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「悲しみ・憤り・やるせなさ・安堵・疑念」さまざまな感情が入り乱れる75分 『劇場版 クマと民主主義』試写レポ

Sitakke

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『劇場版 クマと民主主義』

全国6都市で開催中の「TBSドキュメンタリー映画祭2025」。
HBC制作の『劇場版 クマと民主主義』は、東京で3月30日、札幌では4月5日・7日・9日に上映されます。

「HBC演劇エンタメ研究会(通称“エンケン”)」の会長・堰八紗也佳アナウンサーが、一足先に映画を見た感想をレポートします!

あらすじ

クマと人の課題。
その背景に見えてきたのは、人と人の課題だった。

夕食後、外でガラスが割れる音が響いた。窓を覗くと、黒い影が見えた。ヒグマだ。
「家に入ってくるかもしれない…」そんな恐怖の夜が、2か月も続いた。

やっと解決したかに思えたとき、今度は住民が頼ってきたハンターたちの姿が突然消えた。

クマの被害、ハンターの制約、政治の不透明さ。
7年前、北海道の小さな村が直面した課題は、今や全国に広がっている。
村が歩んできた道のりに、クマ対策のヒントがあった。

この記事の内容

・アナウンサーなのに「ナレーションがいらない」
・“クマの目線”になってしまった瞬間
・家族を守るために、私に何ができるか
・上映日時など詳細

アナウンサーなのに「ナレーションがいらない」

HBC堰八紗也佳アナウンサー

アナウンサーは、映像に最終的に息を吹き込む、ナレーションをつける仕事。
こう思って普段仕事をしています。

しかし『劇場版 クマと民主主義』を見て、今回ばかりは、ナレーションがいらない“映像の力”を目の当たりにしてしまいました。

映像の力。これは、クマの迫力ある映像はもちろんのこと、自然・町の風景・人々の表情、全てにおいて言えます。

「劇場版 クマと民主主義」より

テレビ番組だといわゆる“尺”の余裕がないので、次から次へと話が進んでいきますが、映画では無音の余白が意味を成します。

風の音、虫の声、鳥のさえずり。
水の流れる音、葉をかき分けるガサガサッという音。

“環境音”が活きていて、まるで自分もその場にいるかのような感覚になるのです。

「劇場版 クマと民主主義」より

わざわざ「春」「夕方」など季節や時間帯をナレーションで説明しなくとも、画面に映る“植物”や“人々の装い”や“日の光”を見るだけで、その理解もできてしまいます。

映画館にいるのを忘れるくらい、五感が研ぎ澄まされるような感覚があります。


“クマの目線”になってしまった瞬間

監督・幾島奈央(「劇場版 クマと民主主義」より)

必要最小限のナレーションは、監督である幾島さん本人が読んでいます。

取材した本人にしかわからない、さまざまな思いが言葉に宿っているのでしょう。
幾島さんが発するひとことひとことが、耳だけでなく、“胸に届く”言葉になっています。

「劇場版 クマと民主主義」より

映画の中では、さまざまな立場の人(役場職員・住民・ハンターなど)が登場します。見ている私たちは、その都度、角度を変えて物事を考えてみることになるかもしれません。

それは基本的には“人間の目線”。
しかし、人間に囲まれてもキョトンとしているクマの表情を見たとき、ほんの一瞬、私は“クマの目線”になっていました。

それは単純に“かわいそう”という気持ちではなく、なんとも言えない感情で、胸がザワザワしました……。気付くと涙が浮かんでいました。

そんなふうに、75分ほどの上映時間の中で「悲しみ・憤り・やるせなさ・安堵・疑念」と、さまざまな感情が入り乱れ、心が忙しく動きました。

家族を守るために、私に何ができるか

家族でのぼりべつクマ牧場に行ったときの記念写真

私は2児の母でもあります。家族を守るために何ができるか。

例えば身近なところでは、動物園でヒグマをみたときに「大きいね!すごいね!」だけで終わらせず、何かひとつでも子どもに情報を伝えることも、親としてできることかもしれません。

予測不可能な自然災害が起こる世の中で、防災意識が高まる今。クマ対策も防災対策のひとつとして意識していこうと思います。

最後になりますが、エンドロールは秀逸です。あのエンドを観ながら、あなたは何を感じるのでしょうか。


『劇場版 クマと民主主義』(東京・札幌限定上映)

東京

・ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区渋谷1丁目23−16 ココチビル 7・8F)
・3月30日(日)午後6時半~

札幌

・シアターキノ(北海道札幌市中央区南3条西6丁目 南3条グランドビル 2F)
・4月5日(土)午後2時台~(上映後ゲストトークあり:酪農学園大学・佐藤喜和教授×幾島監督)
・4月7日(月)午後6時台~
・4月9日(水)午後6時台~
※詳細な時間は決まり次第、シアターキノホームページ等で発表

チケットなど詳細は、「TBSドキュメンタリー映画祭2025」公式サイトからご確認ください。

文:HBCアナウンサー・堰八紗也佳
Sitakkeで連載「今月の絵本通信」を担当。
HBCラジオ「清かなる朗読」(月曜あさ4時30分~)、Instagramも更新中!

連載「クマさん、ここまでよ」担当:Sitakke編集部IKU
2025年3~4月上映の『劇場版 クマと民主主義』を監督。2018年にHBCに入社し、報道部に配属されてからクマの取材を継続。2021年夏からSitakke編集部。

※掲載の内容は記事執筆時(2025年3月)の情報に基づきます

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