中村鶴松「人生のターニングポイントとなった舞台です」~「シネマ歌舞伎20周年記念『野田版 鼠小僧』舞台挨拶付き上映会」が開催
2025年3月28日(金)東劇にて、歌舞伎俳優・中村鶴松登壇「シネマ歌舞伎20周年記念『野田版 鼠小僧』舞台挨拶付き上映会」が開催された。
『野田版 鼠小僧』は、演出家・野田秀樹と十八世中村勘三郎がタッグを組み歌舞伎座で大盛況を博した舞台。「シネマ歌舞伎」第一弾として2005年に公開された。今回、シネマ歌舞伎20周年を記念し、《月イチ歌舞伎》2025シーズンの冒頭を飾る作品として4月4日(金)~全国34館で上映される。
鶴松は、本作の重要な役どころ「孫さん太」役に子役として出演。この共演をきっかけに勘三郎に誘われ中村屋の部屋子となり、歌舞伎俳優としての道を歩み始めた。まさに人生のターニングポイントといえる『野田版 鼠小僧』について、当時を懐かしみながらたっぷりと語った。
観客の盛大な拍手の中登壇した鶴松は、「今月30歳を迎えたばかりの“おじさん太”でございます(笑)」と挨拶。当時子役として演じた役名“孫さん太”にちなんだ自己紹介に、会場は笑いに包まれた。『野田版 鼠小僧』出演時の勘三郎との思い出として、「カーテンコールの時にいち子役の僕を呼んで、毎回抱きかかえるようにしてくれて。歌舞伎座の2000人の観客の前で、舞台の中心にいるなんて、ありえないことです」と語り、さらに「1日だけ、出演の前に挨拶に行くことを忘れた日があって、そのことを謝った時に『そんなのはどうでもいいんだよ。芝居がいいんだから』と言ってくださった」と、共演後部屋子にスカウトするほど鶴松にほれ込んだ勘三郎の様子が垣間見えるエピソードも披露。
また、中村屋の“兄”である勘九郎・七之助について「しょっちゅう、お前は鼠小僧の時が一番良かったと言われます(笑)お兄さんたちは当時はまだ若くて怒られることが多く、子供ばっかり褒められて嫌だったんだろうな。今仕返しをされています(笑)」と、仲の良さを覗かせた。
今年20周年を迎えるシネマ歌舞伎については、「古典の作品をもっとやって欲しい。古典の演目には、実はすごく細かい決まりがあって、例えば黒目の動かし方とか。そういった部分は客席からは見えにくいので、寄りで撮るとよくわかると思う」といった提案も。
最後に、観客の皆様に向け「人生のターニングポイントとなった舞台を見てくださりありがとうございました。こんなにたくさんの方が足を運んでくださり、みなさんが味方でいてくれることが自分のモチベーション。今後も中村屋をよろしくお願いいたします」と結んだ。