〈大和郡山市〉まるで浮かび出る絵画! 布のない刺繍が魅せる線の美/刺繡作家 田口 ナツミさん
奈良で活躍する“奈良もん”
今回は、一風変わった刺繍作品をつくる刺繍作家・田口ナツミさんをご紹介!
「透過刺繡」というアートをご存じだろうか。樹脂などで固めた糸を水に溶ける布に刺繍を施し布だけを溶かす技法で、糸で絵画を描いたような線の美が魅力だ。
この技法を編み出したのは刺繡作家の田口ナツミさん。京都芸術大学を卒業後、移住した下北山村で透過刺繡を始め、現在は大和郡山市の自宅兼アトリエを拠点に育児をしながら刺繡作家として活動している。
刺繍に使う素材はいたってシンプル。糸はミシン糸で、水に溶ける布も通販サイトで購入できるものを用いている。大学で絵画や写真などの平面芸術を学んでいたことから作品は平面的なものがほとんどで立体作品は少ない。空間に浮かぶ絵画をイメージしているのだとか。
一般的な刺繍同様、布に糸を刺し込む
余分な布を切り取って…
水につけて布が溶けたら完成!
作品は土地に根差したアートがテーマ。下北山村に生息する川魚や植物をはじめ、大和郡山市に移ってからは金魚の作品も増えているそう。糸を巡らす密度にもよるが硬貨サイズの花で約1時間、大きいものでは2週間ほど費やした作品も。
医師である夫が赴任したことをきっかけに下北山村へ移住した田口さん。初めは、学生時代の挫折から作ることが怖くなってしまったと制作活動から距離を置いていたという。
そんな中、同村で村民によるアートイベントが開催されることとなり、田口さんも作品を出品することに。村の人たちの驚く顔が見たいと、当時流行していたVR(仮想現実)技術にヒントを得て、1年半の試行錯誤を経て透過刺繍を生み出した。
「村は人と人との距離が近いこともあり、反応がよく見えるんです。だから自分の作品を観て驚いている人の表情などを見るととてもうれしくて」と田口さん。こうした体験から、村を離れた今でも“下北山村出身のアーティスト”として、作品制作をはじめ、講師業や各地方でのワークショップ・個展の開催など精力的に活動を続けている。
今後については「昨年は雑誌で取り上げてもらったこともあり、各地で個展を開かせてもらいました。一方で会場は大阪をはじめ奈良県外が中心だったので、今年は奈良でも多く個展を開けたら」と話した。糸のみが織りなす唯一無二のアートにぜひ触れてみてほしい。
【販売取扱場所】
とほん(大和郡山市)
フォレストかみきた(上北山村)
きなり館(下北山村)※一部商品のみ
【SNS】