、いったん確定した相続放棄を撤回することはできません。空き家を相続することによる将来にわたるマイナスと、受け取る権利のあるプラスの財産を比較したうえで、慎重に判断することが求められます。
空き家の相続にも「相続登記」が必要
土地や建物を相続した場合には、法務局で名義変更(相続登記)を行う必要があります。空き家の場合も同様で、これをしないと売却や家屋の解体などを行うこともできません。
この相続登記は、2024年4月から義務化されました。相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科されますから、注意してください。
まとめ
空き家の相続には、さまざまなデメリット、リスクも潜んでいます。相続後も収益物件などとして活用するのか、処分するのかをなるべく早めに判断して、有効な手立てを打つようにしましょう。相続発生前から、相続に詳しい税理士などに相談し、対処法を考えておけば安心です。